研究課題/領域番号 |
23K15967
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分57010:常態系口腔科学関連
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
伊藤 慎一郎 東京歯科大学, 歯学部, 助教 (50962114)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 幹細胞能 |
研究開始時の研究の概要 |
骨格幹細胞は、硬組織形成細胞を供給することにより骨の恒常性を維持しており、レプチン受容体(LepR)の発現を指標に、同定できることが報告されている。最近、研究代表者は歯根膜にもLepR陽性(LepR+)の細胞が存在することを見出し、幹細胞として機能する可能性を見出した。そこで本研究は、Cre/loxP遺伝子情報改変技術を用いて、LepR+細胞を一過性に標識出来るマウス(LepR-creER)を作製する。このマウスを活用し、歯根膜のLepR+細胞の自己複製能、多分化能を解析する。さらに、歯根膜のLepR+細胞を回収し、遺伝子発現プロファイルを調べることにより、既報の歯根膜幹細胞との連関を調べる。
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研究実績の概要 |
骨格幹細胞は、硬組織形成細胞(骨芽細胞)を供給することにより骨の恒常性を維持する。過去に、骨格幹細胞がレプチン受容体 (LepR)の発現を指標に同定できることが報告されている。我々はこれまでに非誘導性LepR-Cre;R26-tdTomマウスを用いて、歯根膜にも LepR が陽性の細胞が存在することを見出し、これが歯根膜幹細胞として機能する可能性を示す所見を得た(Scientific reports, 2023)。そこで本研究では、Cre/loxP 遺伝子情報改変技術を用いて、LepR 陽性細胞を一過性に標識出来るマウス (LepR-CreER)を作製する。このマウスを活用し、歯根膜の LepR陽性細胞の自己複製能、および骨芽細胞とセメント芽細胞への多分化能を生体内で解析することにより、その幹細胞性を厳密に実証する。 LepR-CreERマウスとレポーターマウス(ROSA26-loxP-stop-loxP-tdTomato(R26-tdTom))を交配してLepR-CreER;R26-tdTomマウスを作製し実験に使用した。タモキシフェン(TAM)を用いてLepR陽性細胞を標識後、上顎第一臼歯部の凍結切片を作製し、共焦点レーザー顕微鏡を用いて歯周組織におけるLepR陽性細胞を観察した。3週齢マウスに2カ月間TAMフード(400 mg/kg)を与えて永続的にLepR陽性細胞を標識し確認した結果、先行研究と同様に歯根膜細胞、セメント細胞、骨細胞でTomato蛍光の発現が認められた。次に、2週齢マウスに4OH-TAM(100mg/kg)を3日間連続投与して誘導性にLepR陽性細胞を標識した。標識後の48時間後には歯根膜中でのみTomato陽性細胞が認められたが、標識後2ヶ月では、歯根膜だけでなく硬組織形成細胞でTomato陽性細胞が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、本年度内にLepR-CreERマウスを作製することができ、レポーターマウス(ROSA26-loxP-stop-loxP-tdTomato(R26-tdTom))を交配してLepR-CreER;R26-tdTomマウスを作製し幹細胞性の実証を行った。TAMを用いてLepR陽性細胞を標識後、上顎第一臼歯部の凍結切片を作製し、共焦点レーザー顕微鏡を用いて歯周組織におけるLepR陽性細胞を観察した。3週齢のマウスに2カ月間TAMフード(400 mg/kg)を与えて永続的にLepR陽性細胞を標識した結果、先行研究と同様に歯根膜細胞、セメント細胞、骨細胞でTomato蛍光の発現が認められた。さらに、2週齢のLepR-CreER;R26-tdTomマウスに4OH-TAM(100 mg/kg)を3日間連続投与して誘導性にLepR陽性細胞を標識し48時間後には歯根膜中でのみTomato陽性細胞が認められた。一方、標識後2ヶ月では、歯根膜だけでなく硬組織形成細胞でTomato陽性細胞が認められた。 独自に作製したマウスが先行研究と同様の結果が得られ、現在は歯根膜LepR陽性細胞の幹細胞性を厳密に実証している状況である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度では、永続的な標識において、先行研究と同様の結果が得られ、LepR-CreER;R26-tdTomマウスの遺伝子導入の適格性が確認された。誘導性の標識において、2週齢標識直後では歯根膜でしか認められなかったLepR陽性細胞が、2カ月後では硬組織細胞でも認められたことから、歯根膜におけるLepR陽性細胞が硬組織形成細胞へ分化することの証明が示唆された。 そのため、今後は標識後半年及び半年齢や1年齢の長期飼育マウスでの観察を行い、LepR陽性細胞の分化や時間依存的な数量変化を観察するとともに、既報の歯根膜幹細胞との連関を解明する。
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