研究課題/領域番号 |
23K16155
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分57060:外科系歯学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
早野 博紀 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 客員研究員 (20866644)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | マクロファージ / 薬剤関連顎骨壊死 / 病態形成機構 / 細胞療法 |
研究開始時の研究の概要 |
薬剤関連顎骨壊死は薬の副作用のひとつであるが,原因は分からず,治療法も存在しない.一方近年,免疫細胞のひとつであるマクロファージには多くの種類が存在し,それぞれの性質は全く異なることが解明されつつある.この研究の目的は,マクロファージに着目し,研究代表者が開発した薬剤関連顎骨壊死モデルマウスに様々なマクロファージを移植することで,マクロファージを中心とした薬剤関連顎骨壊死に対する原因の解明と新規治療法開発の礎を作り上げることにある.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,マクロファージのサブタイプである炎症性M1マクロファージ,組織修復性M2マクロファージ,組織常在性yolk-sacマクロファージに着目し,応募者が開発したビスホスホネート製剤関連顎骨壊死(BRONJ)とデノスマブ関連顎骨壊死(DRONJ)モデルマウスにそれぞれのマクロファージ移植を応用することで,組織治癒に関連したマクロファージのサブタイプ変動遺伝子・分子を同定し,マクロファージを機軸とした薬剤関連顎骨壊死に対する病態形成機構解明と新規治療法開発の基盤構築を行うことにある. 令和5年度は,開発済みのBRONJマウスに対して,全てのマクロファージを一時的に除去するクロドロネートリポソームの投与を行い,BRONJの創部が著しくその病態を悪化させることを明らかにした.また,複数のサイトカインで骨髄細胞から誘導したM1とM2マクロファージをそれぞれ移植して2週間後に屠殺をして網羅的解析を行うと(一部は終了し,一部は解析が進行中),M2マクロファージの移植では,BRONJ様病変が有意に治癒・寛解する一方で,M1マクロファージの移植では,BRONJ様病変が有意に悪化することが明らかとなった.さらに,全身的なM1またはM2マクロファージの移植は,局所であるBRONJ様病変部のマクロファージサブタイプ分布を変化させていた.すなわちM1マクロファージを全身的に移植すると,BRONJ様病変にはM1マクロファージが集積してBRONJが悪化し,M2マクロファージを全身的に移植すると,BRONJ様病変にはM2マクロファージが集積してBRONJは治癒・緩解していた.すなわち,BRONJの治癒には,創部におけるマクロファージの極性変化が必要不可欠であると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績概要で記載した通り,クロドロネートリポソームによるBRONJ悪化モデル,M1マクロファージ全身的移植によるBRONJ悪化モデルに加え,M2マクロファージ全身的移植によるBRONJ治癒・寛解モデルを作製して,多くの定量解析を実行していることから,(2)おおむね順調に進展している,と判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度の研究計画:令和5年度で得られた組織サンプルの網羅的解析をさらに進めるとともに,yolk-sacマクロファージを移植するBRONJモデルを作製して新たな組織サンプル異を得る.以上から,前年度に作製したクロドロネートリポソームによるBRONJ悪化モデル,M1マクロファージ全身的移植によるBRONJ悪化モデル,ならびにM2マクロファージ全身的移植によるBRONJ治癒・寛解モデルから得られた網羅的解析データと比較解析を行い,共通病態と相違病態から,これ等に関与する細胞や分子の予測を試みる.さらに,それぞれの動物モデルの創部軟組織から遺伝子を抽出してマイクロアレイを行い,ヒートマップを作成し,BRONJの悪化と治癒に特異的な遺伝子や相同性のある遺伝子の抽出に挑戦する.組織学的解析と免疫組織化学的解析から得られた情報と,遺伝子学的解析から得られた情報をリンクさせ,最終的にはRNA干渉疑似術による遺伝子ノックダウンを行う.具体的には,選択された候補分子のsiRNAを作製し,近年報告された簡便かつ効率の高い方法を用い,候補分子の遺伝子をRNA干渉技術によりノックダウンする.ひとつの候補分子当たりsiRNAを2個作製(外注)し,MRONJ病変部位近傍の頬粘膜下に遺伝子導入薬剤(EntransterTM-in vivo)とsiRNAの混合用液を注射投与する.本モデルも屠殺後に組織学的解析と遺伝子学的解析から,病態形成機構や治癒関連因子となりえるかを判定する.
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