研究課題
若手研究
申請者は骨髄腫においてCIP2Aが腫瘍細胞特異的に発現し、脱リン酸化酵素PP2Aの活性を抑制することで細胞内情報伝達系の恒常的活性化を惹起し、腫瘍の生存・増殖や薬剤耐性を誘導していることを報告した。その後の検討で、CIP2Aの発現に関わる転写因子ELK1が腫瘍細胞において高発現すること、さらにELK1の活性を阻害すると腫瘍進展や破骨細胞形成が抑制されることを見出した。 そこで本研究では、ELK1の腫瘍の進展における役割を分子生物学的に明らかにするとともに、ELK1を標的とした新規の機序で腫瘍抑制を図りつつ、骨病変形成抑制を誘導するという画期的な治療法を動物モデルで実証し開発する。
研究代表者は骨髄腫においてCIP2Aが腫瘍細胞特異的に発現し、脱リン酸化酵素PP2Aの活性を抑制することで細胞内情報伝達系の恒常的活性化を惹起し、腫瘍の生存・増殖や薬剤耐性を誘導していることを報告した。その後の研究代表者の検討で、CIP2Aの発現に関わる転写因子ELK1が腫瘍細胞において高発現すること、さらにELK1を阻害すると腫瘍進展や破骨細胞形成が抑制されることを見出した。そこで本研究では、多発性骨髄腫の重要な臨床課題として残されている腫瘍進展の抑制、治療抵抗性の克服と骨病変部の骨形成回復をもたらす新規治療法の開発のため、ELK1の骨髄腫腫瘍進展・治療抵抗性と骨病変形成における役割を明らかにすることを目的に、本年度以下の検討を行った。1.ELK1阻害薬であるTD52を骨髄腫細胞に処理したところ、細胞増殖が抑制された。さらに、カスパーゼカスケードの活性化され、骨髄腫細胞の抗アポトーシス因子(PIM2、MYC、Mcl-1)の発現が抑制されたことから、アポトーシスを惹起することが示唆された。2.破骨細胞前駆細胞株であるRAW264.7を用いた破骨細胞形成系にTD52を処理したところ、破骨細胞形成が抑制された。3.TAK1阻害剤を用いた検討により骨髄腫細胞のELK1の発現はTAK1の活性化によって誘導されることが明らかとなり、in vivoにおいても、TAK1阻害薬は骨髄腫モデルマウスの病変部のELK1の発現を抑制した。
2: おおむね順調に進展している
計画している本研究の3つの検討事項のうち、1.骨髄腫の腫瘍進展・薬剤耐性におけるELKの分子生物学的役割の解明とELK1の阻害の抗腫瘍効果の検討および、2.ELK1の破骨細胞分化における分子生物学的役割の解明については、予想どうりにコアとなる結果はほぼ得ることができた。したがっておおむね順調に進展していると評価できる。
今後は以下の検討を行う。・ELK1阻害によるPP2A活性の評価と、アポトーシス経路の詳細な検討を行う。特に、PP2AはBcl-2経路の活性を制御していることから、ELK1-CIP2AによるBcl-2経路への役割を、Bcl-2、Bim、Badのリン酸化を指標にアポトーシス経路を詳細に検討する。また、ELK1によるPP2A活性制御によるVEGFなどの血管新生因子やMIP-1などの骨病変形成因子の産生、VLA-4-VCAM-1を介する微小環境との接着による薬剤耐性などに関与など多面的に解析する。・ELK阻害薬の骨髄腫動物モデルでの抗腫瘍作用と骨病変の進展防止作用について、骨髄腫モデルマウスを用いて検討する。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
International Journal of Hematology
巻: - 号: 1 ページ: 88-98
10.1007/s12185-023-03601-2
Antioxidants
巻: 12 号: 1 ページ: 133-133
10.3390/antiox12010133