研究課題/領域番号 |
23K15841
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56040:産婦人科学関連
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
遠藤 雄大 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (00868896)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 卵巣がん / 自己抗体 / 早期診断 / バイオマーカー / がん診断マーカー |
研究開始時の研究の概要 |
卵巣がんは、婦人科がんの中で最も予後不良であり、早期診断の新規バイオマーカーの開発が嘱望される。がん患者では血清中から自己抗体が検出されることが知られ、抗原よりも早期から検出でき、血清診断マーカーとして注目されている。しかし、自己抗体のがん診断マーカーとしての応用研究はあまり進んでいない。 本研究では、卵巣がん特異的な自己抗体を従来より高い網羅性と深度で探索して候補分子を抽出する。続いて候補分子に対する抗体を定量評価するELISAを構築する。さらに患者血清と疾患対象あるいは健常者の血清を用いて検定し、早期診断マーカーとしての有用性を検証する。そして、卵巣がんの早期診断に有用な検査法を開発する。
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研究実績の概要 |
卵巣がんは本邦の婦人科がんの中で最も予後不良であり、その5年生存率は60%に留まる。生存率改善における主な障害は、約7割を占める進行がんに対する有効な治療法が無いことである。早期診断に基づく治療は予後の延長に有効であるが、卵巣がん血清診断マーカーのCancer antigen 125 (CA125) は検出感度や特異度が共に不十分であり、特に早期がんにおける陽性率は約50%と低い。従って卵巣がんの予後を飛躍的に向上させるためには「卵巣がんの早期発見に資する新たなバイオマーカーの開発」が鍵となる。 がん患者血清中には自己のタンパク質に反応する「自己抗体」が存在する。これは腫瘍から分泌されるタンパク質よりも早期に検出可能であることが多く、種々のがんにおいて早期診断マーカーとして着目されている。卵巣がんにおいてはp53自己抗体やがん精巣抗原自己抗体がCA125よりも早期に血清中に検出され、診断率の向上に寄与するが、なぜ自己に対する抗体が産生させるのか詳細なメカニズムは依然として不明である。腫瘍マーカーの多くは翻訳後修飾に関連するタンパク質であり、たとえば前述のCA125は120個、Carcinoembryonic antigenは20個のアミノ酸に対して糖鎖修飾やリン酸化が知られている。さらにCYFRAは剪断化されたCytokeratin 19の断片である。すなわち、翻訳後修飾を含むタンパク質に対する自己抗体解析こそが次世代の早期がん診断マーカーになり得ると考えられるが、本発想をもとにした研究は現在までに達成されていない。 そこで本研究ではまず、既知の情報に依存せず翻訳後修飾を含む全てのタンパク質を同時に検出することができる2次元電気泳動法を基盤とした方法論により、卵巣がん患者血清中の自己抗体を網羅的に検出し、早期診断に資する新しい自己抗体群の選択を目指した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
自己組織反応性の免疫グロブリン (自己抗体)が腹水中に含まれるかを検証するため、卵巣がん細胞株及び卵巣がん手術検体を用いた免疫蛍光染色を施行した。その結果、卵巣がん患者腹水中には主として卵巣がん細胞株の核、卵巣がん組織の細胞質及び核に対する反応性が確認された。 卵巣がん患者腹水と健常者血清に含まれる自己抗体を硫安沈殿法により精製した。得られた精製産物をPBSに溶解したものを「遊離自己抗体」、0.1 M Glycine pH3.0に溶解したものを「抗原自己抗体結合体」とした。卵巣がん細胞株のタンパク質抽出物をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離し、PVDFメンブレンに転写後、健常者血清及び卵巣がん患者腹水をそれぞれ一次抗体としたウェスタンブロット法により自己抗体の認識する抗原タンパク質を可視化した。その結果、健常人血清中のIgG、IgA自己抗体はいずれも殆ど検出されなかったが、IgM自己抗体は遊離IgG自己抗体に比して抗原-IgM自己抗体結合体がわずかに多く存在した。卵巣がん患者腹水中の遊離IgM、遊離IgA自己抗体は健常人血清同様に殆ど検出されなかった一方、遊離IgG自己抗体と抗原-IgG自己抗体結合体は3種の卵巣がん細胞株に対して明瞭な反応を認めた。 タンパク質を簡便に単離できる二次元電気泳動法を用いて自己抗体の認識する抗原タンパク質の検出を試みた。その結果、卵巣がん患者腹水中の抗原-IgG自己抗体の認識する抗原は健常人血清に比して約4倍多いことが分かり、卵巣がん患者腹水中には主として抗原抗体結合体が存在することが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
健常人、婦人科患者、卵巣がん患者を対象に、質量分析を用いて抗原抗体結合体が認識する自己抗原の網羅的同定を行う。同定された抗原タンパク質の中から免疫グロブリンを除外し、Ingenuity pathway 解析、Gene ontology解析などを用いて抗原抗体結合体の結合抗原シグネチャーを見出す。
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