研究課題/領域番号 |
23K16191
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分57070:成長および発育系歯学関連
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
横田 聖司 岩手医科大学, 歯学部, 講師 (50802401)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 変形性顎関節症 / 滑膜細胞 / マトリックスメタロプロテアーゼ / 活性酸素種 / 間葉系幹細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
変形性顎関節症(TMJ-OA)は、重度の顎関節障害であり主に対症療法が選択されるが、原因療法は確立されていない。また、変形性関節症(OA)の滑膜細胞では、細胞内に蓄積した活性酸素種(ROS)が働いて、炎症性サイトカインの産生を増強することにより、局所の炎症症状や軟骨破壊を増強すると考えられている。一方、間葉系幹細胞(MSC)由来の細胞外小胞(EV)には抗酸化ストレス作用があるとの報告はあるが、MSC由来EV中のどの内包成分が、顎関節由来滑膜細胞中のROSの働きを抑制するのかについては不明である。本研究では、MSC由来EVのどの内包成分が炎症性反応を抑制するのかについて、分子レベルで解明する。
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研究実績の概要 |
変形性顎関節症(temporomandibular joint-osteoarthritis: TMJ-OA)は下顎頭軟骨の組織破壊、顎関節周囲滑膜炎などの退行性病変を特徴とする炎症性疾患であり、関節リウマチとともに、多くの関節炎における軟骨の組織破壊は活性酸素種のみならずTNF-αなどの炎症性サイトカインにより刺激された軟骨細胞や滑膜線維芽細胞などで合成されるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)により進行することが知られている。 TMJ-OA患者の患部由来滑液中にはMMP-2,9が有意に存在し、病態に関連すると考えられているがその発現機構の詳細については明らかになっておらず現在調査中である。 マウス顎関節由来線維芽細胞様滑膜細胞株fibroblast-like synoviocytes (FLS) (Int. J. Mol. Med., 39:799-808, 2017)へTNF-αをはじめとした炎症性サイトカインを作用させたところMMP-9のmRNAレベルでの発現が有意に上昇したことを確認した。今後はFLS1細胞においてMMP-9の発現に関するシグナル伝達経路をタンパクレベルで特定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FLS1細胞にTNF-αを投与しこの細胞内でのMMPのmRNAレベルでの発現量の変化をRT-qPCR法で確認したところ、MMP-9の発現量は有意に上昇したがMMP-2の発現量はわずかに低下した。 さらにMEK阻害剤(U0126)およびp38 MAPK阻害剤(SB203580)をTNF-αと併用するとTNF-α誘導性のMMP-9のmRNAレベルでの発現量増強効果が減弱した。一方、JNK阻害剤(SP600125)とTNF-αを併用すると、TNF-α誘導性のMMP-2の発現抑制効果を阻害するとともに、TNF-α誘導性のMMP-9の発現促進効果をさらに増強した。 以上より、TNF-α刺激により活性化するMEKならびにp38 MAPKを介する細胞内シグナルにより発現誘導されたMMP-9がTMJ-OAにおける軟骨組織の破壊に関与する可能性が示唆された。また活性型JNKはTMJ周囲組織におけるMMP-2,9の発現を抑制する可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
変形性顎関節症は、滑膜組織の慢性炎症を伴う軟骨の変性、下顎頭の骨の変形や顎関節の線維症など様々な症状を引き起こし、その治療法はスプリントやステロイド性抗炎症薬の投与など対症療法が主体となっている。これまでに我々はFLS1細胞に活性酸素種の一つである酸化ストレス(H2O2)を与えることにより、白血球走化性因子であるCXCL15のmRNAレベルでの発現量が有意に上昇していることを確認済みである。またFLS1細胞にH202を作用させるとMAPKのサブファミリーであるERKのリン酸化が確認でき阻害剤U0126を併用させるとそのリン酸化が抑制されることも確認している。しかし、酸化ストレスにより遊走された白血球が炎症性サイトカインを放出し、その結果MMPの発現量が増強しどのように軟骨の組織破壊が進行するかは不明なままである。 今後は酸化ストレスがMMPの発現にどの様に影響しているのか、またそのシグナル伝達経路を解明するべく調査を進めていく。
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