研究課題/領域番号 |
23K16039
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分57040:口腔再生医学および歯科医用工学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中野 綾菜 広島大学, 医系科学研究科(歯), 研究員 (60911568)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 組織工学 / 骨形成因子 / 血管内皮細胞成長因子 / コラーゲン / 3Dプリティング / スキャホールド / 3次元プリンティング / 骨形成 / 組織構造制御 / 顎裂閉塞治療 |
研究開始時の研究の概要 |
顎裂部閉塞治療のための移植片を体外で作製する場合、血管と仮骨が秩序正しく配置された組織片であることが望ましい。そこで本研究では、この問題の解決への糸口を見出すため、バイオ3次元プリンティング技術の応用を試みる。まず、間葉系幹細胞の骨分化および血管形成を促進するBMP-2およびVEGFをコラーゲン溶液に溶解したインクを調製する。それら2種類のインクを用いてバイオ3次元プリンターにより微細構造を描画することで、特定の部位に異なる分化誘導因子を配置したスキャホールドを得る。ここに間葉系幹細胞を播種し、骨組織および血管組織を空間特異的に誘導して、その結果、ヘテロ組織構造体が形成されることを示す。
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研究実績の概要 |
自家骨移植に代わる新たな顎裂閉塞治療法として組織工学が注目されている。骨欠損部へ移植する組織片を体外で作製する場合、血管と仮骨が秩序正しく配置された組織片であることが望ましい。しかしながら、このような複合組織を構築するのは、現在の技術では難しい。そこで、本研究では、この問題の解決への糸口を見出すため、バイオ3次元プリンティング技術の応用を試みることとした。 まず、間葉系幹細胞の骨分化および血管形成を促進するBMP-2およびVEGFをコラーゲン溶液に溶解したインクを調製するため、それらの細胞成長因子にコラーゲン結合性を持つポリペプチドドメイン(CBD; von Willbrand因子A3ドメイン)を融合したキメラタンパク質の作製に取り組んだ。以前の研究で、BMP2-CBDおよびVEGF-CBDを発現させるための大腸菌ストックを調製し、それらのキメラタンパク質の特性解析も一部行ったが、本研究ではより機能性に優れたキメラタンパク質の設計・作製を進めた。取得したキメラタンパク質のコラーゲン親和性および細胞制御機能、とくにBMP2ドメインの骨分化促進活性について調べ、インク材料としての基礎的知見を得た。また、キメラタンパク質の高次構造を人工知能の手法を活用した予測プログラムAlphaFold2を用いて解析することを試み、機能評価結果との整合性を検証した。これによって、キメラタンパク質の構造と機能に関する理解が深まるとともに、in silico構造予測が材料構成要素の設計に役立つことを示した。これに関して現在論文を投稿中である。 一方、2023年度後半に予定していたバイオ3Dプリンターによるスキャホールドの作製に関する検討では、画像データから造形物作製までの一連の操作に関する技術の習得に留まっている。これは、上述のキメラタンパク質の作製や解析などに予想以上に時間を取られたためである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
キメラタンパク質の改良、作製に予想以上の時間を要した。また、新たにコンピュータを用いたキメラタンパク質の高次構造予測が有益な情報を与えることに気付き、同手法を用いたin silico構造解析に多くの時間を割いた。以上の結果、当初計画していた研究項目の一部を進めることができなかった。その項目に関しては、2024年度4月から取り組む。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、以下の2つの項目について研究を進める。 (1)バイオ3Dプリンターによるスキャホールドの作製:マルチノズル型バイオ3D プリンターを用いて実験を行う。この装置は、予め作製した構造データを標準的なSTLファイル形式で作成し、それをもとに、底部のステージをZ方向に制御しながら、それと鉛直方向に設置されたシリンジタイプヘッドを、XY方向に移動させ、インクを定速押出しすことで3次元的に描画を行う。まず、メッシュ型や球形ボイド分散型などの単純3D構造をコラーゲンインクを用いて描画し、その速度や吐出物の細度と生成体の構造安定性との関連について知見を得る。次に、蛍光物質で標識した2種類のタンパク質を用いて3D 描画を行い、それぞれのタンパク質を自在に配置できるか、また、2種類の分化誘導因子が空間制御されて配置されたスキャホールドを作製できるか試みる。 (2)間葉系幹細胞を用いた血管網-仮骨複合化組織の構築:1種類の分化誘導因子キメラ(BMP2-CBDあるいはVEGF-CBD)を担持したスキャホールド、および2種類の分化誘導因子を空間特異的に担持したスキャホールド内に上記の細胞を播種して培養する。スキャホールド内部へ培地が十分循環するよう、灌流培養を行う。数日から数週間培養した後、スキャホールド内部における細胞分化や組織形成の状態について、共焦点レーザー顕微鏡観察、組織切片の蛍光免疫染色によって分析する。3Dプリントされた内部構造の形状パラメーター、分化誘導因子の濃度や放出救度等と、組織形成の速度やコンパートメント化の進行を関連させて考察する。これらの結果をもとに、異なる分化誘導因子の局所的な作用をもとに、細胞の分化を別々に方向付け、結果としてヘテロ組織構造を生み出すことができるか検証する。
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