研究課題/領域番号 |
23K17056
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分64010:環境負荷およびリスク評価管理関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
田井 梨絵 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 産総研特別研究員 (80931849)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 環境リスク評価 / 日焼け止め / サンゴ / 生態毒性試験 |
研究開始時の研究の概要 |
一部の紫外線防止剤を含むパーソナルケア製品は、サンゴへの影響が懸念され、近年いくつかの観光地で使用および販売が禁止されている。紫外線防止剤の環境動態や様々な生物種に対する生態毒性試験の知見は多数存在するが、地域性を考慮した現実的な生態リスクの管理に資する生態毒性試験とリスク評価を実施した例は限られている。 本研究では、複数の紫外線防止剤を対象として、日本に生息するサンゴに対する生態影響試験を実施するとともに、環境暴露モデルに基づいて海域の環境中濃度を予測し、紫外線防止剤の比較評価に基づいた生態リスク評価を実施する。
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研究実績の概要 |
2023年度は、日本在来のサンゴの一種であるコユビミドリイシ(Acropora digitifera)のプラヌラ幼生を対象として、以下の2つの研究を実施した。 1)実験室内での人工海水を用いた飼育方法を確立した。PE製200mL容タッパー、PP製500mL容タッパー、およびPE製3L水槽を用いて、小型インキュベーター内での飼育が可能になった。 2)塩化亜鉛および硫酸亜鉛七水和物を被験物質として、幼生を用いた生態毒性試験を実施した。設定濃度は、ECOTOXで収集した既往文献の報告値をもとに、まずは、10、100および1000 μg/Lに設定してRange-finding試験を行った。PE製6穴ウェルプレートに、各濃度に設定した試験溶液(25℃、28ppt程度)を15mLずつ添加し、5個体/ウェル×4繰り返しとして、1濃度あたり20個体を暴露した。48時間後、遊泳、形態異常(変態を含む)、細胞の崩壊および死亡個体を計数した。次に、Range-finding試験で得られた結果をもとに、急性毒性試験を実施した。亜鉛濃度を100、200、400、600、800および1000μ/Lとして、上記と同様の手法を用いて48時間暴露した。その結果、塩化亜鉛では半数影響濃度(EC50)は580 μg/L、硫酸亜鉛七水和物のEC50は690 μg/Lと算出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年の研究により、実験室内でのA.digitiferaプラヌラ幼生の飼育方法、および生態毒性試験の手技を確立した。亜鉛の予備的な試験を実施することができたため、2024年以降は、確立した手法を用いて、複数の日焼け止め有効成分の生態毒性試験を実施する。
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今後の研究の推進方策 |
2024年は、計画していた予定通り、複数の日焼け止め有効成分の生態毒性試験を実施する。2023年度は、幼生の取り扱いに慣れることを目的として、簡易的に予備試験を実施するためウェルプレートを用いたが、多くの日焼け止め有効成分はPE製のウェルプレートでは壁面吸着が懸念される。そのため、2024年度は新たに購入した小型のガラスシャーレを用いて試験を実施する予定である。また、一般的な試験生物であるミジンコを用いて急性毒性試験を実施し、A.digitiferaプラヌラ幼生との感受性の比較を実施する。ミジンコの急性毒性試験は公定法(OECDテストガイドラインNo.202)に準拠する。本研究の成果は、環境毒性学会、日本水環境学会などで随時発表する。 モデルを用いた環境中濃度予測にも着手する。使用するモデルは、Deltares社が公開している二次元環境モデルであるMAMPECとして、仮想湾内での被験物質の濃度分布を予測する。必要な環境パラメータは気象庁のデータや既往文献から収集したデータを用いる。
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