研究課題/領域番号 |
23K16620
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
|
研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
森野 佐芳梨 大阪公立大学, 大学院リハビリテーション学研究科, 講師 (10822588)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | いきみ指数 / 妊婦 / 分娩 / 骨盤底筋 / ウィメンズヘルス |
研究開始時の研究の概要 |
女性が社会進出を果たしながらも出産・育児に従事するため、出産支援の充実が求められている中、分娩進行の遅延が問題視されている。これは、母体や胎児の予後へ影響する危険性に加え、出産時に骨盤底に負担がかかることにより産後の尿もれや骨盤臓器脱へとつながるリスクがあるからである。このようなリスクを回避した滞りない分娩進行のためには、母体がいきみにより十分な腹圧をかけることができ、同時に胎児の娩出口付近に位置する骨盤底筋はできる限り弛緩(リラックス)している状態が望ましい。そこで本研究では、臨床での応用可能ないきみ指数を開発し、女性の分娩力向上の評価指標とすることを目指す。
|
研究実績の概要 |
出産時に骨盤底に負担がかかることにより産後の尿もれや骨盤臓器脱へとつながるリスクがある。このリスクを回避するためには、母体がいきみにより十分な腹圧をかけることができ、同時に胎児の娩出口付近に位置する骨盤底筋はできる限り弛緩している状態が望ましい。そこで本研究では、臨床での応用可能ないきみ指数を開発し、女性の分娩力向上の評価指標とすることを目指している。いきみ指数の開発時点では、目標値として超音波画像診断装置による骨盤底筋の収縮状況の計測や腹直筋の筋電図計測項目を用いる。 本研究では複数の指標を計測予定であるが、特に筋電図および超音波画像による評価が重要な点を占めているため、これまでにまずはこれらの実測実験を行った。具体的には、まず健常女性4名を対象とし、研究当初より予定していた腹直筋の筋電図計測に加えて、ハンドヘルドダイナモメーター(HDD)で計測予定であった内転筋、および体幹筋としての内外腹斜筋等にも試験的に表面筋電図計測を行った。これにより、いきみ中の腹直筋の筋電図を確認することができ、さらにその評価値としての筋電図データからの評価指標の検討を行った。一方、内転筋についても筋電図計測を試みたものの、助産師に確認をいただいたところ、筋電計貼付部位が実際の分娩中は計測が困難であるとの結論となり、計画当初の予定通りHDDでの計測が望ましいとの結論に至った。次に、超音波診断による計測については、健常女性7名を対象とし、いきみ中の骨盤底筋の計測を行った。この際、骨盤底筋の収縮状況を評価する複数の指標を検討したところ、いきみ時の骨盤底筋状態の変動性の評価指標CVと安静時からいきみ時にかけての骨盤底筋の収縮状況に関して、有意な正の相関関係が確認された。つまり、いきみを行った際における骨盤底筋の活動が一定でないほど、いきみ中に骨盤底筋の収縮が大きく起こっている可能性が示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、初年度は研究実施にかかる倫理審査申請を行った後、実際の分娩台を使用して成人女性50例を対象に計測を実施する予定であった。計測項目としては、超音波画像診断装置による骨盤底筋の評価、腹直筋の筋電図計測値による腹圧の評価を主とし、これに加えて複数のいきみ指数の指標を計測、聴取する予定であった。この際に計測に関する改善点が発覚した際にはこの後の修正を行う計画としていた。 これに対し現在までに、まずは研究代表者の所属機関倫理委員会での倫理申請を進め、研究実施の承諾を得た。その後、計測を開始するにあたり研究協力機関とも調整を進める中で、特に計測指標の主となる骨盤底筋の評価、腹直筋の筋電図計測評価に関しては、事前にプレ計測を行い、いきみとの関連を検討しておく必要があるとの見解を得た。これより、それぞれに関して成人女性を対象として実測実験を行い、いきみとの関連性を検討した。これにより、当初予定していた通り計測に関する改善点も明らかとなったため、この点に関しては引き続いて行う研究に活かす予定である。また、研究遂行により得られた成果について、国内学会および国際学術論文での発表を行った。一方、専門家との情報交換を通じて、計測項目をより妥当性をもって検討するために、分娩による母体への影響やその治療方法についての詳細な情報が必要であるとの見解を得た。これより、当該分野のリハビリテーションの先進国にて、臨床現場の見学、理学療法士との情報共有を行い、腹圧をかけた際の筋機能バランスや分娩による骨盤底筋群への影響について、実情に即した情報を得た。 これらより生じた研究変更により、研究実施に向けて必要となる知見や計測プロトコールに関する知識および技術の蓄積はできたものの、現在までに計測するはずであった成人女性を対象とした各いきみ指数の指標の実測実験に遅れが生じ、これらは次年度へと持ち越しとなった。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は、計画当初は初年度から健常女性を対象に、超音波画像診断、筋電図計測、ハンドヘルドダイナモメーターによる筋力計測も含めたその他の項目をすべて合わせて、実測を進める予定であった。しかし、特にいきみ指標の中核となる超音波画像診断と筋電図計測については、他の筋の計測可能性も含めてプレ実験により計測手順の検討が必要であろうとの意見が出た。これより、これまでにそれぞれの計測を単独で行い、いきみ中の評価に関して計測手法の修正等も含めて検討を行った。 このため今後は、健常女性を対象としたいきみ指数の各指標の計測を進める。具体的な計測手順としては、初めに分娩台背臥位にて対象者にいきみを行うように指示し、その際の腹圧指標(腹直筋の筋電図)および骨盤底筋収縮指標(超音波画像)を計測する。また、いきみ指数に使用する項目としてハンドヘルドダイナモメーターで腹直筋筋力および股関節内転筋筋力を計測し、体組成計にてBody mass indexおよび全身筋肉量を計測し、質問紙にて日常生活活動量および出産回数を聴取する。対象は、妊婦がいきみを行うことは困難であるため、成人女性50名とする。なお、骨盤底筋の回復を考慮し、産後女性の場合は産後6か月以上経過していることを条件とする。その後、計測した全データの解析作業を行い、主成分分析にて腹圧指標および骨盤底筋収縮指標に対するその他の計測項目の寄与率を算出する。その後、算出された寄与率を係数とし、その他の計測項目を変数としたいきみ指数を開発する。なお、いきみ指数の運用の際にはその他の計測項目は対象者個人の固定値となるため、係数がかかった後は決定項の扱いとなる。
|