研究課題/領域番号 |
23K15769
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56030:泌尿器科学関連
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研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
島田 洋樹 東北医科薬科大学, 医学部, 助教 (10855761)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 尿路上皮癌 / アンドロゲン受容体 / バイオマーカー / 免疫組織化学 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、尿路上皮癌においてアンドロゲン受容体(AR)が尿路上皮癌細胞の増殖、進展に寄与しているという報告があり、ARが治療標的となり得る可能性が示唆されている。しかし、ARの転写活性及びその標的遺伝子と尿路上皮癌の増殖、進展の関係性については未だ不明な点が多くある。そこで本研究は、尿路上皮癌におけるAR及び標的遺伝子Prostate tumor overexpressed gene 1(PTOV1)による尿路上皮癌の増殖、進展の分子機序を解明し、新たな治療標的及びバイオマーカーとしての可能性を模索することを目的とした。
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研究実績の概要 |
尿路上皮癌は現在化学療法における選択肢が少なく、臨床経過を判断するバイオマーカーも少ないことが問題であり、解決すべき喫緊の課題であると考えられる。近年、尿路上皮癌においてアンドロゲン受容体(AR)が尿路上皮癌細胞の増殖、進展に寄与しているという報告があり、ARが治療標的となり得る可能性が示唆されている。しかし、ARの転写活性及びその標的遺伝子と尿路上皮癌の増殖、進展の関係性については未だ不明な点が多くある。ARの標的遺伝子として以前からProstate tumor overexpressed gene 1(PTOV1)が知られており、我々も尿路上皮癌細胞株を用いた追試によりARの標的遺伝子であることが確認できた。そこで本研究は、尿路上皮癌におけるARの転写活性及び標的遺伝子PTOV1による尿路上皮癌の増殖、進展の分子機序を解明し、新たな治療標的及びバイオマーカーとしての可能性を模索することを目的とした。 本年度はヒト膀胱尿路上皮癌細胞株であるT24細胞、J82細胞を用い、ARの過剰発現細を作製し、尿路上皮癌細胞におけるARの機能や作用について遺伝子発現や増殖能に関する検討を行った。また、T24細胞、J82細胞にPTOV1の過剰発現細を作製し、遺伝子発現に関する検討を行った。上記の検討により、尿路上皮癌細胞においてARは癌の増殖・伸展に対して抑制的に働く可能性が示唆された。尿路上皮癌細胞におけるAR及びPTOV1の発現意義について新たな知見を得ることができ、上記の検討結果について日本病理学会において口頭発表及びポスター発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒト膀胱尿路上皮癌細胞株であるT24細胞、J82細胞に対して、AR強制発現株作成を行った。作成後western blotにてARの発現を確認することができた。T24-AR過剰発現細胞、J82-AR過剰発現細胞においてPTOV1の発現がDHT依存的に増加していた。また、T24-AR過剰発現細胞、J82-AR過剰発現細胞においてDHT依存的に増増殖能が減少していることが確認された。各種AR過剰発現細胞の遺伝子発現を検討したところ、とりわけJ82-AR過剰発現細胞にて管腔型マーカーが上昇しており、細胞増殖に影響するp21の発現も上昇していた。よってDHTによる増殖能の減少はp21を介してが起きている可能性が示唆された。一方で、各種AR過剰発現細胞ではp16の発現は増加しておらず、SA-β-Gal染色においても優位な差を認めなかった。また、老化関連分泌形質(SASP)についても細胞の老化については起きていない可能性が示唆された。次いでT24-PTOV1過剰発現細胞、J82-PTOV1過剰発現細胞を作製した。作成後western blotにてPTOV1の発現を確認することができた。現在は各種PTOV1過剰発現細胞を用いて各種遺伝子発現、網羅的な遺伝子発現解析及び増殖能の検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
PTOV1の癌細胞における機能が不明のため、遺伝子発現、増殖能に加えて、遊走能などの検討も行う必要がある。また、 PTOV1の機能を同定するために 各種PTOV1過剰発現細胞を用いてPTOV1と結合し、相互作用するタンパク質を網羅的に解析するインタラクトーム解析を質量分析法にて行う。同定されたPTOV1結合因子に対してGene ontology解析を用い、 PTOV1が細胞内の機能にどのような影響を及ぼしているのか同定する。また、PTOV1とPTOV1結合因子の結合の確認には共免疫沈降を用いた western-blot 及びProximity Ligation Assay (PLA)にて確認する。さらにPTOV1と同定されたPTOV1結合因子に対して蛍光免疫染色を行うことで細胞内における局在を明らかにする。
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