研究課題/領域番号 |
23K16194
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分57070:成長および発育系歯学関連
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研究機関 | 朝日大学 |
研究代表者 |
津金 裕子 朝日大学, 歯学部, 非常勤講師 (80754598)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | iPS細胞 / 乳歯歯髄細胞 / 胚葉体(EB) / 再生医学 / 唾液腺 / 歯科 / 唾液腺腺房細胞 / HDDPC由来iPS細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は唾液腺をレシピエント組織とし、遺伝子工学と胚様体形成を基軸に独自のin vitro分化とin vitro移植系を組み合わせた、HDDPC由来iPS細胞からのヒト唾液腺腺房細胞への効率的な分化誘導系の開発を目的とした。 本成果は口腔組織由来細胞の有効な分化誘導法となる可能性があり、また創薬研究、新薬の前臨床試験、ヒト細胞の分化能、機能解析等の研究に非常に有用で、大きな波及効果をもたらすと考えられる。
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研究実績の概要 |
近年の研究において、マウスiPS細胞から誘導したオルガノイドとよばれる三次元的な組織構築と臓器特有の機能を持った細胞凝集塊を、大唾液腺を摘出したマウスに同所的に移植すると唾液腺が再生し、残存唾液腺の導管と誘導唾液腺原基が接続し外分泌が回復することが明らかになった。つまり、in vivo分化誘導では、組織特異的オルガノイド形成と細胞分化に最適な「場」が必要と考えられる。一方で、多能性幹細胞はin vitroで様々な細胞に分化できるが、その効率的な分化誘導には胚様体 (embryoid body:EB)と呼ばれる擬似的な胚を形成させる方法が有効であることが知られる。このEBは3胚葉すべてに対応する様々な分化細胞の前駆体が存在しており、EBは多くの幹細胞が凝集した細胞集合体として考えられている。この性質を用いて、EBの時期に分化方向性を限定させることで、短期間かつ効率的に目的の分化細胞を得られることが可能となる。 そこで本研究では唾液腺をレシピエント組織とし、遺伝子工学とEB形成を基軸に独自のin vitro分化とin vivo移植系を組み合わせた、乳歯歯髄細胞(HDDPC)由来iPS細胞からのヒト唾液腺房細胞への効率的な分化誘導系の開発を目的とした。 本研究はほぼ計画通りに進行しており、現在では未分化性と唾液腺細胞の特性を併せ持った、人工的組織特異的唾液腺幹細胞(Induced- tissue specific stem cells- Salivary、 iTSC-S)の作製にまで成功している。なお、このiTSC-SはSOX9やFoxc1などの唾液腺分化マーカーの遺伝子発現について確認済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度においては、既に作製済みであるHDDPC由来iPS細胞に対して未分化転換培地を用いることにより、未分化性を深化させたナイーブ幹細胞(NSC)の樹立を行った。NSCの培養においては、マウス胎児線維芽細胞(MEF)をフィーダー細胞として、その上にNSCを播種することで培養を行い、未分化性の維持を行った。その後NSCを非接着性ディッシュに播種し、通常培地にて浮遊培養を行うことにより胚性幹細胞(Embryoid body 、EB)を作製した。 次にEBに対して、MEF上にて幹細胞用培地(STEMFIT)SB431542などを含む唾液腺分化培地にておよそ10日間培養を行うことにより、腺細胞様細胞のコロニー形成を認めた。便宜的にこれを人工的組織特異的唾液腺幹細胞(Induced- tissue specific stem cells- Salivary、 iTSC-S)と定義した。このiTSC-SのコロニーからcDNAを抽出し、RT-PCRを行ったところ、未分化性マーカーであるOCT3/4などの発現を認め、更には唾液腺分化マーカーであるSOX9とFoxc1の発現を確認できた。このことから、iTSC-Sは未分化性と唾液腺の特性を併せ持った細胞であることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、樹立したiTSC-Sに対して、Western blotなどによるタンパク解析を行う予定である。さらにiTSC-Sを免疫不全ヌードマウスの顎下腺また耳下腺へと細胞移植を行うことで、in vivoにおける再生能や分化能について検討を行う。細胞移植後1.5か月目にマウスの剖検を行い、移植片についてHE染色を施すことにより、唾液腺の導管や腺房などが再生しているかについて組織学的解析を行う。また移植片から凍結切片を作製して免疫染色を行うことにより、SOX9などの唾液腺分化マーカー、ムチンなど唾液腺腺房マーカー、CK19などの唾液腺導管マーカーについて、確認を行う予定である。
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