研究課題/領域番号 |
23K16964
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分61040:ソフトコンピューティング関連
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研究機関 | 富山高等専門学校 |
研究代表者 |
吉田 晃基 富山高等専門学校, その他部局等, 助教 (30910442)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 直流給電 / ネットワーク / 遅延フィードバック / 定電力負荷 / 適応制御 / 非線形 |
研究開始時の研究の概要 |
複数の発電設備から高い効率で直流電力を負荷に供給する「直流給電システム」は,「電源と負荷が独立して設計でき,それらを簡単に組み合わせられる」という利点から注目されている.一方,負荷の多くは「供給電圧を不安定化(振動)させる」という重大な欠点を持つ.また,上記の利点によって,給電システムの構造やパラメータが頻繁に変化することを許容することになる.この変化の情報を正確に取得するには,多数のセンサーが必要となり,初期設備費や維持費も高くなる.本研究は,カオス制御の分野で考案された制御則を活用することで多数のセンサーを必要としない制御法を提案し,低コストで直流給電システムの安定化を目指す.
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研究実績の概要 |
複数の発電設備から高い効率で直流電力を負荷に供給する「直流給電システム」が次世代の給電方式として注目されている.しかし,直流給電システムでは電圧レベルの変換に「DC/DCコンバータ」が採用されており,複数のコンバータが相互作用することで,動作点電圧の不安定化・振動問題が生じることが知られている.この問題を解決する方法の1つとして,カオス制御の分野で考案された「遅延フィードバック制御法」を用いて,動作点電圧を安定化する試みがされている.しかし,従来の制御法は電源や負荷の追加・削除に伴うシステムパラメータの大きな変化を想定しておらず,このままでは今後の社会における給電網の大規模化には対応できないという問題があった. そこで,まずはじめに,電源や負荷の追加・削除が給電システムの電圧の振動周波数を変化させることを明らかにした.従来の遅延フィードバック制御法による安定化の成否は,その制御パラメータである「遅延時間」と電圧の振動周波数の関係に大きく左右される.従って,電源や負荷の追加・削除に伴って振動周波数が変化することで,制御に失敗し,給電システムの不安定化を招く可能性があることを明らかにした. つぎに,この問題を解決するためには,振動周波数の変化に適応して遅延時間を調整し,「定常状態」(直流給電システムの動作点の電圧)を安定化する必要がある.しかし,そのような調整則はこれまでに提案されていなかった.そこで新たに,定常状態の安定化を可能にする遅延時間の適応的な調整則を考案した(結果は国際ジャーナルへ投稿中).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遅延フィードバック制御法における遅延時間の適応的な調整則が先行研究でいくつか提案されている.そこで,当初はそれらの適応的な調整則を直流給電システムの安定化に応用する予定であった. しかし,それらの先行研究の調整則は「周期解」と呼ばれる挙動が安定化の対象であった.一方で,直流給電システムにおいては,「定常状態」と呼ばれる挙動を安定化する必要がある.遅延フィードバック制御法による周期解と定常状態の安定化の間には異なる性質が存在し,先行研究の調整則を直接適用することはできなかった.そこで,先行研究の手法を参考に,新たに定常状態を安定化するための遅延時間の調整則を考案した.この調整則がうまく機能することは現在,数値シミュレーションで確認できている.
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今後の研究の推進方策 |
考案した遅延時間の調整則を電気回路で実装し,回路実験を行うことで,実際のシステムの安定化に有効であることを検証する. また,この調整則によって定常状態が安定化できる条件を,分岐解析等に基づいて明らかにする.
直流給電システムの望ましい定常状態と望ましくない定常状態の両方を考慮して,望ましい定常状態のみを安定化する方法を提案する.
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