研究課題/領域番号 |
23K15770
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56030:泌尿器科学関連
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
須田 智也 杏林大学, 医学部, 助教 (20793673)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ファージ結合蛋白酵素 / Depolymerase / ESBL産生大腸菌 / バイオフィルム / バクテリオファージ / 尿路感染症 / 多剤耐性菌 |
研究開始時の研究の概要 |
重症感染症を引き起こす尿路感染症の8割は大腸菌によるが、バイオフィルム形成による物理的な治療抵抗性に加え、抗菌薬に対する多剤耐性化が問題となっている。多剤耐性菌感染症に対し、細菌にのみ感染し溶菌するウイルスであるバクテリオファージ(ファージ)を用いたファージ療法の研究が世界的に進められている。一部のファージはバイオフィルムに含まれる菌外外多糖体を分解するEPS Depolymeraseという酵素を有している。本研究では、EPS Depolymerase保有ファージを解析し、マウス尿路感染症モデルへのファージ投与による溶菌作用およびバイオフィルム溶解作用について評価する。
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研究実績の概要 |
本研究は、halo陽性ファージを用いて、in vivoにおけるバイオフィルム分解作用を解析することを目的としている。細菌培地上にファージが形成するプラークの周囲にhaloがみられる場合、そのファージはDepolymeraseというファージ結合蛋白酵素を持つことが予測されている。Depolymeraseは細菌外多糖を分解する酵素であり、細菌外多糖は細菌が形成するバイオフィルムの主要成分である。そのため、Depolymeraseを有するファージはバイオフィルムを溶解する作用が期待できる。バイオフィルムは細菌感染症を難治化させる要因であるため、halo陽性ファージを治療に用いることで、バイオフィルム分解能を生かしたファージ療法の開発に繋がると考えられる。 本研究では、ESBL産生大腸菌に対するhalo陽性ファージを対象としているが、これまでに、ESBL産生大腸菌の培地にhaloを形成するファージを10種類見出した。halo陽性ファージがDepolymeraseを有することを明らかにするため、各ファージのゲノム解析を進め、halo陽性ファージではTail spike protein領域にペクチン酸リアーゼを指定する遺伝子配列が共通して含まれていることが明らかになった。ペクチン酸リアーゼはDepolymeraseの一種であり、Halo陽性ファージが予測どおりDepolymeraseを有することが示された。これらのHalo陽性ファージのESBL産生大腸菌に対する宿主域を解析し、ファージ療法に用いるのに適していると考えられるhalo陽性ファージを選出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、①ESBL産生大腸菌の解析とバイオフィルム形成能の調査、②ESBL産生大腸菌に対するファージの宿主域の解析、および③ファージのゲノム解析およびVAEsの評価を行う予定としていた。上記②および③については予定通り進捗している。また①に関しては、ESBL産生大腸菌の病原遺伝子などの解析は予定通り進捗している。バイオフィルム形成能については、培養条件によってバイオフィルムの形成に差異がみられるため、より適した培養条件を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究予定として、以下を計画している。まず、ESBL産生大腸菌がin vitroでバイオフィルムを形成するための最適な培養条件を確立する。培養条件が確立された後、次にHalo陽性ファージを投与してバイオフィルム溶解能を評価する予定である。続いて、Halo陽性ファージのゲノム解析により明らかになったペクチン酸リアーゼを指定する遺伝子配列を利用し、大腸菌タンパク質発現系を用いてDepolymeraseを抽出する。この抽出したDepolymeraseのバイオフィルム溶解能についても検討する。 さらに、本研究の最終的な目的は、ESBL産生大腸菌によるマウス尿路感染モデルにHalo陽性ファージを投与し、バイオフィルム溶解能を評価することである。そのために、まずESBL産生大腸菌を用いたマウス尿路感染モデルを確立する予定である。このモデルを確立した後、実際の感染モデルにおけるHalo陽性ファージのバイオフィルム溶解作用を検討し、ファージ療法の有効性を明らかにする。
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