研究課題/領域番号 |
23K16309
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分58020:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含む
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
北村 祐貴 自治医科大学, 医学部, 講師 (80802553)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | ナノプラスチック / 炎症性腸疾患 / 炎症性サイトカイン / 酸化ストレス / プロテオミクス解析 / バイオマーカー |
研究開始時の研究の概要 |
環境中のナノプラスチックは海に捨てられた海洋プラスチックの破片から発生し、食物連鎖を通じて我々の体内に取り込まれていることが、近年問題となっている。本研究では、ナノプラスチックの生体への影響を明らかにするために、炎症性腸疾患の細胞および動物モデルを作製し、ナノプラスチックの消化管炎症反応への影響および全身分布や臓器の蓄積性について検証する。また、二次元電気泳動法を用いたプロテオミクス解析によって、ナノプラスチックによる影響を評価できるバイオマーカーを開発する。
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研究実績の概要 |
ナノプラスチックは粒子径が100 nm以下の非常に小さなプラスチックである。環境中のナノプラスチックは海に捨てられた海洋プラスチックの破片から発生し、食物連鎖を通じて我々の体内に取り込まれていることが、近年問題となっている。経口摂取されたナノプラスチックは、消化管での炎症反応を増大させる可能性が懸念されるが、生体への影響については明らかになっていない。本研究では、炎症性腸疾患におけるナノプラスチックによる消化管での炎症反応機構を明らかにし、ナノプラスチックに対する影響を評価できるバイオマーカーを開発することで、リスク評価法の確立に貢献する。 ナノプラスチックよりも粒子径が大きいマイクロプラスチックでは、紫外線を照射すると細胞毒性が増大したことが報告されている(Sci Total Environ. 2022)。プラスチックが紫外線照射により光分解反応を起こし、表面の親水性が変化することで細胞への毒性が高まると考えられる。実際に環境中に存在しているナノプラスチックは海洋プラスチックが紫外線照射によって砕けることで生成するため、未照射のナノプラスチックよりも高い毒性を示すことが予想される。本研究では、環境中に存在するナノプラスチックを模倣した劣化ナノプラスチックを作製し、実環境を反映させたナノプラスチックの毒性評価を行う。本年度は、紫外線を人工的に照射した劣化ナノプラスチックを作製し、紫外線照射による粒子径、データ電位、表面構造などの物理的な性質への影響を評価した。また、炎症性腸疾患の共培養細胞モデルを作製し、劣化ナノプラスチックによる細胞への影響を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ポリスチレン製の50 nmナノプラスチックビーズに波長250~450 nmの紫外線ランプを24時間照射し、劣化ナノプラスチックを作製した。劣化ナノプラスチックの粒子径は紫外線の照射時間によらず変化しなかったが、データ電位は照射時間に応じて負電荷が小さくなった。また、劣化ナノプラスチックではカルボニル基やヒドロキシ基が誘導されていることがフーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)によって観察された。さらに、劣化ナノプラスチックをヒト結腸癌由来(Caco-2)細胞とマクロファージ様(THP-1)細胞の共培養することで作製した炎症性腸疾患細胞モデルに24時間曝露し、上清を用いて細胞毒性試験を行った。その結果、劣化ナノプラスチックは未照射よりも細胞傷害性が増加することが明らかになった。紫外線劣化によりナノプラスチックの表面組成が変化することで細胞内に取り込まれやすくなり、高い細胞傷害性を示す可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きCaco-2細胞とTHP-1細胞の共培養による炎症性腸疾患細胞モデルにおける劣化ナノプラスチック曝露による影響を評価する。培養上清に放出されたインターロイキン(IL)-8、IL-1β等の炎症性サイトカインをEnzyme-Linked Immuno Sorbent Assay (ELISA)法により測定したが有意な変化は見られなかった。一方で、細胞内の活性酸素種が劣化ナノプラスチックの曝露によって増加した。今後は細胞内での炎症性サイトカインや抗酸化作用に関与する遺伝子発現についてReal time PCR法により評価し、分子メカニズムを解明する。さらに炎症性腸疾患モデルマウスの作製に着手し、in vivoにおける劣化ナノプラスチックによる腸管組織への影響を評価する。
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