研究課題/領域番号 |
23K16166
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分57060:外科系歯学関連
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
安部 勇蔵 昭和大学, 歯学部, 助教 (30909833)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | TPD52 / 低酸素 / 低栄養 / 口腔扁平上皮癌 / 腫瘍内微小環境 |
研究開始時の研究の概要 |
我々の目的は低栄養環境、あるいは低酸素環境との複合環境に曝露された口腔扁平上皮癌細胞におけるTPD52の機能の解明である。そのために通常環境との比較検討、低酸素・低栄養環境曝露時のTPD52の発現増加および減少時における変化、さらにはin vivoにおける実験で腫瘍の増大あるいは縮小について検証する。
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研究実績の概要 |
Tumor Protein D (TPD)ファミリータンパクは癌細胞の増殖・浸潤・転移をいくつかのシグナル伝達機構を介して制御していることが報告されている。我々は近年、TPD52が低酸素下で低酸素応答因子であるHIFに依存せず発現が上昇することで、口腔扁平上皮癌細胞の生存因子として働くことを明らかにした。一方、TPD52は放射線によって惹起されるゲノムDNAの損傷由来の細胞死に対する抵抗性因子であるという報告もある。これは強いストレス環境がTPD52を介した癌細胞の生存性の制御に関与していることを示唆している。低酸素環境は腫瘍内微小環境として挙げられるが、低栄養環境とTPD52の関連はほとんど研究がされていない。これまでの研究を発展させ、TPD52が低酸素・低栄養状態における口腔扁平上皮癌細胞の生存因子としての役割を検索するのが本研究の目的である。 まず低栄養環境を設定すべく、通常の1/4濃度のグルコースを用いたSAS細胞の培養を通常酸素濃度下にて行った。その結果、48時間以上では多数の細胞死を認めたため、48時間までを低栄養環境の生存限界と設定できた。続いてTPD52強制発現群とノックダウン群の細胞を用いて低栄養および低酸素環境下で培養したがグルコース濃度による明らかな変化は見られなかった。しかしながらTPD52ノックダウン群においてアポトーシス活性および細胞増殖活性の上昇を認め、アポトーシスを上回る細胞増殖活性がされていると仮説を建てた。また、オートファジー関連因子の検索をWesternblotを用いて行ったところ、ノックダウン群におけるLC3の発現がType1からType2へのコンバートが生じている他、p62の減少が見られた。これによりTPD52は低栄養状態においてもオートファジーを抑制していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は口腔扁平上皮癌細胞に対する強いストレスがTPD52に影響を与えることで生存因子として働くという事実から着想しており、放射線および低酸素環境はTPD52の発現を増加させることは実際にこれまでの研究で示されている。我々は今回、低栄養もストレス因子として影響を与えるのではないかという仮説を建てて研究を始めた。さらにTPD52強制発現群とノックアウト群を比較することで大きな差が生まれないかと予想していたものの、予想に反してほとんど差はないものとなった。細胞そのものの不調やトランスフェクションのミス等も疑ったが結果自体は大きな変化はなかった。しかしながらBrdu asseyに て細胞周期のS期における細胞のT(チミジン)の取り込み量を測定し、細胞の増殖活性の検索したところMTTasseyと同様にノックダウン群において増加が認められた。これは細胞活性が増加しているのに対しアポトーシスが増加しているということでもある。これにより、アポトーシスを上回るオートファジーが起こっているのではないかという仮説を建てることができた。Westernblotを用いた検索でもオートファジー関連因子の状態から、オートファジーとの関わりを推測することができた。
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今後の研究の推進方策 |
TPD52とオートファジーの関連については我々の先行研究でもすでに示唆されているがその経路についてはまだ詳しく研究されてはいない。また、口腔扁平上皮癌細胞とオートファジーとの関係の報告も少なく、特に低栄養環境における細胞の生存に関する制御機構はほとんど解明されていない。したがって、オートファジー経路の阻害などを検討することにより、さらなる関連について研究していく必要があると考える。また、マウスを低栄養飼料で生育させるなどのvivoにおける研究についても行っていく必要があると考える。
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