研究課題/領域番号 |
23K17034
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分63010:環境動態解析関連
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
山口 瑛子 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 研究職 (80850990)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 風化黒雲母 / XANES / HERFD-XANES / 第一原理計算 / 粘土鉱物 / 雲母鉱物 / シミュレーション |
研究開始時の研究の概要 |
地球表層に多く存在する雲母鉱物は、風化によって吸着容量の大きな粘土鉱物となり、様々な陽イオンを吸着・放出して元素の環境挙動を支配することが知られている。吸着容量の大小は粘土鉱物の原子スケールの構造に応じて変化するが、その原子スケール構造が風化によってどう変化するかはわかっていない。本研究では、X線吸収端近傍構造(XANES)と分子シミュレーションを用いて、風化黒雲母の原子スケール構造の解明を目指す。また、得られた構造変化が、風化雲母・粘土鉱物の陽イオン交換容量(CEC)や吸着分配係数(Kd)に与える影響を考察し、陽イオンの環境動態への風化による影響を原子スケールから明らかにする。
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研究実績の概要 |
地球表層に普遍的に存在する雲母鉱物は、風化によって吸着容量の大きな粘土鉱物となり、様々なイオンを吸着・放出して元素の環境挙動を支配している。吸着容量の大小は粘土鉱物の原子スケールの構造に応じて変化するが、その原子スケール構造が風化によってどう変化するかはわかっていない。そこで本研究では、X線吸収端近傍構造(XANES)測定と第一原理計算を用いて、風化黒雲母の原子スケール構造の解明を目指す。 XANES法は、対象元素の価数やわずかな構造変化による電子状態の違いを捉えることができる強力な手法であるが、理論式が存在しないため得られる情報が限定的である。本研究では、第一原理計算を併用することで、XANESの測定結果から原子スケール構造を推定することを目指す。その際、従来のXANESよりも高いエネルギー分解能を持つ高エネルギー分解能蛍光検出XANES(HERFD-XANES)も利用する。 本研究ではまず、黒雲母試料に化学処理を行い人工的な風化を行った。風化の程度は層間のカリウムイオンの溶出量で評価し、5段階の風化程度を持つ試料を用意した。各試料についてX線回折(XRD)測定を行ったところ、層間距離が系統的に変化していることがわかった。さらにXANESおよびHERFD-XANES測定を行ったところ、スペクトルが系統的に変化し、風化の程度が大きくなるにつれて鉄イオンの酸化が進むことがわかった。一方、第一原理計算では、八面体層中の鉄が全て2価のモデルと3価のモデルを作成し、構造最適化を行った後にXANESのスペクトル計算を行った。その結果、鉄が酸化されるとスペクトルが高エネルギー側にシフトすることがわかり、実験結果と整合した。また、同じ価数であっても、配位した原子の配置がわずかに変化するとXANESスペクトルもわずかに変化する様子が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当初計画どおりに、風化黒雲母試料の作製を完了し、これらの試料にXRD、XANES、HERFD-XANES測定を適用したところ、風化の程度に応じて原子スケール構造が系統的に変化していることがわかった。一方、第一原理計算では、複数のモデルについて、WIEN2kによるXANESスペクトル計算に成功した。これらのことから現在までの進捗状況は、おおむね順調に進展している。と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
XANESやHERFD-XANESに現れたスペクトル変化が、原子スケール構造のどういった変化によって引き起こされているのかを特定していく予定である。そのために、EXAFS実験の実施や、鉄の局所構造が異なる様々な風化黒雲母モデルを作製し、系統的に第一原理計算を実施していくことを計画している。
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