研究課題/領域番号 |
23K16748
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分59030:体育および身体教育学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
萩生 翔大 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (90793810)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | 表面筋電図 / 等尺性力発揮 / 非負値行列因子分解 / モジュール / 時間周波数解析 / 筋電図 / 運動学習 / 制御モジュール / コヒーレンス |
研究開始時の研究の概要 |
自転車や車を運転する際、曲がりくねった道路や唐突な障害物など、様々な頻度で移り変わる状況に対応しながら、目的となる運動を作り出している。では、目標とする運動が絶え間なく変化する環境の中で、脳はどのようにして運動を制御し適応させているのであろうか。本研究では、上肢による視覚目標追従課題を用いて、多様な時間周波数のもとで変化する運動目標や動作環境に応じて、複数の筋の活動がどのように制御され、また学習されるのかを解明する。
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研究実績の概要 |
自転車や車を運転する際、曲がりくねった道路や突如現れる障害物への対応など、状況は頻繁に変化する。このような変動する環境下で、目的の動作をどのように脳が制御し適応させているのだろうか。本研究では、上肢を用いた視覚的目標追従課題を通じて、異なる時間周波数で変化する動作目標および環境に適応するため、複数の筋の活動がどのように制御され学習されるかを解明することを目指している。本年度は、複数の筋活動の制御機構と、時間周波数に対応した目標追従運動の生成機序を明らかにするための実験を実施した。
被験者は椅子に座り、前方に固定されたハンドルを片手で握り、力を加える課題を行った。ハンドルには力センサーが組み込まれており、水平方向の力に応じたカーソルが実時間でモニター上に表示された。モニターには、異なる周波数(0.1~2.15Hz)、振幅、位相の14種類の正弦波が合成された追従目標が示された。被験者は、モニター上で動くターゲットにカーソルが一致するように操作する目標追従課題を実施した。必要な力の大きさは最大発揮力の5%以下とした。この追従課題は、1試行約46秒で、合計48試行を実施した。
課題中、被験者の上肢の12筋から筋電図を計測した。運動の時間周波数特性を反映する筋活動の制御を明らかにするため、まず、各筋の組み合わせごとに筋活動間のコヒーレンスを計算した。さらに、計算されたコヒーレンス関数を非負値行列因子分解を用いて解析し、共通の時間周波数特性を持つ筋群を定量的に評価した。その結果、運動の周波数に応じて、筋活動はいくつかのグループに分類されることが確認された。これにより、多様な時間周波数に応じた目標追従運動を生成するための少数の筋制御モジュールの存在が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画通り、目標追従課題を構築し、複数の筋活動の制御機構と、時間周波数に対応した目標追従運動の生成機序を明らかにするための実験を実施することができた。また、本研究は、時間周波数を考慮した複数の筋の制御と、そこに内在するモジュール構造という新たな考え方を提唱するものであるが、従来議論されてきた筋制御モジュールとの関係性についても比較検討する必要がある。そのため、年度計画にはなかったが、目標追従課題とは別に、多方向への力発揮課題を実施し、従来型の時空間的な筋の協調性を反映した筋制御モジュールの定量も行った。以上の理由から、当初の計画以上に研究が進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
異なる時間周波数で変化する動作目標および環境に適応するため、複数の筋の活動がどのように学習されるかを解明することを目指す。そこで、以下の実験を実施することを計画している。実験のセットアップは、これまでの実験(研究実績の概要参照)と同様とする。ただし、試行の途中から、カーソルの動きが実際よりも45度回転して進むような操作が加えられた、視覚運動変換外乱試行を実施する。外乱により新奇な視覚運動環境への運動適応を誘発し、目標追従運動の適応過程を計測する。共通の時間周波数特性を有する筋のグループに着目し、筋活動がどのように修正されるのかを定量する。
また、これまでの実験から、運動の周波数に応じて、筋活動はいくつかのグループに分類されることが確認されている。もし、各グループが異なる役割を担っているとすれば、異なるタイプの外乱に対して、それぞれのグループが個別に適応できる可能性がある。そこで、これまでの実験の結果を考慮し、低い周波数帯のカーソルの動きには45度右向きに回転する外乱を、高い周波数帯のカーソルの動きには45度左向きに回転する外乱をそれぞれ与え、2つの異なる環境に適応することができるのかを明らかにする。
さらに、この実験で得られた結果を考慮した、運動学習シミュレーションの実施も計画している。特定の時間周波数を有する運動目標に応じて筋を活動させる、少数の制御モジュールを仮定した運動制御モデルを構築し、運動学習シミュレーションにより制御モジュールの持つ機能的な意義について明らかにする。モデルでは、各筋の活動と手先で発揮される力との遅延も考慮し、制御モジュールが支配する筋の組み合わせが示す意義についても推定する予定である。
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