研究課題/領域番号 |
23K16378
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分58040:法医学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
岡野 雅春 日本大学, 歯学部, 助教 (70906544)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 母子分離マウス / 児童虐待 / DNAメチル化 / コピー数 / マウスの母子分離ストレス |
研究開始時の研究の概要 |
マウスにおいて、ネグレクトのモデルと考えられている母子分離ストレスの曝露量とDNAメチル化率の変化量との相関性の有無を明らかにする。母子分離処置に関して、①母子分離を実施する期間(1から3週間)、②1日当たりの母子分離時間(2から8時間)、③集団または単独飼育(母子分離処置中の同腹仔との接触の有無)を条件とし、子マウスが曝露されるストレス量を増減させる。これらの子マウスについて、ゲノムDNAのメチル化率およびmRNA転写産物量の変化ならびに行動解析を実施する。これらの研究を通して、法医鑑定に応用可能なDNAメチル化に基づいた虐待被害の証明および定量法の開発に向けた基礎的知見を収集する。
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研究実績の概要 |
児童虐待の通告件数が年々増加を続けている現代において,虐待被害の客観的な指標が求められている。本研究は,虐待被害の定量法を開発するために必要な分子生物学的な知見を得るためにマウスを用いて研究を実施する。このため,虐待という重要な社会課題に対して分子生物学的にアプローチする研究であるために,社会的な意義があるものと考える。つまり,申請者らは,法医鑑定に応用可能な核酸の変化に基づいた虐待被害の証明および定量法の開発を目標としている。マウスの母子分離実験は,虐待被害のひとつであるネグレクトのモデルとされている。これまでの精神医学分野では、母子分離実験が盛んに用いられており、成熟後のうつ病様マウスに対する精神医薬の評価に利用されてきた。このため、母子分離ストレスによるDNAメチル化率の変化が報告されているものの、そのメカニズムは、これまで全く検討されていない。これらのことから本研究は、DNAメチル化を用いた児童虐待の被害証明法の開発に向けた基盤を担うものである。 本研究では,母子分離条件を様々に変化させることによって,母子分離によるストレスの強弱をつけたモデルを作製し,これに対してゲノムDNA及びmRNAに生ずる変化を解析する。具体的には、母子分離処置の以下3点について子マウスが曝露されるストレス量を調整し、DNAメチル化率・コピー数・mRNA転写産物量を定量する。①様々な条件の母子分離マウスの作製,②遺伝子のメチル化,コピー数およびmRNA転写産物量の解析,③母子分離マウスの行動の観察を実施する。これらを通じて,母子分離のストレスによってマウスの核酸に変化が生ずるかをどうか,及び,ストレスの強度と核酸変化量が相関関係にあるかどうかを明らかにしたい。これらの実験を通じて,虐待被害の定量法の開発に向けた基盤的な知見を得る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究では、まず,マウスに施す母子分離の条件を検討した。マウスの新生児を取り扱った際に,母マウスが子マウスに付いた実験者の匂いなどに反応してストレスを感じ,子マウスの食殺や育児放棄につながることが知られている。また,マウスの腹間による実験結果の誤差を防ぐためにも,母子分離条件の検討を厳密に行った。申請者らは,出産まで1週間,母マウスをハウスに順化させること。ケージ内に適切なエンリッチメントを導入すること。以上のことに加えて,子マウスに接触する際に適切な器具を用いた。これらの方法を用いて,母子分離の条件を変化させた2種類の実験群を作製した。すなわち,毎日3時間を母子分離した3hグループおよび毎日6時間を母子分離した6hグループを作製した。各腹につき,3または4頭を母子分離処置群とした。残る同腹子は,実験期間中を常に母マウスとともにハウスで飼育した無処置群とした。上記の条件によって,母子分離処置の子マウスが安定して作製されており,これまでに合計10腹を実施したが,食殺や飼育放棄は生じなかった。 上記のマウスから,海馬,扁桃体及び末梢血などを採取した。これら臓器からゲノムDNAを抽出し,亜硫酸塩によりDNAのメチル化情報を保持したDNAへ変換した。また,文献情報をもとにして,複数種類の遺伝子に対するDNAメチル化を定量するためのプライマーを設計した。これらを用いてリアルタイムPCR法により,各遺伝子のDNAメチル化率を測定している。また,ゲノムに散在する反復配列をターゲットにしたコピー数解析にも着手し,設計したプライマーを用いたリアルタイムPCRにより,母子分離マウスのゲノムに存在する反復配列のコピー数を測定している。以上のように,本研究の基盤であるマウスモデルの1種類を作製できた。また,核酸解析のためのプライマーの設計や実験系も組み上がっているため着実に研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,mRNA解析を実施し,ゲノムDNAに生じたメチル化及びコピー数変化の裏付けを得る。今年度実施した1日あたりの分離時間に加えて,母子分離の条件を様々に変化させることを計画している。次年度は,今年度に確立した母子分離の手法をベースにして,複数種類の母子分離条件を作製し,核酸を解析する。今年度に作製した母子分離マウスにおいて,核酸に変化が生じたマウスが認められたため,この核酸変化がマウスの成熟後にも継続しているかどうかを明らかにする。
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