研究課題/領域番号 |
23K17036
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分63010:環境動態解析関連
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
大沼 友貴彦 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 第一宇宙技術部門, 宇宙航空プロジェクト研究員 (30800833)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 雪氷学 / 雪氷微生物 / 数値モデリング / 衛星観測 / 気候モデル / 氷河 |
研究開始時の研究の概要 |
雪氷圏では消雪の早期化や氷河氷床の融解加速が近年進んでおり,地球環境への影響が懸念されている.さらに雪氷圏独自の現象として,雪氷上の微生物活動が雪氷面を暗色化させており,雪氷微生物によるアルベド低下効果(バイオアルベド効果)が雪氷融解を加速させている.しかしながら、衛星観測や数値モデル計算によるバイオアルベド効果の定量評価はまだ時空間的に限られている.そこで本研究では,衛星観測と数理モデル技術を利用して申請者が開発した全球積雪藻類モデルを雪面と氷河表面のバイオアルベド効果が計算可能なモデルへと発展させ,氷河から全球スケールで過去から将来にかけての雪氷微生物活動による地球環境への影響評価を行う.
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研究実績の概要 |
2023年度は、開発中であったクリオコナイトホール(氷河上で形成されるメルトポンド)の深さ変化を再現する数値モデル(cryoconite hole model)の研究を進めた。また、Landsat-8やSentinel-2などの複数の衛星を組み合わせて氷河アルベドの全球長期データセットをデンマークの氷河研究グループとの共同研究により構築した。これらの成果はまとめられ、それぞれ国際誌に論文として出版した。加えて、全球気候モデルMIROC6の積雪水量を再解析データから得られた積雪水量で拘束した気候シミュレーションを実施し、融雪期の地表面アルベドの低下が20世紀の気温トレンド上昇を支配する要因の一つであることが示唆された。この成果は国際誌に投稿し、査読中である。これまでの研究成果を発表するため、5月に国際学会EGUで現地発表を実施し、海外研究者との交流を深めた。また、イタリアの海外若手研究者がJAXAに滞在し、研究実施者のモデルとの将来の相互比較を見据えて、衛星観測から氷河上のバイオマスを定量化する手法(Glacier algal index)を開発した。これらの開発したモデルや衛星観測手法を検証するためにアラスカのグルカナ氷河で2週間の観測を実施した。研究成果の社会実装に向けて、JAXAの水循環モニタリングシステムおよびMIROC7に実装予定の次世代陸域モデルILS(Integrated Land Simulator)への研究実施者の雪氷生物モデル導入を進めている。研究費は、主にこれらの論文出版費用、英文校正費用、国外旅費に使用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では交付申請時に以下を目的として掲げている。 1. 衛星観測による雪氷微生物活動の時空間的な定量評価とモデル開発 2. 気候モデルを用いたバイオアルベド効果の影響評価と社会実装 1については、雪氷微生物活動を時空間的に評価する衛星観測手法(Glacier algal index)および数値モデル(cryoconite hole model)を開発した。また、全球の氷河アルベドの衛星観測データセットを構築した。 2については、気候モデルが計算した陸域アルベド変化による影響評価研究を論文として投稿した。また、研究成果の社会実装に向けて、雪氷生物モデルの次世代陸域モデルILSへの導入を進めている。 以上より、研究は概ね順調に進んでいると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き雪氷生物に関連する数値モデルおよび衛星観測手法の開発を進めていく。加えて、新しい積雪密度および積雪アルベドの計算スキームの陸域モデルへの導入を進め、積雪物理過程に基づいてバイオアルベド効果を計算する陸域モデルへ発展させる。また、氷河スケールでの衛星観測とモデルの相互比較を実施するために、雪氷生物モデルを導入した陸域モデルの計算空間解像度を数十mスケールに高解像度化する手法を検討する。これによって、衛星観測とモデル計算から得られたバイオアルベド効果の時空間変化を氷河域で詳細に検証できるようになると考えられる。このような詳細な検証が実施できれば、開発したモデルの全球展開も妥当性を持って進めることができると期待される。
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