研究課題/領域番号 |
23K16900
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分61010:知覚情報処理関連
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
伊東 隼人 福岡大学, 理学部, 助教 (60830502)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 高階テンソル分解 / 特徴表現 / 特徴選択 / 説明可能性 / 医用画像 / 3次元画像 / 医用画像解析 / テンソル分解 / 非負値テンソル分解 / タッカー分解 |
研究開始時の研究の概要 |
3次元物体の形状や内部テクスチャといった構造を考慮して離散画像を認識・理解するためには,観測者の知見を数理モデルとして導入し,対象となる問題ごとに3次元画像パターンのベクトル表現を設計する必要がある.本研究では対象依存型データ解析手法に従い,多次元構造を保持するテンソル表現と多重線形形式を利用して3次元画像を解析し,小規模な3次元画像データベースから病理類型間における画像パターンの差異をよく表す識別的なパターン表現を求め,臓器や細胞の幾何構造や階層構造の性質を考慮した3次元パターン認識手法の実現を狙う.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は対象依存型データ解析に基づく頑健な3次元画像パターン認識の実現である。対象を3次元医用画像とするとき、臓器形状や内部テクスチャの3次元構造を保持したパターン表現法、識別的な特徴量の抽出法、頑健なパターン認識手法の構築が必要である。旧来のベクトル表現に基づくパターン認識法では、サンプリングされた画像データを超高次元のベクトルもしくは何らかの知見に基づいて選択した特徴をベクトルとして表現していた。 本年度は対象依存型データ解析手法に従い、対象である3次元医用画像中の臓器を高階テンソルとして表し、テンソル分解により3次元パターンの線形和とする表現を試みた。位置合わせ済み3次元の臓器データの集合を4階テンソルとして表現し、CP分解(CANDECOMP/PARAFAC)または非負値テンソル因子分解(Nonnegative PARAFAC)を用いて分解することで、共通の3次元パターンの線形和として個々の臓器構造を近似表現することが可能となる。個々の臓器における線形和の重みをベクトルとして表現することで従来のパターン識別器を利用することも可能となるため、臓器の健常・異常に関する分類精度の定量評価を行った。いずれのテンソル分解においても少数の識別的な3次元パターンを選択することによって分類精度70%程度の自動分類を達成した。また、選択した特徴である3次元パターンの再構成・可視化を行い、医学的な見地と照らし合わせることでその妥当性を検討した。これらの成果報告を日本医用画像工学会大会・国際会議CARS2023へ投稿し、採択されたために発表を行った。また、3次元医用画像を入力とする機械学習モデル内に4階テンソルとして表された特徴量を解析し、解析結果を利用した追加学習不要のモデル改善手法を提案した。本成果については日本医用画像工学会若手シンポジウムにて発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、(1)臓器形状や内部テクスチャの3次元構造を保持したパターン表現法、(2)識別的な特徴量の抽出法、(3)頑健なパターン認識手法の構築が必要である。上記3項目に対し本年度は、(a) テンソル表現ならびに高階テンソル分解を利用した3次元パターン表現法に関する検討、 (b) 3次元パターン分解における重みの解析に基づいた識別的特徴の選択、についての検討を進めた。上記2項目の検討により、少数の限られた医用画像に対する高階テンソル分解結果からであっても未知データにおける健常・異常の分類に寄与する3次元パターンが得られることが判明した。 CP分解・非負テンソル因子分解時、近似表現に必要な3次元パターンの数、すなわち線形近似におけるrank-1テンソルの数を徐々に増やしていくにつれて元データに対する再構成誤差は小さくなっていく。しかしながら、分解結果を利用した自動分類では、rank-1テンソルの数を増やししていくにつれ、未知データに対する自動分類の精度が低下する傾向を観測した。これらの結果は、複数の臓器間で共通、かつ臓器間の差を示す3次元パターンをごく少数のrank-1テンソルが表現していることを示唆している。
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今後の研究の推進方策 |
CP分解よりも非負値テンソル因子分解の方が特徴選択後の説明性・解釈性が高い傾向、そして非負値テンソル因子分解のアルゴリズムの改善によって説明性・解釈性が向上する傾向に基づき、パターン表現法についての検討を引き続き進め、改善を狙う。既存の特徴選択は既知データに対する何らかの基準を設けた最適化によって達成されることがほとんどであるが、少数の既知データに最適化した特徴選択においては、未知データに対して重要な特徴を選択できない可能性が十分ある。そこで、特徴選択と分類を同時に行うパターン認識手法の検討を進める。
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