研究課題/領域番号 |
23K17071
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分64040:自然共生システム関連
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
東川 航 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究員 (70896521)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2027年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2026年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 捕食者 / 移動分散 / 景観 / トンボ / 流域 / 集団構造 |
研究開始時の研究の概要 |
本課題はトンボ類による物質輸送機能という生態系サービスの解明を目的として、4つの項目から構成される。項目1はゲノムワイドなDNA情報を用いたトンボ類の集団構造の把握、項目2は安定同位体を用いたトンボ類の採餌ネットワークの解明、項目3ではそれらの情報と景観情報を合わせた解析により、トンボ類の物質輸送機能を決定づける景観条件を解明する。最後に、物質輸送機能と景観条件の関係をモデル化し、過去の土地利用や将来の土地利用シナリオと照らし合わせることで、トンボ類による物質輸送の時空間的変化を推定する。
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研究実績の概要 |
対象昆虫である赤トンボ数種の食性および移動性を明らかにするため、季節別に個体を採集し、DNAおよび安定同位体の分析に向けた標本処理を行った。また、季節ごとの赤トンボ成虫の個体数と周囲の景観との関係を解析した結果、夏季と秋季では個体数と森林面積の関係が異なることが分かった。これらはトンボ類による物質輸送機能の評価に貢献する。 研究初年度である令和5年度は、6月、8月、10月に対象流域で赤トンボ数種の幼虫、成虫を広く定量的に採集し、分析のためのサンプル処理を行った。多くの個体数が得られたアキアカネ、ナツアカネ、ノシメトンボ成虫の時期別の合計個体数について、採集地点の景観との関係を解析したところ、8月では周囲5km以内の森林面積が大きい地点ほど合計個体数が多かった。これまでの知見から、これら3種の成虫は夏の間は森林環境に依存して生活する可能性が示唆されており、晩夏に山地をくだりふもとへ降りてくることが知られている。本結果はこうした知見と合致しており、夏期における各種成虫が森林環境で生活している可能性が示唆された。今後、各種が実際に夏は森林内に分布することを確かめる必要がある。一方、10月では3種の合計個体数と周囲5km以内の森林面積は一山型の関係を示した。10月は赤トンボの産卵時期であるが、産卵以外の時間は木立や林縁で休息することが知られている。本結果はこのことと辻褄の合うものであり、赤トンボにとっては秋期にも「ねぐら」としての森林が近くに一定量存在することが重要と考えられた。 また、対象昆虫の1種ミヤマアカネに関しては、遺伝解析により移動分散スケールを解明し、生息地ネットワークの形成に必要な地理的条件について論文にまとめ、国際専門誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
令和5年度に計画していた対象昆虫個体の季節別の広域収集および化学分析に向けた組織サンプルの調整を完了した。また、計画していた作業に加えて、季節別の個体数と周囲の景観条件との関係について地理解析を実施し、対象昆虫による森林利用の季節的な違いを示唆する結果を得た。これは、対象昆虫が異なる景観の間を行き来することで担う流域内での物質輸送機能について理解を深めるにあたって重要な知見である。さらに、対象昆虫のうち1種の移動分散スケールおよび生息地ネットワークを遺伝的に推定し、国際専門誌に論文として発表した。これらのことから、本研究は当初の計画以上に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、前年度に準備した対象昆虫の組織サンプルについて、DNA解析を実施して集団構造を遺伝的に評価することに加え、食性解析に向けた安定同位体比の分析に着手する。 令和7年度は、安定同位体比分析を概ね完了し、DNA解析の結果を論文にまとめる。 令和8年度は、安定同位体比分析の結果を論文にまとめるとともに、対象昆虫の物質輸送機能の総合的な評価に向けて、DNA解析と安定同位体分析の結果を合わせた景観解析に着手する。 令和9年度は、前年度の景観解析を進め、結果を論文にまとめる。 以上により、概ね計画通りの研究推進を見据えている。
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