研究課題/領域番号 |
23K15944
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56060:眼科学関連
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
佐瀬 佳奈 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (30821904)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2027年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | オートファジー / 抗酸化作用 / p62 / Nrf2 / p62 / 抗酸化 |
研究開始時の研究の概要 |
緑内障は視神経軸索変性が先行し網膜神経節細胞死となる不可逆的な神経変性疾患である。我々は動物モデルでオートファジーのマーカーであるp62が上昇する事を報告している。緑内障と酸化ストレスの関連も多く報告されているが、p62は酸化ストレスとも関連の深い分子であり視神経軸索および網膜神経節細胞において、p62を介したオートファジーと酸化ストレスの両方に影響を与えるメカニズムがあるのではないかと考えた。緑内障モデルでのp62の発現を糸口に、酸化ストレスとオートファジーの両者に関わる経路を明らかにし緑内障の発症メカニズムを解明する。又、軸索保護により緑内障を根本治療するための治療ターゲットを導き出す。
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研究実績の概要 |
以前より我々はオートファジーの活性上昇が視神経軸索に対し保護的に働くことを報告している。オートファジーの状態を示すマーカーとしてp62が用いられているが、これはオートファジーの機能が低下すると発現が上昇する。p62は緑内障性視神経症との関連が指摘されている酸化ストレスとの関連も指摘されている。酸化ストレス時に働く生体反応としてKeap1-Nrf2システムが知られており、Nrf2の活性化で緑内障における網膜神経節細胞死を抑制する可能性があるが(Himori N et al., JNC.2013)、このNrf2の活性化にp62が関与しているとの報告がある。具体的にはp62は酸化ストレスにより集積し、その集積したp62はリン酸化される。p62がリン酸化を受けるとKeap1との結合親和性が上昇しKeap1が局在を変化させる。それによりNrf2の安定化及び核移行が起こりNrf2の標的遺伝子の発現誘導が起こるとされている。(Ichimura Y et al., Mol Cell.2013) つまり、蓄積しリン酸化されたp62はNrf2を活性化する。我々は視神経軸索障害時にp62が蓄積することを報告しているが、酸化ストレスの観点から考えると蓄積されたp62がリン酸化されるとNrf2が活性化され細胞保護の方向に働く可能性がある。そうであれば緑内障性視神経症においてp62とリン酸化p62は役割が違うと考えられる。Nrf2 は核移行することにより活性化することから視神経においては視神経軸索の核が存在する網膜神経節細胞で主に活躍するのではないかと想定できる。そこで、視神経軸索と網膜神経節細胞をわけて考え、p62を軸として酸化ストレスとオートファジー両者に関わる経路の観点から緑内障性視神経症への根本治療の導入につながる研究成果を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでオートファジー誘導体として知られているものの多くはm-TORを抑制することでオートファジーを活性化しており、オートファジーのみならず他の分子にも影響を与えてします可能性があった、そこで今回はm-TORを介さずオートファジー活性化させるTat-D11を用いて視神経軸索に与える影響を評価した。 これまでと同様にwistar rat にPBSを硝子体注射したCTL群、TNFを硝子体注射したTNF群を作成、TNFと同時にTat-D11を硝子体注射したTNF+Tat-D11群(Tat-D11は濃度を10-4M、10-5M、10-6Mと3群に設定)を作成し、視神経軸索数の評価を行った。 これまでの研究と同様に、TNF群ではCTL群に比較し有意な軸索減少を認めた。TNF群と比較しTNF+Tat-D11群ではTNFによる軸索減少を抑制しており、m-TORを介さないオートファジーの活性化でもこれまでの研究と同様に軸索保護作用が認められた。
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今後の研究の推進方策 |
m-TORを介さないオートファジーの誘導体であるTat-D11でも視神経軸索保護作用が認められた。今後はTat-D11による軸索保護作用におけるメカニズムを解明していきたい。 これまでの研究ではオートファジーに焦点をあてていたが、網膜神経節細胞死を抑制する酸化ストレス反応であるKeap1-Nrf2システムにオートファジーでも重要な分子であるp62が関与していることが分かっている。このため、TNF硝子体注射群やTNF+Tat-D11硝子体注射群における視神経、網膜をサンプルとしてp-p62、Nrf2、Keap1-Nrf2の発現を検討しTNF硝子体注射における酸化ストレスの関与とTat-D11に抗酸化作用があるか否かについて評価していきたい。 また、これらの群においてimmunoblotで酸化ストレスマーカー(COX2、CYBA、CYBB、GPX6、TXN2、TXNRD1など)や抗酸化酵素(HO-1、SOD、Glutathione peroxidase、Catalase)の発現を評価する。網膜のサンプルはレーザーマイクロダイセクションを活用し網膜の凍結切片より網膜神経節細胞を分離することで、視神経と細胞体の標的蛋白の発現の相違を明らかにする。免疫染色では網膜をサンプルとして酸化ストレスによるDNAダメージのマーカーを示す8-OHdGを評価する予定である。
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