研究課題/領域番号 |
23K15750
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
塩澤 淳 順天堂大学, 医学部, 助教 (30868857)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 早期変形性膝関節症 / 滑膜炎 |
研究開始時の研究の概要 |
早期変形性膝関節症(早期膝OA)の病態解析とともに、早期膝OAにおける滑膜炎の存在がOA関節軟骨破壊の重要なリスク因子として注目されている。しかし、OA滑膜炎発症メカニズムに関する報告はきわめて限定的である。本研究では、OA関節軟骨破壊過程で生じる軟骨摩耗粒子で誘発される滑膜炎発症機構に焦点を当て、網羅的解析により滑膜炎誘導因子をスクリーニングし、滑膜炎誘導機構の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
早期変形性膝関節症(早期膝OA)の病態解明が進み、滑膜炎が膝OA発症・進展リスク因子であることが指摘されている。しかし、滑膜炎に関する研究の多くは画像解析研究であり、滑膜炎発症機構に関する情報は限られている。本研究では、関節軟骨破壊物質で誘発される滑膜炎発症機構に焦点を当てて、①初代培養ヒト滑膜構成細胞の関節軟骨粉砕粒子刺激による網羅的遺伝子解析、②滑膜炎誘導候補分子の絞り込み、局在、作用解析、③滑膜炎誘導候補分子の滑膜炎誘導実験、を実施する。本年度は、軟骨粉砕粒子によるヒト滑膜構成細胞刺激で発現亢進する遺伝子をマイクロアレイとRNAシークエンスで網羅的に解析した。正常滑膜組織から単離した初代培養滑膜細胞を用いて、マクロファージ様A型細胞(A型細胞)と線維芽細胞様B型細胞(B型細胞)の存在を抗CD68抗体と抗Fibroblast-specific protein抗体で免疫細胞染色し、ほぼ全ての細胞がB型細胞であることを明らかにした。次に、これらの細胞を軟骨粉砕粒子で刺激し、マイクロアレイにより網羅的に解析したところ、非刺激群に比べて刺激群では約400個の遺伝子が発現亢進しており、エンリッチメント解析ではTNF signaling pathway、Chemokine signaling pathway、Cytokine-Cytokine signaling pathwayに動きがあることが明らかとなった。さらに、同様の刺激実験後にRNAシークエンスを実施して、発現変動遺伝子の同定や解析を行った。今後は、滑膜炎誘導候補分子を絞り込み、OA滑膜組織での候補分子の局在や滑膜細胞での作用解析を実施する。また、動物モデルを用いてin vivoでの滑膜炎誘導実験により、膝OA進展重要リスク因子である滑膜炎の発症機構を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請した研究課題のうち、本年度は、軟骨摩耗粒子で誘導される滑膜炎発症機構に関わる候補遺伝子の絞り込みを中心に実験を行った。まず、初代正常培養滑膜構成細胞を用いて免疫細胞染色を実施し、構成細胞の大部分がB型細胞であることを明らかにした。次いで、これらの初代正常培養滑膜構成細胞を軟骨破砕物資で刺激し、マイクロアレイやRNAシークエンスによる網羅的遺伝子解析により滑膜炎誘導候補遺伝子の絞り込みを実施した。現在、正常滑膜組織より単離した滑膜構成細胞より三次元スフェロイド培養し、同様の刺激実験を行い、発現変動遺伝子を網羅的に解析し、通常培養細胞での結果と比較・検討する予定である。以上より、研究課題における最初のステップである、滑膜炎誘導遺伝子の絞り込みは予定通りに進んでおり、当研究課題は順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、膝OAにおける滑膜炎の病態解析、特に関節軟骨軟骨摩耗粒子刺激による滑膜炎誘導機構の解明を目指して研究を進めている。本年度は、手術時に採取した正常滑膜組織から通常の培養皿で2次元培養した正常培養滑膜構成細胞を用いて、軟骨摩耗粒子刺激と非刺激群による発現変動遺伝子をマイクロアレイやRNAシークエンスといった網羅的遺伝子解析を実施して滑膜炎誘導候補分子の絞り込みを行った。今後は、正常滑膜組織から単離後の細胞を三次元スフェロイド培養し、生体内に近い状態を作り、同様の刺激実験で得られたデータと比較・検討し、OA滑膜炎誘導性候補分子を更に絞り込む。候補分子が同定されれば、正常およびOA滑膜組織よりmRNAを抽出し定量PCRで候補分子がOA滑膜組織で発現亢進していることを確認する。また、OA滑膜組織を単離し、フローサイトメトリーを実施して、細胞サブセットの存在を示すとともに、候補分子を発現する細胞サブセットの割合を確定する。OA滑膜組織のパラフィン切片について、上記で絞り込まれた候補分子の免疫組織学的な局在を検討し、OA滑膜組織における病理組織学的所見と比較・検討し、候補分子発現と滑膜病変スコアとの相関関係を明らかにする。さらに、候補分子発現細胞がA型あるいはB型細胞かを決定するために、候補分子に対する抗体と抗CD68抗体あるいは抗Fibroblast-specific protein抗体を用いた二重蛍光免疫染色で明らかにする。最後に、OA動物モデルを用いて候補分子に対する抗体を用いた滑膜炎誘導実験を実施し、関節軟骨破壊や滑膜炎の程度を組織学的に評価し、論文投稿へ向けた解析及び準備を進めていく。
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