研究課題/領域番号 |
23K16038
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分57040:口腔再生医学および歯科医用工学関連
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
鈴木 絢子 新潟大学, 医歯学総合研究科, 研究員 (70869916)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | コラーゲン足場材 / 口腔粘膜上皮細胞 / ペプチド修飾 / RGD配列 / ラミニン332 / アミノ酸のフルオロ化 / 培養口腔粘膜 / 基底膜構造 / 生体模倣 |
研究開始時の研究の概要 |
異分野連携により世界に先駆けコラーゲン足場材に微細な波状構造の付与に成功し、上皮脚構造をもつ移植用培養口腔粘膜を開発した。一方、上皮細胞層と足場材の間に基底膜様構造はなく、生物学的接着機能までは再現されていない。物理的微細構造の再現に加え、基底膜構造を足場材に再現することは、口腔上皮幹細胞ニッチを創生でき、培養口腔粘膜の高機能化につながる。本研究では、足場材成分である魚うろこコラーゲンのヒドロキシプロリンをフッ素化し、基底膜成分であるラミニンのペプチドタンパクを結合させることにより、生化学的、生理的な基底膜を付与し、高機能化した培養口腔粘膜の開発を行う。
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研究実績の概要 |
申請者は過去の科研課題(20K18556)で、世界に先駆けコラーゲン足場材に微細な波状構造の付与に成功し、上皮脚構造をもつ移植用培養口腔粘膜を開発した。しかしながら、上皮細胞層と足場材の間に基底膜様構造はなく、生物学的接着機能までは再現されていない。本研究は物理的微細構造の再現に加え、基底膜構造を足場材に再現することに挑戦する。本研究では、足場材成分である魚うろこコラーゲンのヒドロキシプロリンをフッ素化し、基底膜成分であるラミニンのペプチドタンパクを結合させることにより、生化学的、生理的な基底膜を付与し、高機能化した培養口腔粘膜の開発を行うことを計画した。具体的には、魚うろこコラーゲンのペプチド鎖をフッ素原子に置換した4(R)-フルオロプロリン非天然アミノ酸を含むペプチドを合成することで、ラミニン、タイプIVコラーゲンといった基底膜成分を足場材のコラーゲン表面に結合させることができると考えた。しかし、コラーゲン分子のフッ素化は仮説通りに働かず、初年度の途中でコラーゲン表面分子をペプチド修飾する方法に変更した。その結果、コラーゲン製足場材をペプチド修飾した後、ラミニン5または、いままでのプロトコール通りのタイプIVコラーゲン溶液で浸漬後、通常通り作製した培養口腔粘膜を免疫組織化学的染色に検討した結果、上記2群ではラミニン332が基底細胞層内のみならず、細胞外、すなわち細胞外基質でも染色されるのが認められた。また、細胞形態学的に基底細胞層の背が高く、未分化性を示していることが示唆され、また細胞層全体も厚い上皮が形成されていた。一方、ペプチド修飾したのみの足場材に、何ら細胞外基質を浸漬せずに作製した培養口腔粘膜では、培養上皮のラミニン332の染色像は基底細胞層内のみにとどまり、基底細胞も平坦であり、上皮の厚みも不十分であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に計画として記載していた、コラーゲンのペプチド鎖をフッ素原子に置換した4(R)-フルオロプロリン非天然アミノ酸を含むペプチドを合成することで、ラミニン、タイプIVコラーゲンといった基底膜成分を足場材のコラーゲン表面に結合させることで、基底膜成分を申請書独自のコラーゲン製足場材に応用することは奏功しないと早々に諦めて、コラーゲン表面の約25%に露出しているリジン残基に着目して、この官能基をペプチド修飾して、さらにRGD配列をもったペプチドを結合させることで、基底膜構成分子のコラーゲン表面への接着を促すことに奏功したことが現在に至っている。スクリーニング的に、使用したいくつかのペプチドと、基底膜成分分子の組み合わせを考えたが、1回で適当な組み合わせに出会えたことが時間をロスせずに済んだことにつながっている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の成果から、申請者が用いた新たな方法により、培養口腔粘膜を構成するコラーゲン製材と基底層細胞間に基底膜様構造形成されていることが示唆されたわけであるが、基底層細胞が発現するインテグリンと細胞外基質が結合して基底膜成分を構成すると言われる。コラーゲンが基質の場合は、インテグリンα6β1、α2β1であるのに対して、ラミニンではα6β4が基底膜との接着因子と働くことがわかっているので、免疫組織化学的検討を加え、分子レベルでいかにして今回のペプチド修飾の方法が、基底膜成分の形成に貢献したのか分子レベルでの検討を予定している。
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