研究課題/領域番号 |
23K15901
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56050:耳鼻咽喉科学関連
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
栗岡 隆臣 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 耳鼻咽喉科学, 講師 (30842728)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 耳鳴 / シナプス障害 / 神経脱髄 / 難聴 |
研究開始時の研究の概要 |
世界における耳鳴患者数は約7億人に上り、うち1億人が重症と報告されている。近年では一般市民が戦争による爆発や衝撃波に遭遇する機会が増加し、高率に耳鳴をきたすことが大きな社会問題となっているが、耳鳴の発症機序や治療法は未だ解明されていない。本研究では爆傷動物モデルを用いて、行動実験による耳鳴の他覚的評価を行い、聴覚伝導経路における神経脱髄とシナプス障害による伝導速度遅延や神経発火の同期障害が、耳鳴の発症や重症度に影響するかについて詳しく検討する。本研究における末梢から中枢聴器に至る横断的な組織生理学的評価により、耳鳴の病態解明が期待される。
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研究実績の概要 |
爆傷による聴覚障害ならびに聴覚情報処理障害の病態解明は喫緊の課題である。本研究では爆傷動物モデルを用いて、行動実験による耳鳴の他覚的評価を行い、聴覚伝導経路における神経脱髄 (myelinopathy) と シナプス障害 (synaptopathy) による伝導速度遅延や神経発火の同期障害が、耳鳴の発症や重症度に影響するかについて検討する。さらに、衝撃波の聴覚経路への伝搬様式(気導/骨導)について検討し、爆傷性耳鳴の予防法についても考察した。 実験にはCBA/Jマウス雄8週齢を使用し、衝撃波照射後にABRとDPOAEを用いて聴力閾値を評価した。障害前と比較して閾値上昇は軽微であったが、内有毛細胞-蝸牛神経間のシナプス数は有意に減少を認め、cochlear synaptopathyが観察された。有毛細胞、らせん神経節細胞や蝸牛神経髄鞘などの内耳組織学的評価では明らかな組織障害や細胞の脱落は認めなかった。Gap detection testでは照射後に驚愕反射の抑制が減弱しており、聴覚情報処理障害を認めた。聴覚中枢路においては、興奮性シナプスマーカー(VGLUT-1)及び抑制性シナプスマーカー(GAD-65)の発現が蝸牛神経核において低下し、聴覚中枢路でもシナプス障害を認めた。さらに台形体核における神経髄鞘化を評価したところ、髄鞘マーカー(myelin binding protein : MBP)の発現低下を認めた。 爆傷後の聴覚経路では、cochlear synaptopathy の他に中枢神経シナプス障害や髄鞘障害なども観察された。また、cochlear synaptopathyと聴覚中枢路におけるシナプス障害の程度が相関しなかったことから、爆傷における中枢シナプス障害は末梢聴器の障害に伴う2次性変化ではなく、衝撃波による1次性変化である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
爆傷後の聴覚経路では、cochlear synaptopathy の他に中枢神経シナプス障害や髄鞘障害なども観察された。また、cochlear synaptopathyと聴覚中枢路におけるシナプス障害の程度が相関しなかったことから、爆傷における中枢シナプス障害は末梢聴器の障害に伴う2次性変化ではなく、衝撃波による1次性変化である可能性が示唆された。耳鳴の一因が、聴覚経路のシナプス障害と脱髄性変化であることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
中枢神経の脱髄や神経障害に対する治療法について検討し、軸索ガイダンス、シナプス再形成や軸索伸長作用のある薬剤を用いて、爆傷性耳鳴に対する治療効果について検討する。
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