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鉄不足の南極海で植物プランクトンが増殖する仕組み-海氷からの鉄供給は重要か?-

研究課題

研究課題/領域番号 23K17028
研究種目

若手研究

配分区分基金
審査区分 小区分63010:環境動態解析関連
研究機関東京大学

研究代表者

漢那 直也  東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (90849720)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
キーワード鉄 / 南極海 / 植物プランクトン / 海氷
研究開始時の研究の概要

生物に必須の栄養素「鉄」が不足した南極海がなぜ、海洋生物が多様で豊かな海となるのか長年の謎であった。海氷は、南極海で不足しがちな鉄を10~100倍に濃縮することができ、融解期に鉄を放出することで植物プランクトンの大増殖を促すと考えられてきた。しかしこれまでの研究では、海氷に含まれる鉄の総量はわかっていたものの、植物プランクトンが実際に利用できる鉄の量は全くわかっていなかった。本研究では、植物プランクトンに利用されやすい鉄の化学種を南極海氷域で定量化し、南極海で植物プランクトンが繁栄する仕組みを解明する。そして、温暖化の影響が現れ始めた南極海の二酸化炭素(CO2)吸収量の変動予測に貢献する。

研究実績の概要

本研究では,南極海氷域において,植物プランクトンに利用されやすい鉄の還元種(Fe2+)を定量化し,南極海で植物プランクトンが繁栄する仕組みを解明することが目的である.2023年度は,南極砕氷艦「しらせ」でのFeの観測実現に向けた準備・検討を進めた.また河川流域や海氷域,アイスフィヨルドにおいてFe2+の現場分析やFe分析用試料の採取を行った.
しらせでの準備・検討:海水中の鉄は採水時に極めて汚染しやすく,観測にはクリーン技術を用いた特殊な採水手法が用いられる.2023年9月に日本近海でCTD 多連採水システムを用いたクリーン採水を実施し,Fe測定用試料を採取した.汚染のないサンプリングを実現するために,しらせに新たに設置したクリーンコンテナラボの利用法や非金属製ロープを用いた採水法などの検討を行い,汚染のない海水試料を得ることに成功した.
現場観測:大槌湾の流入河川において,河川水中のFe2+を定量的に評価した.また妨害物質であるバナジウムがFe2+測定に与える影響を調べ,その補正法を検討した.確立した補正法を用いて,北海道サロマ湖の海氷上でFe2+の現場分析を行い,海氷直下の海水中のFe2+濃度分布を明らかにした.また南極海と比較的類似した環境であるパタゴニアのアイスフィヨルドにおいてクリーン採水を行い,Fe測定用試料を採取することに成功した.
論文発表:南極海で報告されている微量元素の最新の知見をまとめたレビュー論文を出版した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

しらせ試験航海で鉄の観測を行い,採水時に汚染のないサンプルを採取することに成功した.しらせで鉄観測を実施できる道筋が見えてきたことで,2024年度に計画されている南極海本航海において本研究課題を遂行する見通しが立った.Fe2+を測定する上で,バナジウムの存在が分析上問題になるが,本研究で確立した補正法を用いることで,淡水や海水中のFe2+濃度を正確に評価することが可能となった.また乱氷帯のアイスフィヨルドにおいて,氷のサンプリングやクリーン採水を実施することができた.氷や海水試料中のFeの分析を現在進めており,南極海との比較研究が期待できる.以上を考慮し,現在までの進捗状況はおおむね順調であると総合的に判断した.

今後の研究の推進方策

2024年度は,しらせを用いて東南極のトッテン氷河沖で海洋観測を実施する.トッテン氷河では,暖水流入が原因で起こる氷の底面融解が生じることがわかっており,この底面融解水が氷河前で湧昇し,氷や陸棚堆積物に含まれるFeが沖側へ輸送されている可能性がある.またトッテン氷河沖は常に厚い海氷で覆われており,海氷から海洋表層へFeが供給されている可能性がある.これらのFe供給プロセスおよびFe2+の海水中での挙動を現場観測から明らかにし,トッテン氷河沖の生物生産過程を定量的に評価する.また現場観測で得られた成果について国内外の学会で発表し,論文出版を目指す.

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (6件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)

  • [国際共同研究] Austral University/Universidad de Magallanes(チリ)

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 海氷に含まれる鉄の生物利用能に関する研究2024

    • 著者名/発表者名
      漢那 直也,西岡純
    • 雑誌名

      低温科学

      巻: 82 ページ: 93-101

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] Dissolved Fe(II) and its oxidation rates in the Kuroshio area, subarctic Pacific, and Bering Sea2024

    • 著者名/発表者名
      Obata Hajime、Mase Akira、Kanna Naoya、Takeda Shigenobu、Nishioka Jun、Kuma Kenshi
    • 雑誌名

      GEOCHEMICAL JOURNAL

      巻: 58 号: 2 ページ: 71-79

    • DOI

      10.2343/geochemj.GJ24006

    • ISSN
      0016-7002, 1880-5973
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] 南極の氷床氷河・海氷域における微量金属の動態2023

    • 著者名/発表者名
      漢那 直也
    • 雑誌名

      地球化学

      巻: 57 号: 2 ページ: 127-141

    • DOI

      10.14934/chikyukagaku.57.127

    • ISSN
      0386-4073, 2188-5923
    • 年月日
      2023-06-25
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] 二枚貝殻を用いた環境モニタリングと個体成長への環境影響評価:英虞湾での垂下実験を例に2023

    • 著者名/発表者名
      西田 梢、田中健太郎、佐藤 圭、樋口恵太、漢那直也、杉原奈央子、白井厚太朗、石村豊穂、岩橋徳典、永井清仁、弓場茉裕、石川彰人
    • 学会等名
      日本地球化学会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [図書] 北極域の研究 その現状と将来構想2024

    • 著者名/発表者名
      北極環境研究コンソーシアム長期構想編集委員会編
    • 総ページ数
      480
    • 出版者
      海文堂
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

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公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

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