研究課題
若手研究
プラスチック廃棄物による汚染が世界的な環境問題になっている。細かくなったプラスチックは食物連鎖や大気汚染物を介して、ヒトに取り込まれており、最近ヒト血液中からプラスチック粒子が検出され、各臓器への移行及び深刻な健康影響の可能性について警鐘を鳴らした。一方、高齢化に伴い、アルツハイマー(AD)などの認知症の増加は国内外で大きな社会問題となっており、環境化学物質への曝露が神経変性疾患発症のリスク要因の一つであると考えられている。本研究では、ナノプラスチック曝露後中枢神経系への侵入、神経障害の誘導を調べ、その分子機構におけるグリア細胞活性化、神経炎症の役割を解明し、有効な防御戦略を調べる。
ヒトは空気や食物を通じて環境中に広く存在するマイクロプラスチック(MPs)やナノプラスチック(NPs)に曝露されており、その影響で腸や肺の損傷が報告されている。しかし、MPs/NPsが中枢神経系(CNS)に与える影響はほとんど解明されていない。ミクログリアやアストロサイト細胞は、外部刺激への応答を含む中枢神経系における重要な役割を果たしている。本研究では、MPs/NPs曝露がミクログリアとアストロサイトに与える影響を調査する。BV2ミクログリアおよびKT-5アストロサイトに、様々なサイズと表面修飾を持つMPs/NPsの曝露実験を行った。細胞毒性はMTS、LDHアッセイで評価した。MPs/NPsの取り込みは蛍光顕微鏡で観察した。炎症性サイトカイン、酸化ストレス、Nrf2通路、オートファジー等の遺伝子の発現はqPCR/ELISAで測定した。また、酸化ストレスとオートファジーは蛍光アッセイで測定した。結果として、24h曝露後BV2及びKT-5細胞において異なるサイズ/表面修飾の粒子の取り込みを確認した。細胞毒性に関して、25nmのNPsへの24h曝露後、BV2及びKT-5の細胞生存率は減少し、LDH放出量は増加した。NH2/COOH表面修飾のNPsへの24h曝露後、炎症性サイトカインTNF-aとIL-6の量が増加した。遺伝子発現量に関して、25nmサイズのNPsへの24h曝露後、酸化ストレスマーカー(Nrf2、HO-1、SOD-1等)、オートファジーマーカー(Lc3b、Atg14等)の発現量が増加した。以上の結果により、MPs/NPsはミクログリア及びアストロサイトにおいて粒子サイズと表面修飾依存的な変化を起こすことが明らかになった。また、酸化ストレスおよびオートファジーシグナル伝達に関連する遺伝子の上方制御を示した。これらのメカニズムを理解するためにはさらなる調査が必要である。
3: やや遅れている
In vivo実験に関して、遺伝子変異マウスの繁殖は想定より時間がかった。今後は、これまでのIn vitro実験の結果を解析、総括した上で、動物実験も進めていく予定である。
In vitro実験の結果の解析と総括、結果の論文化、及び成果発表を進める。一方、動物実験も進めていく予定である。
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