研究課題/領域番号 |
23K16755
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分59030:体育および身体教育学関連
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
村松 香織 東海大学, 教育開発研究センター, 准教授 (40249032)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ダンス / ポーズ / 認知評価構造 / 感性評価 |
研究開始時の研究の概要 |
ダンスの科学的な研究において、ダンス・ポーズを「創る」ための「イメージ」と「身体表現」の関係は、長年の暗黙知である。本研究の目的は、この関係を感性工学的手法で分析し、イメージを具現化するためにはどの身体部位を用い、どのような構成で表現すべきか、という認知評価構造の知識を得ることである。また、その知識をダンスの指導へ活かすことである。従来のダンスの科学的な研究では、統計的な手法の限界から認知評価構造を分析する適切な方法は充分とはいい難い。本研究では、準備研究で得た新たな方法論を用いて、古典ダンス、リズム系ダンス、ダンスのフォーメーションを分析し、科学的な視点からダンスを「創る」指導法を提案する。
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研究実績の概要 |
本研究は、ダンスを科学的な視点から「創る」ための知識を提供することを目指している。これまでの準備研究において、ダンスの認知評価構造を得るために適した科学的な方法論を開発した。現在は、この方法論を用いた研究を初期段階として進めている。そのため、研究の基礎を固める2つの方向性から3年間の目標を設定した。 1)ダンスの比較研究:古典的なダンスおよび現代的なダンス(リズム系ダンス)を感性工学的な手法を用いて定量化する。これらを比較分析し、ダンスによる違いや共通点に関する知識を得る。2)ダンス指導法の提案:1)の知識を基に、科学的なダンス学習に適切な指導法を開発する。 2023年度は、上記1)2)の目標に沿い、以下の通り実施した。 1)ダンスの比較研究:古典的なダンスの調査と分析を行った。本年度は、今後の計画の中で基礎的な研究の位置づけであるため、ダンス表現の土台となる古典的な認知評価構造(構成法)を得ることに焦点を当てた。古典的なダンスの代表例として、クラシックバレエのポーズを分析の対象とし、バレエ・ポーズを見る時の「女性視点」および「男性視点」をそれぞれ定量化した。男女別の視点を比較分析した結果、性別によるポーズの構成法の違いと共通点についての知識を得ることができた。 2)ダンスの指導法の提案:1)の結果、「男女別の視点」および「男女共通の視点」からダンス・ポーズを「創る」ための知識が得られたので、これらを基に大学地域の学童を対象に科学的な視点によるダンス・ワークショップ等を開催した。また、指導に向けた基礎的な教材を作成した。なお、上記の成果を発表するために、比較舞踊学会の第33回学会大会で口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
3年計画のうち初年度となる2023年度の計画は、1) ダンスの比較研究(古典ダンスの調査と分析)、および2) ダンス指導法の提案(基礎的な教材の作成)から構成されている。1)の分析の一部が予定よりもやや遅れている。 1)の具体的な状況であるが、2023年度は、男女のバレエ・ポーズの調査および分析を実施した。準備研究として開発した「女性視点によるバレエの認知評価構造の分析法」と類似的な手法・解釈を用いて、「男性視点」による認知評価構造を定量化し、「女性視点」と「男性視点」の認知評価構造の比較分析を行った。その結果、「女性のバレエをみる女性視点」と「女性のバレエをみる男性視点」に関する認知評価構造上の違いや共通性を示すことができた。つまり、計画は予定通りに進んだと評価している。 その一方で、「男性のバレエをみる女性視点」と「男性のバレエをみる男性視点」の分析に関しては、それぞれの定量化に関して、開発した方法論をそのまま適用することが難しいケースが数点見つかった。そのため、方法論の確認および改良の作業が必要となり、これに起因して比較分析の一部が遅れ、2024年度も引き続き行う状況となっている。この点において、計画はやや遅れていると考えられる。 これに対して、2)ダンス指導法の提案の研究に関しては、予想以上の成果を得たと評価している。具体的には、モーションキャプチャ等の科学的な手法を用いたダンス・ワークショップ等を、複数回に渡り大学地域の学童へ提供することができた。また、1)で得た知識とダンス・ワークショップでの実践を基に、指導用の教材としてまとめる作業を行った。このような状況の中、大学の地域からは2024年度においても年間を通じたダンス指導の依頼が寄せられている。以上から、本研究における進捗状況を総合的に判断すると、当初の予定よりも若干、(3)やや遅れているとの評価が妥当と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、3年計画の中で2年目となる。まず4月から6月までは、昨年度の計画で遅れている「古典的なダンスの比較分析」に取り組み、完了させる予定である。これと並行して、2024年度に計画していた「1)ダンスの比較研究」における「①リズム系ダンスの調査と分析」を進める。 具体的には、リズム系ダンスの中から女性のソロダンスを分析の対象とし、ポーズの構成法を検証する。ここから得た知識を基に、リズム系ダンスの創作を行い「②リズム系ダンスの指導法の提案」を行う予定である。 2024年度は前年度に引き続き、大学地域において定期的なダンス・ワークショップの開催が予定されているため、①の知識をベースにダンス創作に関する指導を行う。また、このワークショップの内容を活かして、実践的かつ科学的な視点から、指導用の教材を作成することを予定している。2023年度の指導用の教材は紙媒体として作成し、写真や図を中心に説明を行った。2024年度は紙媒体の教材の作成に加えて、2023年度に準備を進めてきた教育用のウェブサイトを通じて、ワークショップ関連の情報や教材等を実践的な指導の中で活用する予定である。 以上から得られた成果を、国際学会(33rd International Congress of Psychology)および国内学会等で発表する予定である。
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