研究課題/領域番号 |
23K15979
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分57020:病態系口腔科学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
川端 由子 九州大学, 歯学研究院, 助教 (40906830)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 閉経後骨粗鬆症 / 味覚 / OVXマウス / 大規模住民健診 / 大規模健診 |
研究開始時の研究の概要 |
閉経後の女性は、女性ホルモン欠乏で骨塩量が減少し、味覚にも変化が生じる。閉経後骨粗鬆症の進行には全身的な栄養状態が関与し、治療には食事療法が不可欠である。味覚は摂食行動の調節において重要な役割を担い、その調節には生体の栄養・ミネラル需要が反映されることから、閉経後の骨ミネラル代謝異常が、末梢味覚器におけるミネラルセンシングに変調をきたすことが予想される。本研究では、①大規模住民健診データを用いて、女性ホルモン・骨ミネラル代謝マーカーと味覚検査データとの関連性の探究、②閉経後骨粗鬆症モデルマウスを用いて味覚組織における骨ミネラル代謝調節分子の発現や、それら分子の味覚における役割の解明に取り組む。
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研究実績の概要 |
閉経後の女性は、女性ホルモンの欠乏により骨塩量が減少する一方で、味覚嗜好性にも変化が生じることが報告されている。閉経後骨粗鬆症の発症と進行には全身的な栄養状態が深く関与しており、その治療には食事療法が不可欠である。味覚は、摂食行動の調節において重要な役割を担い、その調節には生体の栄養・ミネラル需要が反映されることから、閉経後の骨ミネラル代謝異常が、末梢味覚器におけるミネラルセンシングに変調をきたすことが予想される。本研究では、閉経後骨粗鬆症モデルマウスを用いて味覚組織における骨ミネラル代謝調節分子の発現や、それら分子の味覚における役割の解明に取り組む。また、大規模住民健診データを用いて、閉経後の女性における味覚検査データと、各種血液検査値(女性ホルモンや骨ミネラル代謝マーカー)、骨密度や食事調査との疫学的関連性を追求する。昨年度、閉経後骨粗鬆症モデルマウスでは味覚器における金属イオン結合やカルシウムチャネル活性に関連する遺伝子群の発現が上昇すること、ならびにカルシウム味など特定の味質に対する応答性が増強することが示唆される結果を得た。また、大規模住民健診に参加し、20から80歳代の男女約2000人に簡易味覚検査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
閉経後骨粗鬆症モデルの味覚変化について、味覚行動実験および網羅的遺伝子発現解析により、その実態が明らかになってきた。また、2023年度大規模住民健診に参加して味覚検査を実施し、閉経後女性を含めた住民の味覚データおよびその他多項目の検査データを取得している。
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今後の研究の推進方策 |
OVXマウスにおけるカルシウムをはじめ特定の味質に対する応答性の増強について、その発症メカニズムを詳細に検証していく。現在、味神経応答記録により、舌前方を支配する味神経である鼓索神経、および舌後方を支配する舌咽神経の味溶液に対する応答について解析中である。また、有郭乳頭味蕾のRNA-seqによる網羅的遺伝子発現解析で、OVX群において発現が増加した金属イオン結合やカルシウムチャネル活性に関連する複数の遺伝子について、定量PCRによるバリデーションを行っている。選定された候補遺伝子について、味蕾におけるタンパク質発現解析 (免疫組織化学染色)やノックダウン実験を用いて詳細に調べ、OVXマウスの味覚変化に関与する分子実体を明らかにする予定である。 骨粗鬆症は多因子疾患であり、その病因には女性ホルモン分泌、食事・運動などの生活習慣、および骨代謝調節等が関与する。したがって、骨粗鬆症と味覚との関連を理解するためには、これらの相関関係を疫学的に探索する必要があると考えている。2023年度参加した青森県弘前市岩木地区を対象とした岩木プロジェクト健診とその関連健診(いきいき健診、やんばる健診)で、20から80歳代の男女約2000名の味覚データを取得した。また、同時に実施されている超多項目の検査データ (血液および尿 (女性ホルモンおよび骨代謝マーカー)・骨密度・食事習慣等)も利用可能である。現在、閉経後女性を対象にして、味覚データと相関のある因子の探索を進めている。将来的には、マウスモデルを用いた基礎的研究とヒトの疫学的研究から得られた成果を組み合わせて考察し、味覚検査による骨粗鬆症の早期発見や、治療への臨床応用につなげていきたい。
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