研究課題/領域番号 |
23K15851
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56040:産婦人科学関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
近藤 愛 (武下愛) 近畿大学, 医学部, 助教 (50733557)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 胎盤 / 概日リズム / 時計遺伝子 |
研究開始時の研究の概要 |
体内時計の乱れは生体に様々な悪影響をもたらす。妊娠期においても、社会的時差ボケが妊娠合併症発症や胎児発育遅延の関連因子であるとの報告がある。しかし、そのメカニズムについては不明である。そこで本研究では、胎盤特異的に時計遺伝子を欠損させたマウスを作製し、このマウスの胎盤について形態的および機能的な変化を解析する。さらに母体の健康状態や胎児の発育状況を検討し、胎盤局所の概日リズムが母子の健康に与える影響を解明する。概日リズムという普遍的な事象が胎盤に与える影響を明らかにすることで、胎盤という哺乳類特異的かつ妊娠期のみ存在するという特殊な組織を理解することに繋がる。
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研究実績の概要 |
生体は概日リズムと呼ばれる約24時間周期のリズムを刻んでいる。概日リズムの中枢は、脳の視交叉上核(SCN)であるが、末梢組織においても時計遺伝子と呼ばれる概日リズムを司る遺伝子群の転写・翻訳により約24時間のリズムを刻んでいる。概日リズムが欠如した全身性時計遺伝子欠損マウスでは、妊孕性の低下や不妊といった表現型が報告されている。本研究では、胎盤特異的時計遺伝子欠損マウスを作製し、胎盤特異的に概日リズムが欠如した際の影響について検討することを目的としている。本年度は、胎盤特異的遺伝子改変マウスの作製に必要な胚操作等の技術を習得した。また、胎盤内における概日リズムの可視化を試みた。本実験は当初の研究計画では予定していなかったが、多様な細胞で構築される胎盤において概日リズムを刻む細胞種を特定することは、本研究結果を考察する上で重要であると考えた。培養下における胎盤の概日リズム発現は母体由来組織が主であるという報告があるが、生体レベルでは胎児由来組織においても時計遺伝子の発現リズムが認められている。ただし、これまで報告されている胎盤のex vivo培養での概日リズム発現は、SCNと同じ培地を用いていた。そこで、ヒト絨毛癌由来細胞株や脱落膜化細胞の培養で用いられるRPMI1640培地やDMEM/F12培地を用いて概日リズムの解析を行った。Period2の下流にluciferaseを挿入したマウスから胎盤の矢状断スライスを作製し、CCDカメラを用いて胎盤内の概日リズムを観察した。結果、SCNと同じDMEM培地においてより強いリズムが確認され、そのリズムは母体由来組織でより明確に観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究課題では、ウイルスベクターを用いて胎盤特異的時計遺伝子改変マウスを作製し、胎盤特異的に概日リズムが欠如した際の胎盤・母体・胎児への影響について検討する。 初年度の本年度は胎盤特異的時計遺伝子改変マウスを作製することを目標としていた。しかし、本研究課題の発展性を鑑み、使用するウイルスベクターを変更することを決めた。当初に計画していたウイルスベクターはP2レベルの拡散防止措置が定められているものだったが、P1レベルの拡散防止措置で使用できるベクターに変更する。そのため、遺伝子組み換え実験および動物実験の再申請と承認を受ける必要があり(現在は承認済である)、胎盤特異的時計遺伝子欠損マウスを作製するには未だ至っていない。なお、ウイルスベクターを変更したことにより、産子の研究が容易になる。近年、“胎児期や生後直後の発達期における環境因子が、成人後の健康や疾病発症リスクに影響を及ぼす”というDevelopmental Origins of Health and Disease (DOHaD)説が唱えられており、様々な研究が行われている。本研究課題では胎盤特異的に概日リズムを欠損させることから、胎児がストレスを受けると予想される。産子の出生後の成長を追うことで、胎児の解析だけでは分からなかった病態を明らかにできる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
①胎盤特異的時計遺伝子欠損マウス作製および解析 当初の計画通り、胎盤特異的時計遺伝子欠損マウスを作製し、胎盤や母体への影響を検討する。ベクター変更により実験の進捗状況が遅れていることから、RNA-seq等の網羅的解析法の利用も検討する。 ②胎盤における概日リズム発現細胞の特定 初年度において、培養下では胎盤の概日リズム発現は母体由来組織においてより強く保持されていることが改めて確認された。しかし、生体内では迷路部においても時計遺伝子の発現リズムが存在することから、今回の培養条件では迷路部の概日リズムをとらえることができていないと考えられる。スライス培養で迷路部も含めた胎盤全体の概日リズムが観察できれば、種々のホルモン等の外部刺激に対する反応を観察できることから、培養条件の検討を引き続き行う。同時に、生体から経時的に採取した組織切片を用いた解析など異なる手法も用いて、概日リズム発現細胞の特定を目指す。
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