研究課題/領域番号 |
23K16868
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分60060:情報ネットワーク関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
平井 健士 大阪大学, 大学院情報科学研究科, 助教 (30903554)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | mMTC / グラントフリー / NOMA / 電力コリジョン / パケットエラー / 再送 / ALOHA / SIC |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,超多数のセンサ端末を収容するためのgrant-free型非直交多元接続 (GF-NOMA) において,GF-NOMAの特徴を考慮して,パケット衝突を減らす無線アクセス制御,及び,衝突時のインパクトを抑える再送制御を提案する.そのために,GF-NOMAの通信モデルとスループットの解析モデルの構築と,それらに基づいて,パラメータを最適化し,また,提案手法の効果を明らかにする.
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研究実績の概要 |
5Gの先の6Gに向けて,超多数の端末 (センサ等) を収容するmassive machine-type communications (mMTC) の実現が期待されている.このmMTCでは,ランダムパケット到着,端末数に影響を受けない自律分散型通信制御という条件を持つ.本研究の目的は,mMTCにおける上記の条件の下で,周波数リソースの利用効率を高めるために,特徴的な衝突が発生するGF-NOMAに適した新たな自律分散型の通信制御方式を確立することである.具体的には,GF-NOMAにおける通信制御の基本である無線アクセス制御と再送制御を高度化する. このうち,今年度は,主に,衝突したパケットのみを再送する手法において,パケットエラーに基づく衝突リソースの推定及び再送の手続きを含むモデルを設計に取り組んだ.具体的には,衝突パターンからパケットエラーの特性を解析した[1]等を参考に,再送パケットを推測するモデルを提案し,その基本特性を掴むために,提案したモデルを従来のALOHA型のGF-NOMAに組み込み,システムスループットや再送トラヒックの削減効果等を解析した.今年度は,電力衝突の推定の制御モデルを複数種類提案し,解析を通して,比較・検討することで,適した制御を抽出した.また,提案した制御モデルによって,従来の通信制御と比べて,システムスループットを高めることに成功した.さらに,パケットエラーから衝突パターンを推定するために,その前提となる解析モデルを発展させた.加えて,無線アクセス制御モデルの設計に先駆けて,自己組織型の制御手法を提案し,その特性を評価した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,電力軸で衝突が発生しているパケットを推測するために,複数の参照信号を用いるモデルを提案し,そのモデルから衝突が推測されるパケットのみを再送することで,cross-slot SICを用いて,初送のパケットも受信する手法を提案した.特に,今年度は,参照信号を使う2つのモデルを考案して,再送の効果を確認した.具体的には,番号付けされた参照信号を再送時のリソース割り当てに再利用する手法と再送が予定されているパケットの数をリソース選択に利用する手法を提案した.また,再送用に利用されると予想されるリソース数に合わせて,初送ユーザがバックオフ制御をすることで,あらかじめ,衝突パケット数を減らすメカニズムも提案した. 評価の結果,参照信号を増やすとシステムスループットが向上することが分かり,また,参照信号を再送時のリソース割り当てに再利用する手法がより効果的であることが分かった.また,この提案手法と従来のGF-NOMAを比較すると,システムスループットを36%向上できることが分かった.この成果は,査読あり国際会議IEEE Globecom2023にて発表済みである. また,電力衝突を推測する方針について,衝突パターンからパケットエラーの特性をさらに細かく解析する必要があることが分かったため,様々なパケット到着が表現可能になるように,解析モデルを発展させた.この成果は,IEEE IoT Journalに採択された. 加えて,無線アクセス制御モデルに先駆けて,自己組織型の制御手法を提案した.本手法では,周囲のIoTデバイスが参照信号を傍聴し,空いているリソースを推測しつつ,消費電力を抑えるようなリソースを選択する.この成果は,査読あり国際会議IEEE ICCE 2024に発表済みである.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,推測手法として基本的な参照信号を用いた手法を検討したが,参照信号のコストを十分に評価できていなかった.そのため,今後は,コストを踏まえたスループットを評価する必要がある.すでに,コストを踏まえた評価を進めており,その基本的な結果を査読あり国際会議IEEE SmartGridComm 2024に投稿する準備を進めている.また,このコストを抑えるために,少ない参照信号で衝突パケットを推測する効率的な手法を検討する予定である.1つのアプローチとして,圧縮センシングのような統計的なアプローチを検討している. また,元々の計画の通り,無線アクセス制御モデルを設計する予定である.本研究項目では,各端末のリソース選択を基地局側が補助する手法と完全自律分散な手法の両方を考える.その一部は,すでに基礎検討を進めており,上記投稿予定の国際会議論文に投稿予定である.また,最終的なリソース選択は,自律分散であるため,端末同士の相互作用や確率的な振る舞いを考慮する必要がある.そこで,あるエージェントのローカルな振る舞いから全体の振る舞いが組み上がる自己組織化に着目している.上記で述べた通りIEEE ICCE 2024に発表済みの研究結果を基に,再送制御を踏まえて手法を発展させていく予定である.
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