研究課題/領域番号 |
23K16994
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分62010:生命、健康および医療情報学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
矢田 祐一郎 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 特任助教 (80805797)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 神経変性疾患 / 連続時間隠れマルコフモデル / 筋萎縮性側索硬化症 / iPS細胞 / 疾患患者層別化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、ALS患者では運動スコアの低下として観測される疾患状態進行を、患者毎に状態遷移速度パラメータが異なる連続時間隠れマルコフモデルで表現する。この状態遷移速度パラメータが患者のiPS 細胞由来運動ニューロンの表現型で表されると仮定し、ALS患者コホートから運動スコア等を経時的に観察した臨床経時データ、およびコホート参加患者から作製したiPS細胞由来運動ニューロンの表現型データからモデルパラメータを推定する。未知の患者でiPS細胞由来運動ニューロンの表現型から状態遷移速度パラメータを予測できるか検証する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、病態進行の速さに個人差が大きい疾患である筋萎縮性側索硬化症 (ALS) を対象として、遺伝的な理由等により患者毎に異なると考えられる病態進行速度を縦断的臨床データから予測する数理モデルを開発し、ALS患者由来のiPS細胞から分化させた運動ニューロンの表現型からの進行速度の予測可能性を検証することである。本年度は、患者ごとの病態進行速度の個人差を仮定した病態進行数理モデルである個別速度連続時間隠れマルコフモデルを構築し、縦断的臨床データから提案モデルにおける個人毎の進行速度を含んだパラメータを推定するための学習アルゴリズムを開発した。アルコリズムはEMアルゴリズムに基づいており、各状態での滞在時間の期待値、また各状態間の遷移回数の期待値を先行研究で報告されている方法で算出し、その値に基づいて進行速度を含むモデルパラメータを順次更新する形とした。開発したモデル・アルゴリズムを公開されているALSコホートの運動スコアデータに適用して、患者ごとの病態進行速度の推定及び進行パターンによる患者の層別化を行なった。層別化は学習したモデルを用いて患者毎に疾患状態の推移系列を推定し、推定された系列をクラスタリングすることで実施した。また、公開データに含まれるALS関連遺伝子変異及び患者iPS細胞由来の運動ニューロンから取得されたトランスクリプトームデータを用いて、推定された速度に関連する遺伝要因の同定を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究計画は、既存の連続時間隠れマルコフモデルに対する学習アルゴリズムを元にして、状態遷移の速さに個人差のある連続時間隠れマルコフモデルでの学習アルゴリズムを開発し、実データへの応用を試みることであった。本年度は計画の通り実際に個別速度連続時間隠れマルコフモデルの学習アルゴリズム開発を完了し、それを公開されているALSコホートデータに適用して進行速度の推定を行なった。さらに、ALSの進行を捉えるためには障害がおきる筋機能の順番のパターンによる違いも解析する必要があると考え、当初の想定に加えて患者の進行パターンを層別化できるようにモデルの形を修正し、進行パターンの層別化アルゴリズム開発にも取り組み、層別化された患者のグループとそれぞれの患者の進行速度を推定することができた。また、推定された速度に関連する遺伝要因の同定にも着手した。研究計画で予定されていた内容に加えて層別化への対応ができたため、当初の計画以上に進展したと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
現在進めている開発モデルから推定された病態速度に関連する遺伝要因の同定を引き続き進める。また、他の筋萎縮性側索硬化症患者のコホートでも進行速度の推定と層別化を実施し、現在利用しているコホートとの結果を比較する。さらに、パーキンソン病などの他の神経変性疾患への開発モデル・アルゴリズムの適用を検討する。
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