研究課題/領域番号 |
23K17090
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分64060:環境政策および環境配慮型社会関連
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
御田 成顕 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員等 (70800655)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 森林犯罪 / 森林窃盗 / 無断伐採 / 森林法 / 森林窃盗罪 / 不法行為 / 違法伐採 / 私有林経営 |
研究開始時の研究の概要 |
盗伐は森林資源および森林所有者に深刻な損害を与える犯罪である。近年,日本国内における木材需要の増加に伴い盗伐が増加傾向にある。盗伐は加害者の故意・過失の認定の難しさから,森林窃盗罪もしくは不法行為の成立と法的対応を困難にさせ,森林所有者の法益が保護されにくい状況にある。本研究は不法行為法における「予見可能性論」にもとづいた盗伐の認定基準を示すことで,森林所有者の法益保護と持続可能な森林経営に資する法理論を構築することを目的とする。そのため,森林・林業を巡る社会経済的状況の実態把握,伐採に対する公的制御機能の検討,森林訴訟における争点の分析を行う。
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研究実績の概要 |
森林窃盗の認定を困難なものとする要因となっている、故意の認定がどのようになされるべきかを明らかにするため、森林窃盗罪素材生産事業体による盗伐が、森林窃盗罪が成立した公判の判決文を入手し、分析した。 宮崎地方検察庁に対し、素材生産事業体に森林窃盗罪の有罪判決が下された判決文の情報公開を申請し、判決文を入手した。そして、裁判所が森林窃盗罪の構成要件である故意を認定した要素を抽出するため、この判決文から裁判所による事実認定、および被告人の主張に対する裁判所の判断を検討した。 その結果、森林窃盗罪の構成要件である故意を認めた要因として、(1)山林売買の仲介人から誤信する内容の説明を受けた事実がなかったこと、(2)伐採対象地の地図を確認しなかったこと、(3)境界の目印となる杭および自然物(池)に注意を払わなかったこと、および(4)売買契約書の有無に注意を払わなかったことが挙げられた。さらに、「森林所有者に相場の2倍の金額を弁償することにしているため、収益に見合わないことから自社が盗伐をするはずがない」という被告の主張に対し、盗伐が発覚した場合にのみ生じる負担であり、仮にそうであったとしても事業全体で収益が得られる可能性は大きいため、その主張を採用しなかった点が、故意を認定する要素となっていた。 これらの結果から、地図や売買契約書の確認、境界の現地確認の有無、および動機としての経済的利益の獲得が見込まれたことが故意の認定に重要であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度から2年目にかけて、盗伐被害者への聞き取り調査、森林所有者・林業事業体へのアンケート調査、関連法規の収集と行政への聞き取り調査、および裁判記録の収集を計画している。 盗伐被害者への聞き取り調査は進んでいるものの、裁判記録の収集と行政への聞き取り調査が遅れている。森林所有者・林業事業体へのアンケート調査は2年目の早い時期に開始を予定しており、計画通り進捗する見通しである。 これらのことから、進捗状況は「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
林業事業体へのアンケート調査を行い、林業事業体が果たすべき注意義務と回避義務を明らかにする。また、盗伐被害者の被害者団体を通じ、民事訴訟の裁判記録の収集を行う。 これらの調査活動と並行し、先行研究の分析を通じて日本国内の森林窃盗の歴史的展開を整理する。そして、盗伐に関する先行研究のレビューを行い、総説論文の公表を目指す。
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