研究課題/領域番号 |
23K15978
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分57020:病態系口腔科学関連
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
加納 史也 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 助教 (40801626)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 唾液腺 / 口腔乾燥 / 組織修復 / 歯髄幹細胞 / シングルセル / 再生医療 |
研究開始時の研究の概要 |
放射線照射後の唾液腺再生に関与する細胞をscRNA-seqで明らかにする。Sham群とRIX群と治療群の顎下腺組織をscRNAseqによるクラスタリング解析とRNA velocity解析を行う。再生に関与する唾液腺幹細胞が正常時から放射線照射後、DPSC-CM投与で辿る系譜を明らかにする。 RIXマウスへのDPSC-CM投与による治癒に関与する転写因子を同定する。DPSC-CM投与によるRIXの治癒に関連する細胞を同定する。DPSC-CM投与による転写因子の活性に関与する遺伝子リストを作成する。DPSC-CMの治療効果と同定した遺伝子群の因果関係を、siRNAや転写阻害因子を用いて検証する。
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研究実績の概要 |
口腔乾燥症は、重篤なう蝕、口腔潰瘍、嚥下障害、言語障害、味覚障害などを引き起こす。現在の口腔乾燥症の治療法は、人工唾液などの対処療法に限られており、根本的な治療法の開発が望まれている。本研究では、顎下腺(SMG)と耳下腺(PG)の導管結紮によって唾液腺を破壊した後に結紮を解除し、経時的に唾液腺の再生過程を検証した。 まず本研究は頭頸部領域で最も多い放射線性唾液腺障害のモデルマウスを用いて、検討を行なった。ICRマウスの顎下腺にX線を単回または複数回投与し、唾液分泌の測定と組織解析を用いて組織修復過程の検証を行なった。唾液分泌量は2週間程度で発現した。組織解析を行うも、本研究で予定している空間的トランスクリプトーム解析を実施できる組織を観察することはできなかった。放射線照射終了から3ヶ月で唾液腺組織への炎症系細胞の集積や線維化を観察することはできた。しかしさらに3ヶ月後から、組織修復マーカーが高発現するタイムポイントを探索するのは時間的に困難である。そのため動物モデルを放射線性唾液腺障害モデルから唾液腺導管結紮モデルに変更し、実験を行なった。 マウスのSMGまたはPGの排出導管をナイロン糸で結紮し1週間後に解除した。解除後0日、7日、14日目の唾液分泌量を測定。組織を摘出し、組織解析をHE染色、マッソントリクローム染色した。 PG、SMGともに結紮解除から唾液分泌量の回復を認めた。PGは0日目では組織の著しい萎縮を認めたが、7日目には組織の一部に唾液腺組織の回復を認め、14日目ではほぼ正常な組織像を認めた。SMGでは0日目に組織全体におよぶ線維化を認めたが、14日目には一部正常な唾液腺組織の回復を認めた。PGまたはSMGは導管結紮による重度な組織損傷後に結紮解除することで、腺房・導管細胞の再生を伴って唾液分泌能が改善することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
放射線性唾液腺障害マウスの唾液腺組織を複数の障害、タイムポイントで組織評価を行なった。しかし放射線障害を組織学的に評価を行うには長時間の観察が必要なこと、細胞の異常増殖と組織再生の評価が困難なことが挙げられた。そのためモデル動物を評価の容易な唾液腺導管結紮モデルへの変更を行なった。 唾液腺結紮モデルの最適化に時間を要した。唾液腺組織が最も再生活性が強くなる結紮条件やタイムポイントの探索が膨大であったこと。また結紮時間が長いと耳下腺は著しい萎縮を起こし、組織摘出後の解析が困難であった。現在は研究実績の概要の記載のとおり、耳下腺の組織萎縮、と顎下腺の線維化のタイムポイントは概ね明らかにすることができた。本年度は組織解析のみの解析にとどまったが、現在PCRやbulk RNA-seqにて遺伝子レベルでの組織修復のタイムポイントを探索中である。組織再生に関与するマーカーを遺伝子レベルで明らかにすることが出来れば、そのタイムポイントの唾液腺組織を空間的とランスクリプトーム解析に用いる予定である。以上によりやや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
唾液腺組織活性が最も観察できるタイムポイントの唾液腺組織をを用いた空間的シングルセル解析を行う。Akoya CODEXシステムまたはGeoMx RNA and Protein Assaysを用いて、唾液腺再生関連マーカーを発現する細胞群の局在を唾液腺組織切片上で明らかにする。さらに同定された各細胞集団の位置情報から細胞間相互作用を予測し、唾液腺の微小環境の解析を行う。Akoya CODEXシステムは現在40種類程度のタンパク質のみ対応しているため、マーカータンパクが該当しない場合は、GeoMx RNA and Protein Assaysで抗体をカスタマイズして実験を行う。 また、唾液腺再生に関与する転写因子候補からターゲット因子の同定を行う。in vitroでは、FACSでsortingした細胞クラスターにsiRNAを用いて目的遺伝子のノックダウンを行い、歯髄幹細胞培養上清投与による唾液腺導管結紮解除後の再生効果の抑制を検討する。in vivoでは中和抗体を用いて上流のターゲットタンパクの阻害または転写阻害因子の投与を行い、歯髄幹細胞培養上清の治療効果の抑制を検討する。
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