研究課題/領域番号 |
23K16004
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分57030:保存治療系歯学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
前 めぐみ 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 客員研究員 (40967585)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 歯周病 / 骨補填剤 / 骨補填材 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、操作性や形状を工夫したβ-TCP(β型リン酸三カルシウム)または炭酸アパタイト素材の新規骨補填材が開発されているが、これまでにヒト線維芽細胞増殖因子(FGF)-2とこれらの骨補填材を併用した場合、どの骨補填材とFGF-2の組み合わせが最も骨再生効果が高いのか明らかにされていない。そこで本研究では、ラットの上顎第一臼歯の抜歯窩にFGF-2および骨補填材を填塞し、FGF-2と併用した場合にどの骨補填材が最も骨再生効果が高いかを検討する。
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研究実績の概要 |
歯周組織再生療法は歯周炎により破壊された歯周組織の再生を目的とする。ヒト線維芽細胞増殖因子(FGF)-2は国内で保険適応となり、歯周組織再生療法での使用頻度が増加している。また、幅広の歯槽骨欠損症例における歯周組織再生療法ではFGF-2と骨補填材を併用することが多い。近年、操作性や形状を工夫したβ-TCP(β型リン酸三カルシウム)または炭酸アパタイト素材の新規骨補填材が開発されているが、これまでにFGF-2とこれらの骨補填材を併用した場合、どの骨補填材とFGF-2の組み合わせが最も骨再生効果が高いのか明らかにされていない。そこで 本研究では、ラットの上顎第一臼歯の抜歯窩にFGF-2および骨補填材を填塞し、FGF-2と併用した場合にどの骨補填材が最も骨再生効果が高いかを検討する。 まず令和5年度は、新規に開発を進めている垂直性骨欠損を伴うラット歯周炎モデルの結果を検証した。6匹のLewis系ラットの上顎右側第二臼歯に絹糸を結紮し、その結紮糸に人工歯石として直径5μm以下のハイドロキシアパタイト(HA)結晶(500μg/ml)を3%ヒドロキシプロピルメチルセルロースに懸濁したものを1日1回滴下し、HA(+)群とした。コントロールとして、5匹のLewis系ラットの上顎左側第二臼歯に絹糸を結紮し、その結紮糸に3%ヒドロキシプロピルメチルセルロースのみを1日1回滴下し、HA(-)群とした。各群のラットの上顎をマイクロCTで撮影し、骨吸収量を経時的に比較した。さらに、実験を開始して1週間後および2週間後に屠殺し、固定・脱灰ののち上顎第二臼歯の連続切片を作製し、各群の標本の骨欠損状態を観察した。これらの解析から、HA(+)群で明らかな垂直的骨吸収が観察された。令和6年度には、この垂直性骨欠損を伴うラット歯周炎モデルを用いてFGF-2と併用した場合に最も骨再生効果が高い骨補填材を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
近年、操作性や形状を工夫したβ-TCP(β型リン酸三カルシウム)または炭酸アパタイト素材の新規骨補填材が開発されているが、これまでにヒト線維芽細胞増殖因子(FGF)-2とこれらの骨補填材を併用した場合、どの骨補填材とFGF-2の組み合わせが最も骨再生効果が高いのか明らかにされていない。そこで本研究では、ラットの上顎第一臼歯の抜歯窩にFGF-2および骨補填材を填塞し、FGF-2と併用した場合にどの骨補填材が最も骨再生効果が高いかを検討する。 令和5年度は、新規に開発を進めている垂直性骨欠損を伴うラット歯周炎モデルの結果を検証した。6匹のLewis系ラットの上顎右側第二臼歯に絹糸を結紮し、その結紮糸に人工歯石として直径5μm以下のハイドロキシアパタイト(HA)結晶を500μg/mlの濃度で3%ヒドロキシプロピルメチルセルロースに懸濁したものを1日1回滴下し、HA(+)群とした。コントロールとして、5匹のLewis系ラットの上顎左側第二臼歯に絹糸を結紮し、その結紮糸に3%ヒドロキシプロピルメチルセルロースのみを1日1回滴下し、HA(-)群とした。各群のラットの上顎をマイクロCTで撮影し、骨吸収量を経時的に比較した。さらに、実験を開始して1週間後および2週間後に屠殺し、固定・脱灰ののち上顎第二臼歯の連続切片を作製し、各群の標本から、骨欠損状態を観察するためにH.E染色を行った。これらの解析から、HA(+)群で明らかな垂直的骨吸収が観察された。この、垂直性骨欠損を伴うラット歯周炎モデルは、骨補填材を用いた歯周組織再生療法に適したモデルと考えられ、今後、FGF-2と併用した場合に最も骨再生効果が高いかを検討する予定である。垂直性骨欠損を伴うラット歯周炎モデルの作製には成功したものの、骨移植実験に進んでいないことから、実験はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度に垂直性骨欠損を伴うラット歯周炎モデルが確立されたので、令和6年度は、①綿状のPLGA(Poly(Lactic-co-glycolic acid))含有β型リン酸三カルシウム(β-TCP)、②炭酸アパタイト、③ウシ由来凍結 乾燥骨、④多孔質ハイドロキシアパタイト・コラーゲン複合体、⑤リン酸オクタカルシウム(OCP)・コラーゲン人工骨の5種の骨補填材料について、FGF-2と併用した際の歯槽骨再生の有効性を比較検討する。 11週齢のWistarラットに3%イソフルランで吸入麻酔を導入し、その後ドミトール、ベトルファールおよびミダゾラムの3種混合麻酔をかける 。上顎の第一臼歯を抜歯することで、骨欠損を製作し、①綿状のPLGA含有β-TCP、②炭酸アパタイト、③ウシ由来凍結乾燥骨、④多孔質ハイドロキシアパタイト・コラーゲン複合体、⑤OCP・コラーゲン人工骨の5群に分け、骨欠損内にそれぞれ填塞し、吸収性縫合糸で水平マットレス縫合を行う。4、8、12、16、20、24週間後に各群のラットを屠殺後、硬組織標本およびMicro CTで欠損作製部の骨量を形態学的に解析し、組織学的解析ではHE染色およびマッソン・トリクローム染色により膠原線維を染め分け、硬組織を観察し、生化学的解析ではqRT-PCRでアルカリフォスファターゼ(ALP)および骨形成タンパク質(BMP)の遺伝子発現量を解析する。FGF-2組織内徐放が歯槽骨における添加性の皮質骨増生を促進するという報告から、4、8、12、16、20、24週間後に経時的に検討し、また骨補填材を足場とした骨形成について組織学的、形態学的、および生化学的解析を行うことによって、5種の骨補填剤の中から最も効果のある骨補填材を明らかにすることができる。
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