研究課題/領域番号 |
23K15896
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56050:耳鼻咽喉科学関連
|
研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
栗原 渉 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (90826926)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
|
キーワード | 難聴 / オルガノイド / アポトーシス / 核酸医薬 / ハイドロゲルマイクロビーズ / アンチセンスオリゴ |
研究開始時の研究の概要 |
全世界で6.1%の人口が罹患しているとされる“難聴”の原因の大部分を占める感音難聴には根本的な治療法がない。そこで、新たな治療アプローチとして遺伝子治療や再生治療が提唱されているが、現在有効性が証明された治療法は存在しない。一方、創薬の分野では次世代医薬として核酸医薬が注目を集めている。核酸医薬は従来の低分子医薬品や抗体医薬品では標的にできなかった新規分子 (RNA、DNA等)をターゲットにできる点において魅力的である。本研究は、核酸医薬:hP53アンチセンスオリゴ を新規難聴治療薬として用いるためのproof of conceptを得ることを目的とする。
|
研究実績の概要 |
全世界で6.1%の人口が罹患しているとされる“難聴”の原因の大部分を占める感音難聴には根本的な治療法がない。そこで、新たな治療アプローチとして遺伝子治療や再生治療が提唱されているが、現在有効性が証明された治療法は存在しない。一方、創薬の分野では次世代医薬として核酸医薬が注目を集めている。核酸医薬は従来の低分子医薬品や抗体医薬品では標的にできなかった新規分子 (RNA、DNA等)をターゲットにできる点において魅力的である。本研究は、「核酸医薬:hP53アンチセンスオリゴ を新規難聴治療薬として用いるためのproof of conceptを得るもの」である。 まず、核酸医薬を評価するためのモデルの整備を行った。これまでの研究で、申請者らはヒトiPS細胞由来内耳オルガノイド(人工臓器)を用いてシスプラチン起因性難聴に対する治療薬の検証を行い、シスプラチンによる内耳細胞のアポトーシスをCDK2阻害剤により抑制可能であることを確認した。内耳オルガノイドにシスプラチンを投与すると24時間時点でCleaved Caspase-3(アポトーシスマーカー)がup regulateすることでアポトーシスによる細胞死が惹起された。ここで、CDK2阻害剤を添加することでCleaved Caspase-3の発現は抑制された。しかし、長期で見るとMAP2(神経マーカー)の低下は抑えられず、内耳細胞の細胞死を避けるまでの効果は無いことが分かった。本実験系から臨床的に重要なシスプラチン起因性難聴にアポトーシスが関連することを示しており、核酸医薬の評価系として適していると考えられた。具体的には、CDK2阻害剤よりも強力な抗アポトーシス作用を有する薬剤が評価可能であると考えられ、シグナルカスケードに直接作用するアンチセンスオリゴの利用を考案した。P53の阻害を特異的に行うことでアポトーシス抑制作用が期待できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
内耳オルガノイドのシスプラチン障害モデルを作製し、3次元組織のまま薬効評価を行うことを計画していたが、3次元の実験系で薬効評価を行った場合に時間と煩雑な手技を要することが分かった。そこで、シスプラチン障害作用を簡便に評価するための実験系を確立しおおむね機能することを確認した。簡便な評価系が構築されたことで、多数の投与条件において薬効評価を行うことが可能となった。
|
今後の研究の推進方策 |
申請者の所属する研究室では、国内のアンチセンスオリゴをデザインするベンチャー企業よりヒトP53(hP53)をターゲットとした、極めて有効なアンチセンスオリゴの提供を受けている。X社の特徴的な技術は、通常は25mer以上必要なRNA標識配列を、立体構造に工夫を加えることで標識得意性を損なうことなく10mer以下に抑えたことである。分子量を大幅に減少できた事により細胞への導入効率の上昇が期待される技術である。実際に、トランスフェクション試薬非存在下でも細胞内で機能することが確認されている。 予備実験として、Hela細胞にシスプラチンを投与してアポトーシスを惹起したうえでアンチセンスオリゴを導入した。すると投与後12時間時点でアポトーシス関連分子53BP1の凝集体数の上昇が抑制されるという結果が得られた。今回の予備実験では細胞障害性を考慮して低濃度での検討となったので、濃度及び投与回数や投与方法の検証も継続して行っている。また、今後の検証をもとに必要であれば配列の変更を検討する。 続いて、上記アンチセンスオリゴの薬効を、ヒトiPS細胞由来内耳オルガノイドを用いたシスプラチン起因性難聴モデルにおいて評価する。hP53アンチセンスオリゴはヒトの遺伝子配列をターゲットにしているため、その効果検証に実験動物モデルは使用できない。そこで、申請者らが新規プロトコールにより開発した、ヒトiPS細胞由来内耳細胞を使用するという着想に至った。実際に同モデルにアンチセンスオリゴ投与を開始しているが、投与条件の多群化を行い薬効評価を行う予定である。
|