研究課題/領域番号 |
23K17038
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分63020:放射線影響関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
中山 貴文 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (80829440)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 老化 / 放射線 / 発がん / 放射線被ばく / 細胞老化 |
研究開始時の研究の概要 |
放射線被ばくはDNAに損傷を引き起こし、細胞老化を誘導することが知られている。また、老化細胞から分泌される様々なタンパク質は、慢性的な炎症を引き起こし発がんに寄与すると考えられている。老化細胞を除去する薬剤であるSenolytic drugは、放射線発がんにおいても発がんリスクを低減する可能性がある。 本研究は、放射線被ばく後の組織における老化細胞の蓄積を解析し、作用機序が異なる複数のSenolytic drugによる放射線被ばく後の老化細胞の動態とがんの発生率の比較を行うことで、Senolytic drugの放射線発がん抑制効果とその抑制メカニズムを明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究課題は放射線被ばくがDNAに損傷を引き起こすことで細胞老化を誘導し、老化細胞から分泌されるSASP(senescence-associated secretory phenotype)因子が周辺の細胞に慢性的な炎症を引き起こすことで、がんを含めた加齢性疾患の発症や悪化に寄与するという考えをもとに、放射線に被ばくしたマウスに老化細胞を除去する薬剤であるSenolytic drugの投与することで放射線誘発がんの抑制が可能かを明らかにすることを目的としている。 Senolytic drugは体内に存在している老化細胞の排除を目的としているため、老化細胞が蓄積していない時期に投与をしても十分な効果を発揮できない可能性がある。しかしながら、放射線被ばく後の組織内における老化細胞の蓄積とSASP因子の継時的な変化はほとんど明らかになっていない。そのため、7週齢のB6C3F1マウスを4 Gyのγ線を1回照射する照射群と非照射群の2群にわけ、照射直後から継時的に複数の時点(7、8、10、14、28、42、57週齢)に解剖を行い、解析に必要な組織(胸腺、脾臓、肺、肝臓)を採取する。本年度は、42週齢までのマウスにおいて組織の採取を行い、57週齢時に解剖予定のマウスについては現在飼育中である。採取した組織は、凍結切片作成および分子解析用に凍結標本の作成、保存を行った。また、組織の一部をホルマリン固定後パラフィン包埋し、組織標本の作成を行った。老化細胞の蓄積とSASP因子の解析については、主に肝臓を中心に解析を行い、凍結切片を用いて老化マーカーであるSA-β gal染色、パラフィン切片を用いて老化マーカーであるLaminB1の蛍光免疫染色、凍結標本から抽出したタンパク質を用いてSASP因子であるIL-1βのウエスタンブロットを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の進捗については、実験に使用するマウスの納入が遅れたものの、実験期間中のマウスの予想外の死亡などは確認されず、概ね順調にマウスからの組織の採取を行えている。採取した組織からの凍結切片、パラフィン切片の作成は滞りなく進行している。 蛍光免疫染色、ウエスタンブロットによる老化マーカー、SASP因子の解析は主に肝臓で行なっており、複数の抗体を検討しているが、肝臓では検出できない抗体なども見られるため、肺や脾臓といった採取済みの他の組織での検討も始めている。肝臓以外の組織における解析については、本年度の計画にはなかったものの、次年度以降の計画を前倒しする形で進め始めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針については、まずは57週齢のマウスの組織の採取を行う。並行して肝臓、肺、脾臓での老化マーカーの解析を行い、放射線被ばく後の老化細胞の蓄積動態を明らかにする。 老化細胞の蓄積動態の結果を確認するとともに、新たにB6C3F1マウスに同条件で放射線照射を行い、著しく老化細胞が増加した時点において4種類の作用機序が異なるSenolytic drug(ダサチニブ+ケルセチン、17-DMAG、ARV825、Digoxin)を投与し、その後継時的に老化マーカーおよびSASP因子の解析を行う。また、一部のマウスについては、Senolytic drug投与後に終生飼育を行い、定期的な飼育観察によって著しい体調の悪化が認められたマウスについては解剖を行い、腫瘍の有無を確認する。老化細胞蓄積の解析のためのスケジュール解剖および終生飼育時の解剖の際に得られた腫瘍は、組織切片の作成の後、病理学的に解析しSenolytic drugの有無および各Senolytic drug間でのがんの発生率と潜伏期間を比較する。
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