研究課題/領域番号 |
23K16121
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分57060:外科系歯学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
川島 万由 九州大学, 歯学研究院, 共同研究員 (90876541)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2023年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
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キーワード | ヒト歯髄幹細胞 / 細胞外小胞 / 培養上清 / 人工神経 / 神経再生 / 抗炎症作用 / 神経再生能力 |
研究開始時の研究の概要 |
現在までに様々な細胞を利用した神経再生は、自家神経移植の成績に及ばず、細胞を使う以上、腫瘍化のリスクがあり、費用対効果も高く臨床応用に至っていない。 一方、細胞外小胞(EVs)は標的細胞に運搬されることで、免疫機能の制御、炎症反応の抑制さらには組織修復といった様々な生物学的機能がある。特にヒト歯髄幹細胞(DPSCs)のEVsは他の幹細胞と比較して抗炎症作用や組織再生能が高いことが分かっている。 そこで、本研究では人工神経に、DPSCsのEVsを付加する技術を確立すること、動物実験においてEVsを付加した人工神経における神経再生の期間の検討およびその標的細胞の同定を行うことを目的とした。
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研究実績の概要 |
歯髄幹細胞の培養上清を回収し、フォスファチジルセリンアフィニティー法を用いて細胞外小胞を回収し、その評価として、表面マーカー(CD9、CD69、CD81)を用いてウエス タンブロット法及び透過型電子顕微鏡でその存在を確認し、200nmの大きさで円形であることがわかった。次にラットの坐骨神経に、細胞外小胞を付加した人工神経を8週齢のラットの坐骨神経に移植した。その評価として、移植後1日目、7日目、14日目に機能評価(坐骨神経の損傷の程度を示す坐骨機能指数)を行い、14日目(10週齢)に坐骨神経とその支配筋である腓腹筋を摘出し、組織学的評価、神経の生理学的評価及び腓腹筋の重量の変化を評価した。組織学的評価として、術後14日目に摘出した神経のH-E染色では、細胞外小胞移植群及び自家神経移植群において連続した神経様組織を認めた。また、神経の蛍光免疫染色においても、細胞外小胞移植群及び自家神経移植群において神経及び血管内皮細胞のマーカーの発現を認めた。電気生理学的評価においても、細胞外小胞移植群及び自家神経移植群において、正常神経と類似した活動電位の波形を認めた。この細胞外小胞移植群と自家神経移植群においては、重量比及び繊維化率ともに同程度であることもわかった。術後14日目での坐骨機能指数は、細胞外小胞移植群は、自家神経移植群と同程度までの回復を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度の目標に掲げていた目標には概ね達し、人工神経のみの移植だと、自家神経移植群には劣るが、細胞外小胞を付加すると自家神経移植群と同程度に神経が再生し、支配筋の廃用萎縮も抑制されていることが示唆するところまでは進めれたため。
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今後の研究の推進方策 |
現時点で2週までの評価は確認できたため、今年度は4週での評価を行なっていく。これと同時に、細胞外小胞のターゲット細胞の同定を行うため、細胞外小胞を蛍光標識し、ラット坐骨神経切断モデルに移植を行う。その後、6時間後・12 時間後・24時間後・48時間後に移植部位を採取し、人工神経内のマクロファージ(CD68陽性)、T細胞(ヘルパーT(Th)細胞、細胞障害性T細 胞)、B細胞(CD20陽性)、血管内皮細胞(CD31陽性)、シュワン細胞(S100陽性)の免疫染色を行って、細胞外小胞を取り込んでいる細胞の確認を行 う。また、各群の人工神経を採取し、そこから各種細胞を表面マーカーの違いを使って抽出し、フローサイトメーターを使って細胞外小胞を取り込んだ細胞を詳細に検討する。同時に、実験動物のリンパ節や脾臓を摘出し、フローサイトメーターを使ってTh細胞サブセットの違いや他のリンパ 球に差異がないか検討する。細部外小胞を取り込む細胞が同定できたら、in vitroの実験で細胞を用いた詳細なメカニズムの解析を行う予定である。
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