研究課題/領域番号 |
23K16319
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分58020:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含む
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研究機関 | 神戸市健康科学研究所 |
研究代表者 |
谷本 佳彦 神戸市健康科学研究所, 感染症部, 研究員 (10780984)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 大腸菌 / 接着因子 / シャペロン・アッシャー線毛 / 全ゲノム解析 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,下痢症患者から分離した大腸菌株からヒト培養細胞に対して接着性を示すシャペロン・アッシャー線毛を探索・整理することで,ヒトに対する下痢原性遺伝子の候補として提唱することを目的とする.遺伝子型と表現型を網羅的にスクリーニングし,得られた株は次世代シーケンサーによって全ゲノム解析し,接着因子の探索と機能を解析する.これらのアプローチは,現状ではカテゴライズされない下痢原性大腸菌を発見することに繋がり,食品衛生・公衆衛生学的に意義がある.
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研究実績の概要 |
対象としている腸管出血性大腸菌以外の下痢症由来大腸菌634株について,リアルタイムPCRによって典型的な下痢原性大腸菌 (DEC) 関連遺伝子 (9遺伝子) の保有状況を整理した.結果として,約10%がこれらのDEC関連遺伝子を保有していることが分かった.このPCRで検出できた既知のγ型のシャペロン・アッシャー (γ-CU) 線毛遺伝子保有株について,ヒト上皮由来培養細胞を用いた接着試験をしたところ,分散接着や凝集接着といった接着像を確認することができ,接着試験を遂行するプロトコルを固めた.ゲノム解析手法を進めるために,γ-CU線毛遺伝子保有株の他に,比較的多く検出されたeae遺伝子保有株 (腸管病原性大腸菌) を加えて計21株について,Illumina MiseqによるショートリードとOxford Nanopore Technologies MinIONによるロングリードを計画から先行して取得し,ハイブリットアセンブリによって全ゲノム配列を得た.データベースから分離源がヒトである大腸菌のゲノム配列を網羅的に取得し,シャペロン遺伝子・アッシャー遺伝子を対象としたγ-CU線毛遺伝子保有を検出するLocal BLASTベースのスクリプトを構築した.現在,オペロン構造の解析と分子系統などによる遺伝子多様性の解析を進めている.既知の遺伝子,バリアント遺伝子,未知の遺伝子が含まれる可能性を考え,アノテーションからの検索等,見落としがない方法を考案中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画に先んじて,下痢原性大腸菌のゲノム解析を実施した.ショートリード解析およびロングリード解析ともにローデータの取得と,ゲノム配列解析についての手法確立ができた.しかし,γ-CU線毛のデータベース上の取得に苦慮し,網羅的なリアルタイムPCR検出系については一部しか設計できておらず計画より遅れている.先行する部分と遅延している部分を鑑みて概ね計画通りとした.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,γ-CU遺伝子配列情報整理とそれを検出可能なリアルタイムPCR系の構築を進め,対象株に適用して遺伝子の有無を確認する.典型的な病原因子を持たない株については,培養細胞を用いた接着試験によって接着の有無を確認する.以上のアプローチから解析する株を絞り,それらの株について全ゲノム情報を取得する.構築したスクリプトによってγ-CU遺伝子に類似の配列のオペロン構造を見出し,対象遺伝子のノックアウト株や実験株への遺伝子導入株を作製して,当該遺伝子が接着性を有するかを評価する.
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