研究課題/領域番号 |
23K16543
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
中西 和毅 鹿児島大学, 医学部, 特任助教 (00921511)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 遠隔虚血コンディショニング / RIC / 認知症 / リハビリテーション / 理学療法 / 予防 / グリア細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
世界と同様に日本においても認知症の有病率は増加している。認知症を根治できる薬物療法は存在しない現状を鑑みると、「認知症発症予防・改善」を目的とした介入方法を開発することは喫緊の課題である。本研究の目的は、認知症の予防・改善に対するリハビリテーションに立脚した新たな治療戦略を開発するため、基礎的な研究結果を得ることである。具体的には、認知症発症前に遠隔虚血コンディショニング(Remote ischemic conditioning:RIC)を実施し、認知機能低下について、グリア細胞誘発性神経炎症・酸化ストレス、内在性保護因子の発現動態に与える影響を検討する。
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研究実績の概要 |
認知症の予防・改善において、アミロイドβの蓄積を抑制あるいは除去を促すことが重要である。加えて、酸化ストレスや神経炎症を抑制し神経栄養因子を増加させることで、海馬の神経細胞をより多く残存させる必要がある。本研究で着目しているRICは脳梗塞のような虚血性疾患に対する有効性が報告されている。我々はRICが認知症に対する予防・改善効果を有する可能性があると仮説を立て、研究を実行している。 本年度は、脳血管性認知症に対するRICの効果検証するために、マイクロコイルを用いた両総頚動脈狭窄(BCAS)モデルを採用し、ラットにおけるBCASモデルが慢性脳低灌流による脳血管性認知症のモデルとして有用かを検討した。 マイクロコイルを用いたラットBCASモデルの報告はなく、マウスBCASモデルを参考に0.23あるいは0.36mmのマイクロコイルで総頚動脈を狭窄した(各群n=3)。生存率は0.23mmでBCASを作成した群で約66%、0.36mmでBCASを作成した群で0%であった。モデル作成1-2時間後の脳血流量は両群ともにモデル作成前の約55%まで低下した。モデル作成60日後の脳血流量は、0.36mmBCAS群でモデル作成前の約85%まで回復したが、0.23mmBCAS群はモデル作成前の約59%となった。 モデル作成60日後の新奇物体認識試験における認知機能検査の結果は、0.36mmBCAS群でモデル作成前の約83%まで低下し、0.23mmBCAS群はモデル作成前の約71%低下した。 モデル作成60日後の海馬におけるミクログリアは、Sham群と比較して、0.36mmBCAS群、0.23mmBCAS群ともに発現量の増加は観察されなかった。一方で、海馬における反応性アストロサイトGFAPの発現は、Sham群と比較して、0.36mmBCAS群、0.23mmBCAS群ともに発現量の増加が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ラットBCASモデルの認知機能は、マウスでの報告と異なり、60日後に低下することがわかった。しかし、0.23mmBCASモデル作成時に約24%死亡する結果となった。この結果は研究代表者のモデル作成技術に依存する可能性がある。モデル検討に時間を要し、研究の進捗はやや遅れている。現在は回収した組織やタンパクの解析を進めている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の実験結果からBCASは慢性脳低灌流を呈することが分かった。しかし、十分な認知機能低下を呈さなかった。今後の研究方策としては、ラットBCASモデルの病理学的変化、分子生物学的変化について検討を進める。加えて、マウスを用いたBCASモデルの検討を行う予定である。また、マウスにおけるRIC介入の方法を検討中である。
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