研究課題/領域番号 |
23K16308
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分58020:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含む
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研究機関 | 山陽小野田市立山口東京理科大学 |
研究代表者 |
今堀 大輔 山陽小野田市立山口東京理科大学, 薬学部, 助教 (10963556)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 天然物化学 / がん予防 / テルペノイド / がん / セスキテルペノイド / リモノイド / 熱ショックタンパク質 / 食品 |
研究開始時の研究の概要 |
熱ショックタンパク質は、外的なストレスから細胞を保護する機能を有するが、がん細胞においては、アポトーシス抑制機能が抗がん剤抵抗性を引き起こすと考えられている。本研究では、食品の高い安全性と天然物の構造多様性に着目し、抗がん剤抵抗性を改善する天然有機化合物の探索を行う。具体的には、食経験のある植物からエキスを作成し、抗がん剤感受性増強作用やがん幹細胞毒性作用を有した天然有機化合物の探索を行う。さらに、見出した化合物については、有効性を個体レベルで明らかにすることを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、食経験のある植物からエキスを作成し、抗がん剤感受性増強作用やがん幹細胞毒性作用を有した天然有機化合物の探索を行い、見出した化合物について、有効性を個体レベルで明らかにすることである。 今年度は、植物性食品より最も構造多様性に富むと言われているテルペノイド類の単離を目的として、エキスにおいて活性を示した北海道産カノコソウ(Valeriana fauriei) 根や大分県産カボス(Citrus sphaerocarpa)果皮について含有成分の探索を行った。その結果、カノコソウ根より2種の新規セスキテルペンおよび3種の新規リグナンを、1種の既知化合物とともに単離し、構造決定することができた。加えて、カボス果皮より2種の新規リモノイドを、5種の既知化合物とともに単離し、構造決定することができた。また、新規成分の化学構造はNMR、MSおよびECDスペクトルを始めとする各種物理化学的データの解析および量子化学計算により決定した。次に、得られた化合物について、がん細胞毒性およびがん幹細胞毒性試験を用いた評価を行った。その結果、カノコソウより得られた新規成分であるvalerianalignan Iおよび valerianalignan IIは、がん細胞およびがん幹細胞に対して有意な毒性を示すことが明らかになった。また、カボスより得られた新規成分であるsphaerocarpain Ⅰおよびsphaerocarpain Ⅱ、既知成分であるmethyl deacetylnomilinateおよびichanginは、がん細胞に対して有意な毒性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
北海道産カノコソウ(Valeriana fauriei) 根より、2種の新規セスキテルペンおよび3種の新規リグナンを、1種の既知化合物とともに単離し、構造決定することができた。加えて、大分県産カボス(Citrus sphaerocarpa)果皮より2種の新規リモノイドを、5種の既知化合物とともに単離し、構造決定することができた。また、得られた化合物について、がん細胞毒性およびがん幹細胞毒性試験を用いた評価を行ったところ、新規成分であるvalerianalignan I、valerianalignan IIは、がん細胞およびがん幹細胞に対して毒性を示すことが明らかになった。また、sphaerocarpain Ⅰ、sphaerocarpainⅡは、がん細胞に対して毒性を示した。 今年度において活性成分が得られたことから、今後、がん幹細胞毒性メカニズムの解明、がんモデル動物での有効性の評価を行うことが可能となった。そのため、研究計画のとおり、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度得ることができた成分について、がん幹細胞毒性メカニズムの解明、がんモデル動物での有効性の評価を行う。すなわち、がん幹細胞の維持に関わるタンパク質についてウエスタンブロッティング解析をはじめとする各種免疫学的手法により評価する。これによって、がん幹細胞の維持に影響を与える化合物を見出すとともに、候補となる標的タンパク質を絞り込む。見出した化合物について、磁性ビーズを用いたプルダウンアッセイにより、標的タンパク質の同定を行う。さらに、重度複合免疫不全マウスにがん細胞株を皮下投与したがんモデルマウスを用い、抗がん剤感受性増強作用の評価を行う。これらのことより、抗がん剤抵抗性改善薬としての有用性を明らかにし、がん再発予防に貢献できる化合物の提案を目指す。 さらに、抗がん剤感受性増強作用を有する新たな化合物の単離を目的とし、他の植物においても、エキスの活性評価を実施し、素材の探索を継続して行う。
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