研究課題/領域番号 |
23K17139
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分80030:ジェンダー関連
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研究機関 | 実践女子大学 |
研究代表者 |
阿部 貴美子 実践女子大学, 研究推進機構, 研究員 (00783862)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2026年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | ジェンダー / 交差性 / 女性移住労働者 / セクシャル・リプロダクティブ・ヘルス・ライツ / セクシュアリティ教育 / サービス・アクセス / 性的同意 / セクシャル・リプロダクティブ・ヘルス / カンボジア / 移住女性 |
研究開始時の研究の概要 |
女性が、家族計画などのセクシャル・リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康。SRH)分野のサービスを利用する場合に、ジェンダーと女性のその他の属性(人種や経済的階層)がネガティブに影響する。カンボジアでは、近年、地方の貧困な農村部から職を求め、親元から離れて首都プノンペンに来る若い女性の労働者が急増している。本研究の目的は、このような女性たちがSRHサービスを利用する場合に、地方の農村からの移動労働者であるという属性と、女性であるというジェンダーが、どのような課題をもたらしているかを当事者とサービス提供者に調査を行い明らかにする。
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研究実績の概要 |
2023年度は、予備調査として、計画どおり文献調査とプノンペンにおいて情報収集を行い、理論仮説を検証した。その結果、この仮説の妥当性が高いことが分かり、部分的に修正し、研究の仮説として採用することにした。本研究の仮説は、「農村からプノンペンに来て働いている女性(女性移動労働者)は、ジェンダーと交差性のために、また、サービス提供側にもジェンダーが影響しているため、これらの女性のセクシャル・リプロダクティブ・ヘルス(SRH)分野のサービス利用が難しくなっている」である。この仮説は、予備調査前には「サービス提供側の助産師」とし、助産師に特定されていたが、予備調査を受けて、「サービス提供側」には様々な組織が含まれる点から「助産師」に特定しないこととした。 情報収集では、女性移動労働者をメンバーとする組織や、女性を対象としてSRH分野の国際協力プロジェクトを実施するNGOと国連機関、SRH分野の診療活動を行う現地NGOにインタビューした結果、以下の点が把握された。 これらの女性労働者、特に若年の工場労働者は、ジェンダーと農村出身であることよる交差性によりSRH分野の知識が少ない。これらの女性向けに、NGOがSRH分野の知識やジェンダー、性的同意等について教育的な活動を実施している。しかし、彼女らは忙しいために、プロジェクトに参加できない場合も多い。このような状況の下、望まない性行為や意図しない妊娠をする女性も存在する。農村出身の女性家事労働者は、個別家庭で働くことから組織化が進まず、一部の人の部分的な情報しか把握されていない。組織に属する女性の中では、居住地が分散し、配偶者と死別した人の割合が高く、主要年齢層は40~60歳代で、疾病以外ではSRH分野のサービスの利用はないという。以上の点から、女性家事労働者ではなく、若年工場労働者を本研究の調査の対象と決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
進捗が遅れた理由は、当調査は保健省の研究倫理審査委員会の承認を得なければ調査ができないのであるが、カンボジアの首相の交代に伴う政府要職の大規模な人員交代、および地方分権化に伴い、同審査委員会のメンバーの交代や申請手続きに変更が生じたことによる。研究倫理審査に必要な書類や手続きなどの制度面に大きな変更が出たにもかかわらず、新制度に関する公的文書は調べた範囲では存在していない。 本調査では、2023年9月に実施した初期調査の結果を反映した倫理審査の書類一式を2024年2月の審査委員会に向けての提出を準備し、その審査委員会で承認を得ようとしていた。承認されれば2023年度内に、インタビューの対象者の絞り込みなどフィールドワークの準備を行う予定であった。2023年9月以降、審査書類受付部署に提出必要書類を何度か問い合わせたが、前述の変更点は伝えられなかった。 しかし、2月の書類提出締切日の直前になり、新たにカンボジア国内機関発行の文書が必要であると知らされた。この文書入手のため、2月の審査委員会向けには書類を提出できず、その次の開催タイミングである4月(日本では2024年度)に向けて、提出するように予定を変更せざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、現地でフィールドワークを実施するため、以下の点に特に留意する。インタビュー対象者や場所、日時などの調整はカンボジアではメールでは難しく、主に電話で行う。また、実施直前の日程変更も多くあり得るので、現地の研究協力者と連絡を密に取り、インタビュー実施の確実性を高め、常に予備のインタビュー候補者や予備日を準備し、事態をフォローアップがしやすい体制づくりを心がける。若年女性工場労働者は、平日は長時間労働に従事していて、インタビュー可能な曜日や時間帯が限られることから、場所の選定に留意するなど効率的なインタビュー実施を心がける。 第一段階のインタビュー対象者は、保健サービスの現場での提供者に加えて、保健サービス利用の現状や政策について俯瞰的視野を持つ、関係省庁の担当部署のマネージャーなどからの追加のインタビューを行うことを検討し、適宜行う。 科研費申請時点に比較して円安が大きく進展している。カンボジアでは物品とサービスは、一部を除いてドル払いであるため、円安により研究費が減少している状態となっているため、節約に努めたい。
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