研究課題/領域番号 |
23K16282
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分58010:医療管理学および医療系社会学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鳥嶋 雅子 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (80294552)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2026年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 遺伝性腫瘍 / VHL病 / サーベイランス / 遺伝カウンセリング / 検診行動 / 未発症血縁者 |
研究開始時の研究の概要 |
遺伝性腫瘍は早期からの疾患特異的な検診により、早期発見・早期治療が有用な疾患である。しかし、遺伝性腫瘍と確定した場合に、未発症血縁者が検診受診まで至るケースは多くないのが現状である。そこで、本研究では、Von Hippel-Lindau病(VHL病)をモデルとし、遺伝性腫瘍家系のがん未発症血縁者が検診受診に至らない理由と障壁、および受診しようと思う理由と促進要因を明らかにしたうえで、検診行動に繋げるプログラムを検討し、未発症血縁者のがん早期発見・早期治療に寄与することを目指す。
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研究実績の概要 |
遺伝性腫瘍は、一般のがん検診と異なる体質に応じた検診プログラムを早期から継続的に受診することにより、早期発見・早期治療に繋げることが重要と考えられている。本研究は、小児期から発症し、多用な臓器にわたり健康管理が必要なVHL病をモデルとし、遺伝性腫瘍の可能性を知ってから検診行動に至るプロセスにおいて、どのような促進・阻害要因があるのかを明らかにすることが目的である。 R5年度は、VHL病患者の遺伝カウンセリングからサーベイランスまでの行動に関連する要因を明らかにするため、京大病院遺伝子診療部の過去10年間75回分の遺伝カウンセリング記録を分析した。クライエントの特性と遺伝カウンセリング来談状況については記述統計,遺伝カウンセリング来談,遺伝学的検査受検,家族内情報共有,サーベイランス受診に関する促進/阻害要因についてはテーマ分析を行った. 来談したクライエントは,26家系41名、遺伝カウンセリングの来談目的は,遺伝学的検査受検が約8割であった。また、発端者(当該家系において、最初に遺伝学的問題に気付く契機になった人)の来談契機は,「未発症血縁者の遺伝学的検査に発端者の遺伝学的検査結果が必要と知った」が最も多く、約3割であった.発端者の確定診断から血縁者の遺伝カウンセリング来談までの期間は1年以内が約7割を占めた.また,テーマ分析の結果、遺伝カウンセリング来談・遺伝学的検査受検・家族内情報共有・サーベイランス受診には様々な要因が関連していることが明らかとなった. R5年度の調査は、遺伝カウンセリング記録を対象とした分析であることから、記録者が重要と感じた視点によって影響を受けている可能性がある。従って、R6年度はVHL病患者とその家族へのインタビュー調査を実施し、VHL病患者と家族が感じている困難感や必要な支援について検討してく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R5年度は、VHL病患者・家族の現状調査として、過去10年間の遺伝カウンセリング記録の分析を行い、その結果をHuman Genetics Asia 2023にて「Identifying patient factors related to genetic counseling visits for von Hippel-Lindau syndrome.」とのタイトルでポスター発表を行った。また、遺伝性腫瘍学会誌に、「VHL病(von Hippel Lindau syndrome)の遺伝カウンセリング・遺伝学的検査・家族内情報共有・サーベイランスに関連する要因:遺伝カウンセリング記録を用いた後方視的研究」とのタイトルで原著論文として投稿し、採択された(2024年4月末掲載予定)。 これらのことより、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
R5年度は、VHL病患者・家族の現状調査として、単一施設における過去10年間の遺伝カウンセリング記録を分析した。遺伝カウンセリング来談・遺伝学的検査受検・家族内情報共有・サーベイランス受診には様々な要因が関連していることが明らかとなった。しかし、R5年度の調査は、遺伝カウンセリング記録を対象にしていることから、VHL病患者と家族の認識を十分反映できていない可能性がある。 従って、R6年度はR5年度の調査結果を踏まえてVHL病患者とその家族へのインタビューを計画している。インタビュー調査により、当事者の視点で、遺伝性腫瘍の可能性を知ってから検診行動に至るプロセスにおいて、どのような困難感があるのか、どのような支援が必要なのかを検討する予定である。
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