研究課題/領域番号 |
23K17107
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
|
研究機関 | 公立小松大学 |
研究代表者 |
西島 薫 公立小松大学, 国際文化交流学部, 講師 (30838793)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2026年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
|
キーワード | コンヴィヴィアリティ / ダヤック / インフラストラクチャー / 儀礼 / 開発政策 / 新自由主義 / 後背地 |
研究開始時の研究の概要 |
インドネシア・西カリマンタン州の後背地では、油ヤシ企業の進出の加速とともに、道路網や通信網などのインフラが整備されてきた。また、近年では地方政府と企業による後背地のインフラ開発や村落開発が進められている。後背地のインフラ整備は後背地を市場経済に包摂する一方で、人々の移動とコミュニケーションを促進させてきた。後背地の奥地まで都市のNGOのネットワークが拡大し、後背地各地では集落を超えた地域共同体や民族組織が台頭している。本研究では、NGO、地域共同体そして民族組織のネットワークの重なり合いが、新自由主義経済に抵抗する自立共生的な(コンヴィヴィアルな)空間を形成していることを明らかにする。
|
研究実績の概要 |
2024年度は、おもに文献調査と、インドネシアでの短期フィールドワークを中心に研究を進めてきた。文献調査に関しては、新自由主義、油ヤシプランテーションと土地紛争、土地と慣習地に関連するインドネシア国内法、そして地方文化といったトピックに焦点を当て、広範に文献を渉猟した。他方、短期フィールドワークでは、国内で入手困難な資料の収集、都市部と後背地の農村での聞き取り調査を実施した。とくにフィールドワークでは、近年、カリマンタンの地方社会で台頭してきた3つの民族組織や民族集団に関する情報を収集した。サンガウ県の民族組織に関しては、組織が実施する儀礼にかかわっている民族系NGOのメンバーに聞き取りを実施することができた。また、クタパン県の民族組織に関しては、メンバーから活動内容や加入条件などに関して、聞き取り調査をするとともに、都市部の知識人たちにも聞き取り調査を実施し、知識人たちの言説に関するデータを得ることができた。これらの聞き取り調査で得られた、おもな知見としては、①民族組織が国家と社会の中間領域において台頭しているという点、②国家や集落が適切に機能していない領域を民族組織が担っているという点があげられる。今後、今年度の研究活動で得られた情報を、衛星写真等から得た情報や、翌年度以降に実施予定のフィールドワークと組み合わせることで、後背地におけるコンヴィヴィアルな空間の生成に関する研究成果を発表できると考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の第一段階として近年の研究動向を把握できたこと、そして現地調査においてコロナ禍でフィールドワークが出来なかった期間の情報を得ることが出来たことが、おおむね順調に進展していると判断した理由である。ただし、インフラ整備に関する具体的な調査、そして儀礼に関する聞き取り調査には課題が残っている。また、フィールド調査中で気付いた点として、近年はスマートフォンとSNSの利用が後背地にも急速に普及しており、インターネット上の情報も取り入れながら進めていくことも可能であると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画としては、衛星写真によるインフラ整備に関する調査と現地調査を進めていく予定である。とくに、後背地における道路網の整備状況について調査を進めるとともに、道路網の整備がどのように人々の移動と民族組織の台頭に結びついているのかに焦点を当てる。そのため、2024年度は①衛星写真を用いた交通網の発達、②民族組織が関わる大規模儀礼の調査に焦点を当てる予定である。比較的小規模な儀礼に関しては、2025年度に悉皆調査を実施する予定である。また、近年ではマレーシアからも国境を越えて西カリマンタン州の儀礼への参加者がいる。文献によれば、西カリマンタン州北部のダヤック人と、マレーシア・サラワク州のダヤック人たちの一部は、同じ起源を持つとされている。インフラ整備が進むにつれて、国境を超えた交流が生まれている状況に関して、どのようにアプローチするかが課題である。
|