研究課題/領域番号 |
23K16541
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
石井 陽介 広島大学, 医系科学研究科(保), 助教 (70908227)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 半月板逸脱 / 逸脱動態 / 高位脛骨骨切り術 / 変形性膝関節症 / 歩行 / 動態解析 / 逸脱メカニズム |
研究開始時の研究の概要 |
変形性膝関節症の進行には、繰り返される関節負荷によって半月板の逸脱悪化が原因と考えられているが、早期段階から予防できる治療は不明である。これには半月板の逸脱がなぜ悪化するか解明されていないことが問題の根底にあり、歩行中の半月板が逸脱する動きに着目することが解決において重要である。 高位脛骨骨切り術は関節負荷を軽減させ、半月板自体を治療しなくても逸脱を減少させる。そこで本研究では、高位脛骨骨切り術前後における半月板の逸脱する動きと関節負荷の変化の関係から、なぜ逸脱が悪化するかを検討し、効果的に半月板逸脱が予防できる治療の確立を目標としている。
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研究実績の概要 |
高位脛骨骨切り術は、力学負荷を軽減させ、半月板自体に介入せずとも逸脱量を減少させる。本研究では、逸脱量を増悪させる半月板の動態に着目し、高位脛骨骨切り術前後に生じる逸脱動態と力学因子の関係からそのメカニズムを検討し、有効な逸脱予防に繋がる保存療法の確立を目標としている。 今年度は高位脛骨骨切り術前後の患者において、歩行中に生じる逸脱動態と力学的特徴の変化から、逸脱動態に関連する因子抽出を計画していた。現在、高位脛骨骨切り術患者13名と健常高齢者10名の解析が終了している。術前と比較し、歩行中の半月板逸脱量およびその動態は術後に減少していた。さらに健常高齢者との比較では、術後においても逸脱量は依然高値を示していたが、動態はその差を認めなかった。したがって、高位脛骨骨切り術は、半月板の逸脱量のみならず、その動き方を改善させる可能性が示された。 加えて、歩行中に生じる力学的パラメータは、術前と比較し膝関節内反角度・内反モーメントが術後に低値を示し、健常高齢者とも差を示さなかった。さらに、術前後に生じる力学パラメータの改善量は、膝関節内反モーメントのみが逸脱動態と関連しており、当初の仮説通り、歩行中の内側荷重負荷は半月板の逸脱動態に寄与している信用に足る見解を得た。 今後は、高位脛骨骨切り術症例のリクルートを継続し、他の力学的因子の可能性を模索すると同時に、内側荷重負荷が軽減可能な保存療法および評価方法を決定していく。これらの取り組みを通して、半月板逸脱を増悪させる力学メカニズムを解明し、根拠に基づいた保存的な介入手法の確立へ向け検討を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、高位脛骨骨切り術患者を対象に、歩行中に生じる半月板の逸脱動態と力学因子の術前後変化から、逸脱を増悪させている力学因子の抽出について検証を進めた。 高位脛骨骨切り術患者13名と健常高齢者10名の解析が終了している。術前と比較し、半月板逸脱および動態は術後で有意に改善していた。健常高齢者と比較した場合、術後患者の逸脱量は依然有意に高値を示していたが、逸脱動態は差を認めなかった。また派生研究として、外側半月板の動態評価を試み、内側半月板と相反する動態を呈しているなど、逸脱動態評価の妥当性も検証できている。したがって、これらの結果から、高位脛骨骨切り術は半月板動態を改善させ、逸脱の絶対量のみならず、その動態にも着目すべき、示唆に富む知見を得ることができた。 加えて、高位脛骨骨切り術後の歩行中に生じる運動力学パラメータは、術前と比較し、膝関節内反角度・内反モーメントが有意に低値を示し、さらに健常高齢者にも差がないことが確認できた。さらに、これらの術前後に生じた力学的パラメータの減少量は、膝関節内反モーメントにおいて逸脱動態との関連性が確認できた。したがって、当初の仮説通り内側荷重負荷が逸脱動態に影響を及ぼすことを説明する信用に足る知見を得ることができた。 これらの研究知見の一部は、第96回日本整形外科学会学術総会、第1回日本スポーツ整形外科学会、第36回中国ブロック理学療法士学会、第50回日本臨床バイオメカニクス学会、そして第1回膝OA機械因子研究会で発表を行い、さらに国際誌へも掲載されるなど広く情報が発信された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、高位脛骨骨切り術患者の症例数を増やし、他の力学的因子の可能性を模索する。加えて本年度計画である適切な保存的療法の決定は、歩行中の内反モーメント軽減が期待できる装具療法および歩容指導を検討している。特に、内反モーメントの総量である集積負荷の観点からも、現実的に実現可能な介入方法かどうかも併せて検証していく。 高位脛骨骨切り術の力学的改善に伴い、半月板逸脱の絶対値のみならず、動態にも着目する必要性が示されている。しかしこの動態は、複雑な動きを呈す症例も一部散見され、純粋な1軸運動では十分に捉えることが困難であった。したがって、複合的な動態情報を検出できる、新たな解析手法に関しても同時並行に検証を進める。 これらの取り組みを通して、力学負荷に応じた半月板逸脱の増悪メカニズムを詳細に解明し、科学的根拠に基づく有効な逸脱予防を目的とした保存療法の確立を目指していく。また、これらの得られた知見は、幅広く社会へ情報発信するため、引き続き学会発表や国際誌への論文投稿を行っていく。
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