研究課題/領域番号 |
23K15834
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56040:産婦人科学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山ノ井 康二 京都大学, 医学研究科, 助教 (70868075)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | ステアリン酸 / パルミチン酸 / オレイン酸 / 長鎖脂肪酸 / 小胞体ストレス / 卵巣癌 |
研究開始時の研究の概要 |
疫学的に発癌との関連が知られる食事について、近年、治療的な役割を求める試みが着目されている。卵巣癌は予後不良な疾患であり、新規治療戦略が切望されているが、治療的意義のある食事療法の探索は進んでいない。申請者は予備検討で、長鎖脂肪酸の中でも特に、ステアリン酸が増殖抑制効果を強く持つことが示唆されるデータを得た。そこで本研究では、 ステアリン酸が卵巣癌細胞に及ぼす増殖抑制効果を検証し、その分子生物学的メカニズムを明らかにすることを目的とする。本研究では、ステアリン酸が直接卵巣癌細胞に影響を及ぼす分子メカニズムを解明し、臨床応用を検討するための、強力なエビデンスを構築したいと考えている。
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研究実績の概要 |
ステアリン酸ががん細胞に及ぼす影響を探索した。6種類の卵巣癌細胞株を用いて検討したが、全ての卵巣癌細胞株で、ステアリン酸は強く細胞増殖を抑制し、オレイン酸はその効果を減弱するという画一的な影響を及ぼした。卵巣正常上皮の不死化細胞株でも同じような結果が得られたため、卵巣という組織に要因がある可能性が想起された。 そこで、由来となる臓器を増やし、肺がん、乳がん、大腸癌の細胞株それぞれ4種類ずつ加えて、ステアリン酸、パルミチン酸の影響を検証した。その結果、乳がん細胞株の一部(MDA-MB-453)、大腸癌細胞株の一部(DLD-1, HCT116)はパルミチン酸、ステアリン酸とも細胞増殖を強く抑制した。また一方、肺がん細胞株の一部(H1299)や乳がん細胞株の一部(MCF7)は、ステアリン酸、パルミチン酸共に細胞増殖抑制効果が弱かった。特に、正常乳腺上皮であるMCF10Aも用いた検討をしたところ、これはステアリン酸、パルミチン酸とも増殖抑制効果がなかった。正常卵巣上皮の結果も併せて考えると、臓器によって飽和脂肪酸の及ぼす影響の違いが少なくないことが想起された。 また脂肪酸が及ぼす影響が小胞体ストレス応答であることから、小胞体に関連しうる脂質分画の探索を、網羅的なLipidomics解析で探索した。OVCAR5を用いたPreliminaryな検討であるが、ステアリン酸の投与により、本来ほとんど存在しないDi -stearate-PIが多く出現しており、小胞体ストレス応答に関与する可能性を想像している。今後、特にステアリン酸の感受性に着目して、感受性が高い細胞株に共通する変化、感受性の低い細胞株に共通する変化を探索する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ステアリン酸、パルミチン酸の感受性のHeterogenecityを、癌腫横断的に探索することで明らかにすることができた。これにより、感受性の違いを規定する因子を、網羅的に探索するMaterialを確保できたと考えている。このような研究は他になく、我々独特の結果であり、順調に進行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ステアリン酸の感受性が高いもの、低いものとの間で、発現する遺伝子の違いを網羅的に探索する。同時に、これらの脂肪酸を添加したときに細胞内の脂質分画の変化や、Metaboliteの変化をについても探索して、細胞死に寄与する分画を検討する。中でも小胞体に関連する変化に着目することで、小胞体ストレス応答経路への影響の違いを探索する。
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