研究課題/領域番号 |
23K16052
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分57040:口腔再生医学および歯科医用工学関連
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研究機関 | 朝日大学 |
研究代表者 |
高橋 萌 朝日大学, 歯学部, 助教 (60792984)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ブラジル酸グリーンプロポリス(BGP) / 炎症性サイトカイン / 抑制性サイトカイン / GW9664 / 歯髄細胞の石灰化 / 硬組織形成細胞 / サイトカイン産生制御機構 / BGプロポリス主成分アルテピリンC / 歯髄由来間葉系細胞の増殖・分化促進 / PPARγ阻害剤GW9662 / 高機能性歯髄覆髄材 |
研究開始時の研究の概要 |
歯科治療において直接覆髄処置による良好な予後を獲得するためには、露髄面下の歯髄組織の修復促進のみならず、修復象牙質の形成も促進する必要がある。ブラジル産グリーンプロポリスの主成分であるアルテピリンCには免疫制御作用により炎症性サイトカイン産生を抑制し軟組織の治癒効果が期待される。PPARγ阻害剤であるGW9662には硬組織形成細胞の誘導を促進する働きが期待される。この2つの併用により、軟組織修復効果を高めるとともに、硬組織形成を促進する新たな高機能歯髄覆髄材の作出が可能であるか検討する。また、中国産プロポリスやその主成分であるCAPEなど、他のプロポリス成分も用いて上記と同様の検討を試みる。
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研究実績の概要 |
プロポリスは口腔の軟組織における炎症を抑え、治癒効果を高めることが既に報告されている。 我々は既に、ブラジル産グリーンプロポリス(BGP)が抗CD3抗体刺激マウス脾細胞の炎症性サイトカイン産生を抑制し、Th2型の抑制性サイトカインを軽度に促進する一方で、IL-2産生を顕著に促進することを突き止め(Tsuruta H, 2022)、BGPが歯髄治療薬として消炎と軟組織修復を促進する可能性を見出している。 一方、BGPは硬組織形成細胞の分化を抑制することが報告されており(Elkhenany H, 2019)、その背景としてBGPによるPPAR-γを介した脂肪細胞や軟骨細胞への誘導が優位に引き起こされることが指摘されている。 そこで我々は、 BGPが歯髄由来間葉系細胞の分化・石灰化にどのような影響を及ぼすか、さらにPPAR-γのアンタゴニストであるGW9662存在下/非存在下において、それがどのように変化するか検討し、次いでこれら因子が刺激脾細胞のサイトカイン産生にどのような影響をおよぼすか検討した。低濃度のBGP(1/32000以下)は、歯髄細胞の硬組織形成細胞への石灰化を促進することが示唆された。一方、BGPは濃度依存的に刺激脾細胞のサイトカイン産生を抑制性(Th2優位)に変化させる働きのあることが示され、GW9662は、BGPのこの作用をさらに促進することが示唆された。結論として、硬組織形成を促進するとともに局所の炎症を治癒する理想的な歯髄覆髄材の開発に貢献しうることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)BGP及びGW9662がヒト歯髄細胞の硬組織形成細胞への分化におよぼす影響。ヒト歯髄細胞(DP002)を用いて、BGP及びGW9662存在下で硬組織形成細胞への分化誘導を試みると、1/32000希釈以下の低濃度のBGP存在下において、コントロールに比べ石灰化が促進されたが、GW9662を共培養しても、有意な変化は観察されなかった。2)BGP及びGW9662が刺激脾細胞の抑制性サイトカイン産生におよぼす影響。マウス刺激脾細胞を用いて、BGP及びGW9662存在下で抑制性サイトカインであるIL-4及びIL-10産生の変化を観察すると、コントロールに比べIL-4は1/16000希釈以下のBGPの濃度において産生が促進され、それはGW9662共存下においてさらに促進された。IL-10産生では、顕著な変化は観察されなかった。3)BGP及びGW9662が刺激脾細胞のIL-2産生におよぼす影響。マウス刺激脾細胞を用いて、BGP及びGW9662存在下でIL-2産生の変化を観察すると、コントロールに比べ1/16000希釈以下のBGPの濃度において産生が促進され、それはGW9662共存下においてさらに促進された。4) BGP及びGW9662が刺激脾細胞の炎症性サイトカイン産生におよぼす影響。マウス刺激脾細胞を用いて、BGP及びGW9662存在下でIFN-γ、IL-6,IL-17産生の変化を観察すると、BGPの濃度依存的にそれらの産生は抑制され、GW9662共存下でそれらは更に抑制された。 以上の結果をまとめると、低濃度のBGP(1/32000以下)は、歯髄細胞の硬組織形成細胞への石灰化を促進することが示唆された。一方、BGPは濃度依存的に刺激脾細胞のサイトカイン産生を抑制性(Th2優位)に変化させる働きのあることが示され、GW9662は、BGPのこの作用をさらに促進することが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
低濃度のBGP(1/32000以下)は、歯髄細胞の硬組織形成細胞への石灰化を促進するとともに、刺激脾細胞のサイトカイン産生を、炎症を治癒に向かわせる抑制性(Th2優位)に変化させる働きのあることが示され、GW9662は、BGPのこの作用を促進することが示唆された。今後はこれら物質を含有する覆髄材の作製を行い、それらの馴化培地を調製してヒト歯髄細胞の石灰化を促進するとともに刺激マウス刺激脾細胞のサイトカイン産生を抑制性に変化させる理想的な配合の条件検討を目指す。
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