研究課題/領域番号 |
23K15964
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分57010:常態系口腔科学関連
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
徐 嘉鍵 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (10908932)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 水受容 / 味蕾様構造 / 喉頭部 / アルテノイド |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、水受容からATP放出に至るまでのメカニズム解明に焦点を当て、Cl-脱抑制説に基づいた喉頭味蕾様構造での水受容分子の活性化現象とATP放出チャネルの機能局在について検討する。Cl-脱抑制説の確認のため、in vivo siRNA導入にてCl-チャネルノックダウンによる水嚥下への影響を調べる。喉頭味蕾様構造での蛍光免疫染色によりCALHMなどのATP放出チャネル発現の検討ののち、イオンイメージングやパッチクランプ法にて水刺激による味蕾様細胞のイオン動態と膜電圧・電流変化について明らかにする。本研究成果は、嚥下障害や誤嚥性肺炎に対する新たな予防・治療法の開発が期待される。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、Cl-チャネル脱抑制説に基づいた喉頭部味蕾様構造での水受容分子の活性化現象とATP放出チャネルCalhm1の機能局在について検討することであった。最近の水受容に関する知見によると、喉頭部味蕾様構造を支配するATP受容体陽性神経線維は水嚥下の誘発に強く関与している。ウレタン麻酔下ラットを対象に水嚥下測定実験を行ったところ、ATP受容体阻害薬の投与により嚥下運動は抑制された。過去文献の結果と一致している。以上の実験結果から、ATPは水嚥下反射の誘発において重要なメディエータと考えられる。 次に、水受容分子の活性化によりATP放出経路を着目した。ラットの喉頭部組織を摘出し、RT-PCR解析を行ったところ、代表的なATP放出チャネルと輸送体であるCalhm1、Pannexin1、Connexin43、VNUTの発現が確認された。更に、舌とアルテノイドでの上皮組織のみを対象とした定量性RT-PCR解析を行ったところ、Calhm1とVNUTは舌後方上皮組織での発現量が最も高かった。アルテノイド粘膜での発現量は舌前方上皮組織より高い傾向が確認された。蛍光免疫染色には、Calhm1、Pannexin1、Connexin43、VNUTは喉頭部味蕾様構造と周囲粘膜上皮での局在が観察された。特に味蕾様細胞尖端と隣接する周囲上皮細胞には強い免疫陽性像が確認された。 以上の実験結果により、喉頭部味蕾様構造と周囲粘膜上皮で発現しているCalhm1、Pannexin1、Connexin43、VNUTは水嚥下反射と関連したATPの放出経路として関与する可能性を示している。 上記の結果をまとめて、論文として発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、喉頭部味蕾様構造における水受容分子の活性化によりATP放出経路を検討することであった。水嚥下測定実験では、ATP阻害薬の投与により嚥下反射が抑制された。味蕾様構造を含めた喉頭部粘膜上皮にはCalhm1、Pannexin1、Connexin43、VNUTのmRNAレベル発現が確認された。更に、アルテノイド粘膜上皮でのCalhm1とVNUTの発現量は舌前方上皮(茸状乳頭含む)より高い傾向が分かった。 蛍光免疫染色の手法により、上記四分子の局在が観察された。Calhm1には、味蕾様細胞(CK8免疫陽性)はCK8免疫陰性細胞より強く発現していることが観察された。Pannexin1、Connexin43、VNUTは、味蕾様構造と周囲粘膜上皮にも免疫陽性像が観察され、特に味蕾様細胞尖端と隣接する上皮細胞は強く発現していることが分かった。 得られた実験結果により、ATP放出チャネルと小胞輸送体は喉頭部粘膜上皮でのmRNA,タンパク質レベルの発現が確認され、水嚥下反射と関連したATP放出経路として働く可能性が示唆される。 今後さらに研究を進め、論文として報告する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後、Cl-チャネル脱抑制説をより強固な証拠を得られるため、研究スタート支援課題で同定されたClC-2, 3を標的として、siRNAベクターを作成する。In vivo導入による水嚥下測定実験を行い、塩素イオンチャネルは水受容分子としての役割を検討する。 また、パッチクランプ手法を用い、単離したアルテノイド粘膜上皮細胞を純水刺激により、CHO細胞をバイオセンサーとしてATP放出量を測定する。さらに、各種のATP放出チャネル阻害薬を灌流し、ATP放出量の変化を調べる。測定後、蛍光免疫染色により細胞種を同定する。上記の実験手法で、水刺激により水受容分子とATP放出経路を明らかにする。
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