研究課題/領域番号 |
23K16304
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分58020:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含む
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
小坂 聡太郎 大分大学, 医学部, 助教 (60835700)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | SLPI / 炎症性腸疾患 / バイオマーカー |
研究開始時の研究の概要 |
IBDの疾患活動性のモニタリング法として非侵襲的バイオマーカーが注目されている。本研究ではIBD診療におけるSLPIの新規非侵襲的バイオマーカーとしての可能性を見出し、その有用性を検証する。SLPIは腸炎に対し保護的に働く分子であり、腸内細菌の成分であるリポポリサッカライドの刺激により腸から分泌される。IBDの病態には腸内細菌が関与しており、SLPIはIBDのより特異的なマーカーになる可能性が考えられる。そこで、マウス腸炎モデルとIBD患者から得た血清と糞便中のSLPIをELISAで定量化し、SLPIが腸炎により高値となるかを検証するとともに、SLPI値と疾患活動性との相関性を検討する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は炎症性腸疾患診療におけるSLPIの新規非侵襲的バイオマーカーとしての可能性を見出し、その有用性を検証することである。 はじめにマウス腸炎モデルの結腸におけるSLPIの局在解析を行った。野生型マウスにDSS溶液を自由飲水させることで、潰瘍性大腸炎に類似した急性大腸炎モデルを作成した。腸炎誘導前の結腸ではSLPI発現は認められなかったが、腸炎誘導後の結腸において、SLPI発現が著明に増加した。また、免疫組織化学的解析で、SLPIは結腸の杯細胞内に強く発現しており、SLPIは腸炎発症時に杯細胞から便中に分泌されることが示唆された。 次にマウス腸炎モデルの便中・血清中SLPIの定量化を行った。DSS腸炎誘導後の野生型マウスにおいて、便中のSLPIが腸炎非誘導群と比較して有意に増加した。一方で、血清中のSLPIに関しては腸炎誘導群と非誘導群で差を認めなかった。なお、SLPI欠損マウスでは便中、血清中ともにSLPIが増加しないことが確認された。したがって、SLPIは便中マーカーとして有用性が高いと考えられた。 最後に腸炎の重症度によるSLPI発現量の変化を解析した。マウスにDSS腸炎を誘導すると、6日目で臨床症状スコアが最大となり、8日目で体重減少が最大となった。また7日目の結腸組織では炎症細胞浸潤と潰瘍形成が認められ急性腸炎の所見であった。その後、緩徐に症状は改善傾向となり、14日目には体重減少は完全に回復し、21日目には腸炎症状も消失した。便中SLPIは急性期の7日目で著明に高値となり、14日目には腸炎誘導前(0日目)と同レベルまで減少した。21日目でもSLPIの発現量は腸炎誘導前と同程度であった。以上よりSLPIは腸炎の重症度が高くなるにつれて発現量が増加し、腸炎の改善に伴い発現量が低下する、すなわち腸炎の病勢を反映するマーカーになり得ると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の実験計画で、2023年度には実験1.DSS腸炎モデルの作製・解析と検体(血清および糞便)採取、実験2.腸炎モデルマウスの血清・糞便中のSLPI値の測定(ELISA)、実験3.精度および重症度との相関の解析を予定していた。 実験1に関しては安定的にDSS腸炎を誘導することが可能となり、また腸炎の重症度(体重減少や血便下痢)の評価、HE染色による組織学的解析、および免疫染色によるSLPIの局在解析まで行うことができた。また、マウスの血清および糞便の回収も問題なく可能であった。実験2については、ELISAを用いて採取した血清および糞便中のSLPIを定量化することが可能であった。DSS腸炎誘導後の野生型マウスにおいて、便中のSLPIが腸炎非誘導群と比較して有意に増加した一方で、血清中のSLPIに関しては腸炎誘導群と非誘導群で差を認めないことが明らかとなった。実験3に関しては腸炎の重症度ごとにSLPIの発現量が異なることを発見し、腸炎が重症化するほどSLPIが高値となることを示した。しかし相関や精度の統計学的解析には着手できなかった。 上記実験は研究計画書に沿って行っており,本研究の目的を達成する上で重要なデータを得ることができたと考える.従って本研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果より、マウス腸炎モデルにおいて、SLPIは杯細胞から便中へと分泌され、それを定量化することで炎症性腸疾患の新たな便中バイオマーカーとなる可能性が示された。2024年度以降はヒト検体を用いてSLPIの発現量の解析を行うことを予定している。まずはヒトの血清・糞便検体を用いてSLPIを定量化するため、健常者、活動期及び寛解期のIBD(UC、CD)患者、IBD以外の消化管炎症性疾患(憩室炎、感染性腸炎など)から回収する。検体は受診時のルーチン検査として行った血液検査および糞便検査で用いた検体の一部を使用する予定である。具体的な手順として、まず回収した血清、糞便検体を調整し、サンプル中のSLPIをELISA法で定量化する。各群でのSLPI発現量を比較し、SLPIがIBD患者で特異的に上昇するかを確認する。次に、IBD患者の重症度を疾患活動性評価指標(UC:CAI、Partial Mayo Score;CD:CDAIやIOIBD)で評価する。IBD患者でSLPI発現量が増加する場合、疾患活動性との相関性やマーカーとしての精度を統計学的に解析する。また、同一検体を用いて他のバイオマーカー(CRP、LRG、FC)を測定し、疾患活動性との相関性や精度をSLPIのそれと比較する実験も検討している。
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