研究課題
若手研究
本研究では、急速破壊型股関節症動物モデルと急速破壊型股関節症患者由来の股関節組織検体を用い、局所炎症性サイトカインの定量、疼痛行動学的評価、脊髄後根神経節のおける疼痛ペプチドの評価、脊髄後角における中枢性感作を評価し、その疼痛機序を明らかにする。本研究により、新規疼痛治療薬の創出や既存薬剤の応用による治療の最適化が期待され、手術が困難な患者に有益な治療選択肢を与えることに繋がる。
本年度は研究計画に従ってモデル動物の作成と妥当性の検証を中心に研究を行った。10週齢の雄性SDラットを用いて、右股関節を後方アプローチにて展開。直視下に以下の薬剤を投与し、グループ分けを行った。Sham群(生食使用)、OA群(MIA0.5mg使用)、RDC群(MIA4mg使用)、コントロール群(無処置)の4群を設定し、各群n=6作成した。各群に対して、放射線学的評価としてμCTをモデル作成後1,2,4週後にそれぞれ撮像、また疼痛行動学的評価としてweight bearing testをモデル作成後1,2,4週で行った。更に組織学的評価として、関節包を切開せずに股関節を取り出し、組織検体を採取した。放射線学的検討の結果、RDC群はOA群、Sham群と比して、モデル作成後1週より有意に高度な関節破壊像を呈した。またRDC群、OA群ともに4週までの経過観察期間において、経時的に関節破壊が進行した。weight bearing testではモデル作成後1週間より、RDC群、OA群ともにSham群と比し有意に患肢への荷重量が減少した。またRDC群とOA群との比較では、1-4週までの全ての期間においてRDC群で有意に荷重量が減少していた。これは実臨床で遭遇するRDCの臨床像である高度な関節破壊と強い急性の股関節痛に矛盾しない結果となった。また一部の個体において、患側の脊髄後根神経節における免疫組織化学染色にてCGRPとATF3の発現を評価した。RDC群では患側の脊髄後根神経節におけるCGRPとATF3の発現が上昇していることを定性的に確認した。現在は前述の免疫組織化学染色の個体数を増やして評価を行っている。また同時に股関節組織学的評価を行っている。
2: おおむね順調に進展している
当初計画通り、初年度はモデル動物の確立を目標とし、放射線学的評価、疼痛行動学的評価からはモデル動物としての妥当性が確認できている。
次年度はモデル動物における関節滑膜の炎症性サイトカインTNF-αとIL-6の定量をqPCRないしはELISAを用いて行う。また前述のように採取した股関節組織を用いて、HE染色、硝子軟骨の評価としてサフラニンO染色、軟骨基質の評価としてトルイジンブルー染色を行い、変形性関節症の定量的スコアであるOARSI score (Gerwin N, Osteoarthritis Cartilage, 2010)を用いて組織変性を定量を行う。更に後根神経節、脊髄後角における疼痛関連神経活性の変化の評価を行う。モデル作成後4週時点で股関節を支配するL4後根神経節において、炎症性疼痛に関与するCGRP陽性細胞、神経障害性疼痛に関与するATF3陽性細胞とGAP43陽性細胞の割合を各群で比較検討する。また脊髄後角については腰膨大部高位にて、マイクログリアのマーカーであるIba-1陽性細胞の健患比を計測する。また動物研究と並行して、ヒトの股関節滑膜組織を人工関節手術の際に採取する。これらは2025年度の研究に使用予定である。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 1件)
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