研究課題/領域番号 |
23K15677
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56010:脳神経外科学関連
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(名古屋医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
倉光 俊一郎 独立行政法人国立病院機構(名古屋医療センター臨床研究センター), その他部局等, その他 (90972844)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | CAR T細胞 / GD2 / T細胞疲弊 / びまん性中心性神経膠腫 / 膠芽腫 / CAR T / glioblastoma / cell therapy / NK / exhaustion |
研究開始時の研究の概要 |
膠芽腫を含む悪性脳腫瘍の治療には革新的な治療戦略が必要である。キメラ抗原受容体 (Chimeric Antigen Receptor: CAR)T 細胞療法は膠芽腫の制御に最有力視されているが、腫瘍免疫微小環境における抗腫瘍効果低減が生じうる。先行研究で我々は、疲弊化したCAR-T細胞はNK受容体を高発現するという新規知見を見出した。そこで、NKR受容体を介した腫瘍細胞とCAR-T細胞間の相互作用を制御することで、T細胞の疲弊化抑制や再活性化が可能であると推測し、本研究ではNK様表現型の獲得過程やNK受容体を介したT細胞の機能解析を行うことで、脳腫瘍に対するCAR-T細胞療法の強化を進める。
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研究実績の概要 |
本年度は研究初年度として、膠芽腫とびまん性中心性神経膠腫(diffuse midline glioma: DMG)を標的とするキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法の開発に向けた基盤研究を行った。本研究では腫瘍抗原ジシアロガングリオシドGD2を膠芽腫とDMGを標的とするCARを研究の中心に据え、以下の実験を実施した。①CAR-T細胞の殺腫瘍効果の評価に用いる標的細胞として、膠芽腫細胞株(LN229、LN319、T98G、U87、U251)とDMG細胞株(SF8628)を選定し、これらの細胞株におけるGD2の発現を確認した。続いてこれらの細胞にGFP遺伝子とルシフェラーゼ遺伝子を導入し、今後実施するIn vitro/in vivoの実験系における簡便なモニタリングを可能とした。②名古屋大学医学部附属病院で治療を受けたDMG症例のリストアップと病理標本の収集を行い、今後は、収集した病理標本をスライド化し、GD2発現と腫瘍浸潤T細胞を免疫染色で確認する予定である。これにより、DMGにおけるGD2の発現状況と主要微小環境の関連性を明らかにする。③三重大学藤原弘教授の下GD2CARの構築を行い、レトロウイルスを用いたT細胞への導入を行うべく現在ウイルス製造を行っている。また、GD2CARと同じ骨格を持つ膠芽腫特異抗原EGFRvIIIを標的としたCARの構築も並行し作製している。これらのCARを用いて膠芽腫およびDMG に対する抗腫瘍効果を評価する。以上の研究成果は膠芽腫とDMGに対するCAR-T細胞療法の開発に向け重要な基盤情報となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
GD2CAR-T細胞使用を中心とした五者共同研究契約の締結(名古屋医療センター・愛知県がんセンター・三重大学・近畿大学・名古屋大学)や各関連施設における倫理審査に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
現在GD2CAR/EGFRvIIICAR導入に必要なレトロウイルスの作製を進めており、準備が出来次第T細胞への導入を構築・確立する。続いて、作製したCAR-T細胞を用いて、選定した膠芽腫、DMG細胞株に対する抗腫瘍効果をin vitroで評価する。この際GFP/ルシフェラーゼ導入細胞株を用いることでリアルタイムでのモニタリングが可能となる。また、活性化時のサイトカイン産生能などの機能解析も併せて行う。続いてin vitroでの有効性が確認されたCARについて免疫不全マウスを用いたin vivo実験を行う。GFP/ルシフェラーゼ導入細胞株を用いて皮下腫瘍モデルを作製し、CAR-T細胞投与による腫瘍増殖抑制効果を評価する。さらに頭蓋内腫瘍モデルを作製し、CAR-T細胞の脳内腫瘍への集積と抗腫瘍効果を検討する。また、腫瘍免疫微小環境におけるマクロファージの表現型解析も行う。収集したヒトDMG症例の病理標本を用い、腫瘍細胞におけるGD2の発現や腫瘍浸潤リンパ球の密度などを評価し臨床応用に向けた知見を得る。 以上のin vitro/in vivoの実験で得られた知見をもとに、抗腫瘍効果の増強やT細胞疲弊の予防・再活性化を目指したCARの改良や他薬剤との併用療法を試みる。
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